🔳トップページ 4月から例会の曜日、3回目の上映時間が変わります
4月17日(金)①11:30 ②14:30 ③19:00 神戸朝日ホール
事前予約(電話、メール)受付中 1700円 → 1300円 078-371-8550
以下はA4の割引「チラシ」です
お店などで「置きチラシ」ができる方は連絡ください
その他、デザインは違いますがA5の「置きチラシ」もあります
お問い合わせは、メール又は電話(078-371-8550)でお願いします

【監督・脚本】コルム・バレード
【プロデューサー】クリオナ・ニ・クルーリー
【撮影】ケイト・マッカラ
【音楽】スティーブン・レニックス
【出演】キャリー・クロウリー、アンドリュー・ベネット、キャサリン・クリンチ
マイケル・パトリック
【原題】「An Cailín Ciúin」/英題:「The Quiet Girl」
【原作】クレア・キーガン「Foster」(2022年/アイルランド/アイルランド語・英語)
緑輝くアイルランドの夏、コットは本物の愛を受け取る
1981年、アイルランドの田舎町。主人公は農家の大家族の中で暮らす9歳の物静かな女の子。母親は妊娠中で一家には近々、もうひとり子どもが誕生する予定。
彼女は赤ちゃんが生まれるまで、遠い親戚夫婦の家で夏休みを過ごすことになりました。
繊細な少女のひと夏を描いた『コット、はじまりの夏』は、多くの感動を呼んでベルリン国際映画祭でグランプリを受賞するなど各国で高い評価を受けた作品です。
コットの家
近年まで宗教の影響で子だくさんの家庭が多かったアイルランド。両親は日々の暮らしに余裕がなく、五人いる子どもたちにはあまり手がかけられない。父親はおなかが大きい母をいたわる様子もなく、高圧的でかなり自分勝手に見える。
四女のコットはティーンエージャーの三人の姉たちの中には入って行けない。
彼女は、家族のなかにいても、学校でも孤独を感じていた。
家の中は整っているとは言えず、薄暗い部屋では、幼い弟がずっと泣いている。仕事よりギャンブルが好きな父には、他にも秘密がありそうだ。
子どもは誰もが、無邪気で明るく分かりやすいわけではない。繊細なコットはその状況にいるだけで感じとる。そして、黙っている。
コットのようなタイプの子に苦手意識を持ってしまう人はいるかもしれない。
アイリンとショーンの家
母メアリーのいとこにあたるアイリンと夫ショーンが暮らす家に連れて来られたコット。明るい陽射しが差し込むダイニングに通された。
酪農家夫婦の自宅は、掃除が行き届き、穏やかに丁寧に暮らしていることが分かる。
送り届けた父親ダンは終始機嫌が悪い。気まずい空気のまま、コットの荷物を車から降ろさないまま、早々に帰ってしまう。
アイリンがまず初めにしたことは、コットを風呂に入れることだった。お古だが清潔な服に着替えをした。二階の小さな一室が夏の間コットの部屋になった。
口数が少ないショーンは最初こそぎこちなかったが、牛の世話をするうちにお互い心が通じ合うようになった。
この家ではコットはだんだんおしゃべりになった。
初の日、「この家には秘密はないわ」と言われたが、ふたりは悲しい秘密を持っていた。
人々の暮らしは、懐かしくいとおしい
『コット、はじまりの夏』のセリフはほぼ全編、ケルトの言葉アイルランドゲール語で語られる。ゲール語話者が多いのは西部だが、この映画の舞台は南東部の海岸沿いの町ウォーターフォードの郊外だ。時折、流れるアイリッシュミュージックが耳に心地よい。ギネスやルバーブなど、アイルランドらしい食物も登場する。
アイルランド出身の女性作家クレア・キーガンの小説「あずかりっこ」を原案にしたこの作品の原題(英題)は「The Quiet Girl(静かな女の子)」。子どもが主人公なので、人物設定はかなりはっきりとしている。善良な人もいるし、そうでないキャラクターもいる。
映画はアイルランドの美しい風景と農村の人々の暮らしを映し出す。
1980年代のアイルランドの農村地帯では、近隣の人々が助け合って暮らしていた。時には酪農や農作業を、時には冠婚葬祭を協力しあった。社交の範囲は狭く、干渉したり噂話も飛び交う「村社会」だ。
負の部分もあると思うが、人はそれぞれに労働と共に地に足のついた生活を送っていたのだろう。
この作品は、大きな展開や派手な演出はないが、ひとつひとつのセリフに奥行きがあり、伏線となり物語を紡いでいく。
多くの著名な文学者を出したアイルランドの風土を感じる。
コットの初めて
コットにとって、この夏は初めて経験したことがいっぱいあった。
一番は、親元を長期間離れたこと。姉妹の中で自分が選ばれたのは、「はぐれ者」だからか。予想に反して、初めて会う人(相手には初めてではなかったが)に歓迎されたことに少し驚いた。学校では、姉の友達にまで「変わった子」といわれてしまうのに。
温かいバスタブで体を洗って、髪をとかしてくれるゆったりした時間、恥ずかしい失敗を責める事もなく受け止めてくれたこと、料理の準備や掃除機のかけ方を教えてもらったこと、子牛にミルクをあげたこと、牛舎の掃除や水汲み、寝る前の読書。気まずい時の小さな贈り物。
走ることをすすめられて、緑の中を一生懸命走ってみた。
死んだ人を見たことも初めてだった。悪意を持って近づいてくる人がいる事も分かった。それでも、人を信じたいと思う優しい人がいることも。
大好きな人たちの深い悲しみを知って辛かった。でも、知りたいと思った。
「沈黙は悪くない。多くの人は沈黙の機会を逃して、多くのものを失っている」コットの特性を認めて口に出してくれたのはショーンが初めてだった。
彼がアイリンを、気遣う様子が好きだった。
ふたりの家が自分の居場所だと思えた。
少女が過ごしたひと夏はかけがえのない季節になった。それでも、もとある場所へ帰らなければならない。
少し見ない間に身も心も成長した娘。再会 した母メアリーの「一体、何があったの?」という言葉を振り払うように、全力で去っていく車まで駆けていくコットの未来が輝くものでありますように。
(宮)