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12月20日(土)①11:30 ②14:30 ③18:00 神戸朝日ホール アクセス
事前予約(電話、メール)受付中 1700円 → 1300円 078-371-8550
例会学習会「神戸市とオーケストラの歴史」
講師:辻 雅滋さん(公財神戸市民文化振興財団 音楽主幹)
日時:12月11日(木)19:00-20:30
会場:映サ事務所地下ギャラリー 参加費:500円


パリのちいさなオーケストラ(原題:Divertimento)2022年⁄フランス/114分/DCP
監督・脚本:マリー=カスティーユ・マンシヨン=シャール
出演:ウーヤラ・アマムラ、リナ・エル・アラビ、ニエル・アレストリュプ
様々な壁を越えてオーケストラを作り上げた女性の物語
1998年にフランスで開催されたサッカーW杯でフランスは初めての優勝。サッカーボールが国民を一つにしました。その優勝の立役者はアルジェリア系フランス人でサッカー選手のジネディーヌ・ジダン。一躍、フランスの英雄となりました。
2024年、パリで開催されたオリンピック閉会式では映画『パリのちいさなオーケストラ』のモデルとなった主人公ザイアが率いる市民オーケストラ「ディヴェルティメント・オーケストラ」がフランス国歌「ラ・マルセイエーズ」を演奏しました。ザイアはまた、オリンピック聖火ランナーとしてもパリの街を走りました。ザイアもジダンと同じくアルジェリア系フランス人の一人です。
アルジェリアは1830年から1962年までの132年間フランスの植民地であり、植民地政策の一環として母語のアラビア語を奪われた歴史があります。また映画『アルジェの戦い』(1966)にも描かれたように1954年から1962年までフランスからの独立をかけて独立戦争を行いました。その最中、「1961年パリ虐殺」の悲劇にも遇いました。パリオリンピック開会式、アルジェリア選手団はパリ虐殺で亡くなった同胞を偲んでセーヌ川に紅いバラを投げ入れました。
映画『パリのちいさなオーケストラ』は現在も精力的に活動を続けるディヴェルティメント・オーケストラを立ち上げたひとりの少女ザイア(ウーヤラ・アマムラ)と彼女の思いに共鳴し、共に演奏活動に参加した仲間たちを描いた物語です。
映画では主要キャスト以外の配役は現役音楽家を抜擢。数々のクラシック音楽が、実際に演奏しながら撮影され、ライブ感あふれる映像を作りあげました。
映画の原題は「Divertimento(ディヴェルティメント)」。イタリア語で「楽しみ」「娯楽」という意味があります。
1985年のパリ郊外。移民が多く住む街パンタン。ちいさな白黒テレビには高名なルーマニア人指揮者チェリビダッケ(ニエル・アレストリュプ)がモーリス・ラヴェルの「ボレロ」を指揮する姿が映し出されます。幼い七才のザイアもさかんに指揮の真似をします。そんな娘に音楽好きな父親はこの曲のタイトルは「ボレロ」だと教えるのでした。
幼いザイアがテレビから流れる曲にあわせ、指揮の真似を繰り返す場面をクローズアップさせることでザイアがこの先、歩むであろう道を暗示させます。
10年後、1995年のパリ。パリ郊外にあるパンタン音楽学院の仲間に分かれを告げて、ザイアとフェットゥマの姉妹はパリの音楽学院へ編入学するため、パリに向かいます。その音楽院でザイアは巨匠セルジュ・チェリビダッケに出会い、彼の元、厳しい指導と対話を重ね、音楽を学ぶことになります。
物語ではパリ音楽院に編入初日、ザイアとフェットゥマ姉妹は経済的に豊かなパリの生徒たちから嫌味たらたらの歓迎を受け、不安げな表情。授業が終わり、地元に帰ればパンタン音楽院の友だちからの質問ぜめに合い、自宅に帰れば、家族も彼女たちを心配し、いろいろ問いかけます。
パリの生徒にはザイア姉妹の名前や住んでいる地域を聞いて、姉妹に対して自然と差別的な言動や行動が出てきます。フランスに住むアルジェリア系フランス人は現在、五百万人から六百万人と言われ、移民人口では最も多くを占めています。
パリの音楽院でパリッ子の発する言葉や表情を見聞きして、かつて明治になり、新政府は東北地方を名指して「白河以北一山百文」と差別した歴史が頭をよぎりました。
フランスの人口はこの映画の時代1995年には5928万人、2025年現在で約6800万人と言われています。人口増の大きな理由は移民の流入で、かつてフランスの植民地であったアフリカ北部と中部、近年ではEU東部からの流入が増えています。
映画の中で、ザイアを指導するカリスマ指揮者チェリビダッケは女性には指揮者になろうという執念がないとザイアに伝えます。パリの音楽院でも女性は指揮者にはなれないとはじめから生徒たちも思い、男性が演奏会の指揮者に選ばれます。
世界的に見ても女性指揮者の割合は6%、フランスでは4%の現実があります。そんな中であくまでもオーケストラの指揮者を目指そうとするザイア。劇中、屋外の夜景を背景に指揮するザイア。彼女の並々ならぬ思いを映像で表した監督の思いが読みとれる場面がいくつもあります。
チェリビダッケとザイアとの会話の中、彼はザイアにアルジェリアの母語アラビア語は使わないのかと問うと、ザイアはフランス社会で暮らす上ではフランス語を話します、と答えるのでした。大航海時代のイギリス、スペインの植民地主義により始まった言語の世界化はフランスの植民地政策でも例外ではなかった証です。
フランスでは戦後の労働力不足の中、アルジェリアから渡仏したザイアの父親世代(移民一世)の苦労は映画では語られていませんが、並大抵じゃなかっただろうことは想像できます。ルーマニア人のチェリビダッケとアルジェリア人でザイアの父がお互いの出自を越え、音楽の話題で繋がる場面に二人の人生を見る思いがしました。
劇中のクリスマスシーンでザイア家族が仲良く同じ歌を歌う場面、ピアノでザイアの指揮練習のパートナーをするディランが父親が服役中の刑務所で演奏する場面、映画の最後、ザイアの指揮で団員がボレロを演奏する場面、音楽が演奏者と聴く人々を一つにして包みこむ場面を目にして音楽に力を感じました。
ディヴェルティメン・オーケストラとは
1998年にザイア・ジウアニがパリとセーヌ・サン・ドニの音楽院の学生や指導者と一緒に設立。現在70人ほどの団員を有し、交響曲に加えてワールドミュージック、伝統音楽、ポピュラー音楽など幅広いレパートリーで年間約40のコンサートを開催しています。
兵庫県のアマチュア吹奏楽団は
兵庫県では、兵庫県アマチュア吹奏楽団リンク集によれば、学生(高校・大学)で21団体、社会人では57、市吹奏楽団または交響楽団と名の付くものは15の団体があります。(水)
ザイア・ジウアニ
2024年パリ・オリンピックの聖火ランナーを務め、さらに閉会式では大会初の女性指揮者としてザイア・ジウアニ指揮、ディヴェルティメント・オーケストラによるフランス国歌“ラ・マルセイエーズが”演奏された。
ジウアニはパリ生まれの46歳。アルジェリア人の両親の下で幼い頃からクラシック音楽に親しみ、双子の妹のフェットゥーマはプロのチェリスト。本人はリセ・ラシーヌ音楽院で学び、ソルボンヌ大学で音楽分析、管弦楽法、音楽学を専攻。パリで開かれていたマスタークラスを受講したことをきっかけに名指揮者セルジュ・チェリビダッケに師事した。
【使用曲】
ボレロ/ラヴェル
夢のあとに/フォーレ
七重奏曲 変ホ長調 作品20/ベートーヴェン
アルルの女第2組曲 第4曲:ファランドール/ビゼー
交響曲第9番「新世界より」ホ短調 作品95/ドヴォルザーク
交響曲第7番 イ長調 作品92/ベートーヴェン
無伴奏チェロ組曲第1番 ト長調 BWV1007/バッハ
『ロメオとジュリエット』作品64「騎士たちの踊り」/プロコフィエフ
交響曲第5番 変ロ長調 /シューベルト
ピアノ・ソナタ第14番「月光」嬰ハ短調 作品27/ベートーヴェン
ディベルティメント 変ロ長調 /ハイドン
チェロ協奏曲第1番 イ短調 作品33/サン=サーンス
『アルルの女』第1組曲第4曲「鐘(カリヨン)」/ビゼー
交響詩「死の舞踏」作品40/サン=サーンス
交響曲第1番 ハ長調 作品21 /ベートーヴェン
『サムソンとデリラ』 作品47「バッカナール」/サン=サーンス
『魔笛』「これはなんと素晴らしい響き」/モーツァルト
交響曲第102番 変ロ長調/ハイドン