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解説

「SI」か「NO」か、国民投票とコマーシャル

 私たち日本人が一般的にチリという国について、知っていることと言えば、太平洋をなぞるように南米の南北に繋がる細長い国土、美味しいワイン、日本と同じように地震の多い国。
 個人的には、アメリカ同時多発テロの後、11人の世界的な映画作家が製作した『セプテンバー11』(市民映画劇場で上映)で、ケン・ローチ監督がイギリスにひっそりと暮らしているチリ人を主人公に「もう一つの9.11」を見事に描いたショートフィルムが印象に残っています。
 1973年9月11日に起こったクーデターがいかに暴力的であったか、その後のピノチェト政権時代、数多くの反対派の国民を不当逮捕し、拷問を加え虐殺したのか、その対象は亡命をした人にまで及んでいることをたった9分11秒で表現した佳作でした。
 『NO』は、その政変から15年たった1988年のチリで起こった出来事を描いています。

物語
 フリーの広告マンとして忙しい日々をおくるレネのところに、以前から家族ぐるみで付き合いがあるウルティアが訪ねて来ます。彼は、独裁政権反対派であり、近く実践される現政権の信任に対する国民投票の「NO」派の宣伝についての依頼でした。
 投票までの27日間、両派とも平等に1日15分間のTV放映枠を与えられ、PRできます。
 初めは、気乗りしないレネでしたが、次第にプライドをかけて取り組むようになります。
彼が製作したフィルムは当初、厳格な左派陣営から「コカ・コーラのCMみたいじゃないか」と酷評されるのですが。

ヒーローではなく・・・
 南米を代表するスター俳優ガエル・ガルシア・ベルナル演じるレネ・サアベドラという主人公は実在のふたりの広告マンを組み合わせたキャラクターです。
 この映画は、社会派のドキュメンタリー的な作品でなく、あくまでレネと彼の周囲の人たちを中心に描かれたドラマです。もう一つの見方をすれば、ひとりの男性の心の成長を描いたプライベートな作品ともいえます。
 レネは海外からの帰国者です。
 それゆえにかもしれませんが、子どもと離れてまで反体制運動の中心に行こうとする妻とは異なり、政治とは距離を置きながら、仕事をこなし、平穏に生きていきたいと願っているように感じます。
 体制派の上司に非難されますが、「仕事のひとつだ」とクールに答えます。資本主義の象徴、コマーシャルを創るのだから、小道具などは見た目を重視(フランスパンのエピソードが興味深い)、マーケティングをして、人の心に入り込むことが大切。彼の製作のスタンスは徹底しています。
 しかし、身の危険さえ感じる迫害や、上司がSI陣営チームのスタッフになったことが重なり、彼の心は変化していきます。自分がチームの一員であることを強く自覚し、一丸となって闘うべき時であると感じるようになります。
 妻への思い、一人息子のこと、広告マンとしてのキャリア。
スケートボードで風を切りながら、レネの心は揺れています。

「NO」というべき時
 アメリカが裏で糸を引いていたと言われている1973年のチリのクーデター。平和的な選挙で大統領となった左派のアジェンデを死に追い込み、誕生したピノチェトの独裁政権時代。映画に描かれなかった15年を人々は、どのように暮らしていたのでしょう。
 1984年にチリを訪れたジャーナリストの伊藤千尋さんは、「反戦反軍国民抗議デーが行われると聞いていた広場にいくと、誰もいなかった。周囲には新聞を読んでいるおじいさん。鳩に豆をやっているおばあさん。いちゃついているカップル。ところが、大聖堂が正午を告げるとおじいさんは「軍政、くたばれ!」、おばあさんが紙吹雪を取り出してまき、「民主主義万歳」と叫んだ。カップルは「独裁者よ、去れ」と拳を振り上げた。またたくまに広場に300人が集まった。その後、広場には警察と軍隊がやってきて人々に放水し、こん棒で殴り始めた。石畳に血が流れた。」と書かれています。
 学生たちはデモ・建物占拠を行い、労働者はストライキをして生産を止め、タクシー運転手たちはわざとノロノロ運転をして交通渋滞を起こしました。外出禁止令が引かれた夜、母親たちは鍋を叩いて「食料がない」と抗議しました。人々はラテンの楽観性を持ちながらそれぞれの場所で声をあげ、行動を起こしていたのです。
 チリの国民は弾圧を恐れて自粛し黙ってしまうヤワな人たちではないのです。少しずつ社会は、変わっていき、その頃には、亡命していた人が帰国し始めました。

 88年初頭、小さな考え方の違いでいがみ合っていた17のうちで16の野党が国民投票では協力することで合意しました。
 しかし、まだ当時のチリの軍政は圧倒的な力を持っていました。
 国民投票は政府が勝つと誰もが思っていたことでしょう。今の日本に照らし合わせても分かること。与党が圧倒的多数を取り、投票しても何も変わらないと思い込んで選挙に行かない人が多いほど、与党側には有利になります。
 10月5日の国民投票に向けて、NO派は、小さいグループに分かれて、一軒一軒の家をまわり選挙権登録を呼びかけました。
 政府側の不正を阻止するために、2万3千の投票箱全てに立会人を置くようにしました。選挙のやり方に不慣れな人もいたため、週末は各地で模擬選挙が行われました。
 小さな努力をコツコツと続けて、 最後に、とどめをさしたのが、「NO」コマーシャルフィルムでした。
実際には見せかけだけの平等で「誰も見ないと思われる」深夜枠を与えた軍政側。
 しかし、NO陣営側は、TVでの宣伝放映が可能になることを予測して国民投票の何ヶ月も前から準備を進めていました。チームには、映画、演劇、広告、マスコミ等、百人を下らない優れた専門家たちが参加しました。
 政府が全てのTV放送を独占して、ピノチェト賛美と決まりきった番組しか放送してこなかった画面から、印象的な虹のアーチのロゴ、テーマ曲「チリよ、喜びはすぐにやってくる」の軽やかなメロディが流れてきました。「尊厳を取り戻す」「今が流れを変えるとき」と歌詞は続きます。分かりやすく、人々が待ち望んでいた言葉と未来志向の明るい映像。「だから今、NOを選ぼう」と訴える放送は国民の心を掴みました。皆、自分達には未来があること、仲間がいることを実感した瞬間でした。
 10月5日、朝早くから人々は投票所に詰めかけ行列ができました。

 黙っていてはいけない時には、しっかりと「NO」と言える人々がいる社会こそが健全で、その国の未来は明るいのだと映画は伝えているようです。
 勤勉で大人しいといわれる日本の国民性から変身し、一時期でもラテンの気質をお借りして、楽観的に行動を起こすことが必要な時があると思います。
 私たちが「NO」と言わなければならない時、それはきっと今なのでしょう。
(宮)

 

ひとくち感想

◎大変よかった  ◯良かった  ◇普通  ◆あまり良くなかった  ☐その他

日本の選挙に若者が強い関心を持って投票場に向かうようなメディアのキャンペーンを期待しました。(79歳)
独裁者にNO! 今、日本も安倍政権にNOを言おう。戦争にNO。(78歳 男)
自由を勝ちとるのはたいへんだが自由はすばらしい。我々もがんばらねば。(78歳 女)
恐怖独裁政権のピノチェトと安倍政権がぴったり重なって見える。講演で学んだりデモ(パレード)で反対をアピールしたり、更にこの映画のようにユーモアあふれる広告で人心をつかむよう更に知性を研くことが大切と思った。(74歳 女)
映画の冒頭「今の時代にマッチしたものだ」と。「チリよ、喜びはすぐそばに」の歌声が独裁政権を一滴の血を流さずに実現したことを示したすばらしい映画だった。日本もそうありたいね。(74歳 男)
今の日本の現状とあわさって、とてもよかった。いかに国民の声をまとめて力にしていくか、とても考えさせられ、民衆のパワーに圧倒された。(74歳 女)
日本も安保法制反対で、野党共闘が可能になってきましたが、どうなるのでしょう。デモに行くくらいしか出来ないけれど、よい国になるように祈るばかりです。(73歳 女)
感動的な映画でした。現状を変革することの困難な中で、知恵と情熱で問題を克服する姿勢から多くのことを学びました。安倍内閣打倒!(73歳 男)
すごく印象的で力を頂きました。「NO」この言葉の強さを感じます。大切に現在をみつめたいです。(71歳 男)
今日の映画を見るまでは、チリでピノチェト政権のことは恥ずかしながら知りませんでした! 民主的な選挙でNOが勝ち、独裁者が負けるという出来事には感動しました。今、日本でアベ政権にイエスかノーの国民投票があれば絶対に「ノー」と書きます!(70歳 女)
今の日本はこの逆を行っているようで安倍の本質もピノチェトか? うしろにアメリカがいる。(69歳 男)
現在のチリの社会情勢が知りたかった。(68歳 女)
皆の気持に寄り添う感性が大切(主義や主張だけではなく)。戦争法案はNO。(65歳 男)
とても勇気をもらいました。家族への妨害etc.主人公たちは大変な状況下におかれていたけど最後までめげずに勝利した…。庶民の勝利! 今、日本でも戦争する国づくりが進んでいるが、私達のたゆまない運動で安倍政権の法案をストップさせていきたいものです。(65歳 女)
もう少し勉強してから見れば良かったと思います。(63歳 女)
力づけてくれました。(62歳 女)
いかに生きるべきか、考えさせてもらいました。(62歳 男)
一年前に見のがしたのに、ここでみれてとてもうれしい。良い映画に会えました。(61歳 女)
こんな映画に出会えるのはこのサークルの醍醐味ですね。主人公のブレない信念の強さに言葉がないです。広告という職業に誇りを持っているからなのか…? 映画に描かれている事実をよく知らなかった自分を恥じつつ、今の日本で自分のできることをひとつでも行動し実現したいです。(60歳 女)
青春十八きっぷを使って、広島県福山市から遠征してきました。(3回目くらいです)会員にならなくても見られるのがうれしいです。(55歳 女)
危機感の持ち方が日本人と全然ちがう。アベノミクスに対してあまりにもおとなしすぎる日本人と!(54歳 男)
ガエル・ガルシアの抑えた演技が良かったです。(53歳 女)
何度観てもおもしろい! 行方不明者を語るクエッカ、「偉大な国は国民同士が争わない」のメッセージ、「広告的手法で闘う」というレネの信念…。独裁から15年の国内外から批判が高まっていて背景はあるものの、最初は小さな勇気も大きくなって社会を変える! 観る度に実感します。本当に、今、この時にこそ大事なこと!おかしいと思うことにはNO!を。(53歳 女)
人の心に響くイメージ、テキストはシンプルなものに限ると改めて知りました。(仕事に役立てます。頭がリフレッシュしました)(46歳 男)
社会的な視点と広告・宣伝の視点と、とても楽しめた。今はコレという答えが見つからないが、これから時間をかけて考えて味わいたいという思いになりました。日本も含め世界の主張の相違にクールに向き合える自分でいたいと思った。(45歳 女)
あきらめなければ、強固な独裁政権ですら引きずり落とすことが、できるという事例をつくり、全世界に希望を与えたチリの人々。その文化のレベルを支えていた人々の象徴がレネであったと思われた。今の日本、安保法制案への、あべ政治への「NO」への闘いが、SEALDSの学生たちの感性を生かし、型にはめず、一人、ひとりの思いを訴え、デモでなく、パレードとして行われている姿に希望を持ちたい。(女)
映画としておもしろくて、なおかつ考えさせられる映画でした。登場人物は多いのにすべて個性的で、よく描かれていたと思います。今の日本と近い? でも、もっとアピールしなきゃね、私たちも!
大臣がみかんの皮を大砲の中に捨てていたり、それを主人公の会社のボスがおしこんでいたり、エンディングでみんなでみかんを食べたりしているのが気になります…。何でだろう?

すばらしい力! 示唆するものあり――この世に!(80歳 男)
目つきの悪かったボスが最後は断然いい男になる! 音楽がフィットしていて素晴しい。クラシックを弦楽器でない演奏で使ったのも!(75歳 男)
この戦法で安保法案のNOを勝ちとれ!(74歳 男)
将軍様という字幕にどこかの国を連想した。どちらに立ってどちらが使うにしろ宣伝の力の恐ろしさを感じた。(71歳 男)
「真実はシンプル」と思った。今の日常でも真実か否か、見きわめて将来の為に、未来の為に、今、「NO!」と主張しようと思った。(68歳 女)
日本にも直接投票という方法をとりいれるべき。今のやり方で国民の意思が反映されるとは思えない。(68歳 女)
日本と他国との政治への関心の高さが異なる。国民性のちがいか、島国のためか、気持ちを表現しにくい性格なのか、今後この国の未来を決めるのは国民だという実感です。(67歳 女)
二回目なので、ようやくNO派が勝てた理由がわかってよかったです。広告手法だけで…と思ってふしぎだったのですが、恐怖や抑圧から民衆が解放されたというところが大きかったのですね。(63歳 女)
『NO』勇気をもって投票した人たち。心を動かす「NOニュース」本当のことは知らさなくてはいけない。なんか日本にもあてはまるような。多数決で勝ってよかった。(61歳 女)
主人公が最後まで笑わないところに単純に民主派の勝利とは喜べないテレビ大衆時代のシニカルさを感じる。クリストファー・リーブとリチャード・ドレイファスがうれしい。(60歳 男)
CMも映画もおもしろかった。(48歳 女)
映像全体を80年代風(3:4)のブラウン管のような映像)にすることで「当人たちにとっての今」を表現したのが興味深い。勝利の瞬間は、仕掛けたレネ本人が気づかぬほどあっけなかった。そしてそこには、一滴の血も流れなかった。この革命はもっと語られて良いものだろう。(26歳 男)
命かけで「表現の自由」を行使した人々。後ろの席の男性がシートを蹴るのには閉口。また注意事項につけ加えて下さい。

去年テアトルで観た作品なので(二度目の作品は意外とstoryの奥深いところに気付いたりしてけっこう面白いのですが)この『NO』は少し退屈な感想で、残念でした。苦労はとてもよくわかるのですが。ただ未来派志向という言葉が、このごろ日本のメディアでもよく聞くので、人間の考え方は洋の東西を問わず同じなのだと感心しました。(61歳 女)
ちとむずかしかったです。さいごはよかった。冷房が効きすぎて寒かったです。(40歳 女)
広告の力を感じるとともに、その影響力と人々の反応に少し怖さを覚えた。主人公の最後の表情が、広告と人々に対する複雑な思いをよく表現していると思った。(女)

ストーリー展開で分からないところがありました。最後の盛りあがりに欠けると思います。

えー。今をうつす内容で、力の結集、多数者のつながりの強さ、語って語っていくことが大事。いま日本もいるのでしょうね。映画はいいなあ。(67歳 女)

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