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2015年7月例会『ジミー、野を駆ける伝説』

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解説

若者には音楽やダンスを 貧困にあえぐ人には希望を

ケン・ローチ最新作
 ケン・ローチは市民映画劇場例会には馴染みの監督です。これまで『ケス』、『ブレッド&ローズ』をはじめ計7本の作品が上映されています。彼は労働者階級や第三世界からの移民たちの弱い者、虐げられた人たちの日常生活をリアリズムに沿って描く作家です。彼の温かいまなざしは映画ファンの心をとらえます。
 昨年の4月例会『天使の分け前』(2012年)はスコットランド社会で見捨てられた若者が、厚生プログラムで出会った中年の指導者、仲間と共に、未来を獲得していく姿を、ユーモアを交えながら描いていました。
 また、『麦の穂をゆらす風』(06年)は、アイルランド独立戦争とその後のアイルランド内戦を背景に、英愛(イギリス・アイルランド)条約をめぐって対立することになる兄弟を軸に、独立戦争から内戦へといたる1920年代のアイルランド近代史を描いた悲劇でした。
『ジミー、野を駆ける伝説』は『麦の穂を…』から10年後の32年が舞台です。その歴史については「背景」(4、5ページ)に掲載していますので参考にしてください。

あらすじ
 国を分断した内戦が終結してから10年後、1932年のアイルランド。アメリカで暮らしていた元活動家のジミーが、祖国の地を踏み、アイルランド、リートリム州の故郷に帰ってきた。かつて地域のリーダーとして絶大な信頼を集めたジミーは、気心の知れた仲間たちに歓待され、昔の恋人ウーナとも再会を果たす。ジミーの望みは、兄の死で一人残された年老いた母親アリスの面倒を見ながら穏やかに生活することでした。
 しかし、村の若者たちの訴えに衝き動かされ、内にくすぶる情熱を再燃させたジミーはホールの再開を決意し、仲間たちも協力を申し出る…。

ジミーのホール
 原題は「ジミーのホール」。映画が始まると同時に〃アイルランドの活動家ジミー・グラルトンと村のホールを巡る物語〃と字幕が出ます。
 ホールは人々が芸術やスポーツを学びながら人生を語らい、絵を習い、歌とダンスに熱中し、詩を朗読するかけがえのない場所。人々が歓びを共有するコミュニティホール(集会所)です。
 しかし、ジミーが帰国した32年のアイルランドの新政権はカトリック教会に特別な地位を与え、宗教、社会道徳面での規範が、教会の指導下で強められていく時代でした。
神父は教会内でアイルランドがイギリス支配下で辿ってきた17世紀半ばからのアイルランド歴史を語ります。
「(イギリスの)クロムウエルは全土でハーブを焼き払い、聖職者を殺し、音楽家を追放したのではないか、音楽や踊りも消されかけた。だが先祖たちは青空学校で対抗した」と。しかし、今の若者は教会の許可を得ないでただ浮かれ、踊っているだけだと批判します。

 映画は教会の保守的な言動と対比するように、音楽、ダンスを楽しむ人たちを描きます。アメリカで覚えたというジミーのダンス・ステップに喜び、アメリカの黒人音楽を聴き、彼らと踊ったと話すジミーに、若者はこれら出会うであろう新しい世界を想像します。

 ケン・ローチは「ホールは、自由の精神を具現化したものです。そこではいろいろな考えが試され、人々が自分たちの才能を創造する場所です」と述べています。

ジミー、次の決断
 教会、実業家、公安、地元IRAの保守派に守られた土地制度は土地所有者のいいなりで、彼らの一存で小作人の家族は路上に捨てられる時代でした。ジミーはアイルランドが抱えている土地問題に言及します。その決断はもう再び、故郷の土地を踏むことができないほどの挑戦でした。
ジミーはアメリカでのことを語りながら、アイルランド社会でどう生きるべきかを語ります。引用が長いですがその言葉は次の通りです。
 「1920年代ニューヨークでは投資熱と拝金主義に人々は冒されていた。だが二九年の大恐慌で豊かな国は凋落した。これを忘れないでおこう。原因は幻想と搾取、強欲に染まったシステム。運命や神の業だというものもいるが違う。人が招いたことだ。我々は人生を見つめ直す必要がある。欲を捨て、誠実に働こう。ただ生存するためではなく喜びのために生きよう……自由な人間として」
これは、ケン・ローチが今の私たちに送るメッセージだと思います。

シューラルーン(Siuil A Run)
 〃シュー シュー シューラルーン〃という言葉をご存じですか。70年代のフォーク全盛時代にPPM(ピーター、ポール&マリー)が歌った曲「虹と共に消えた恋」です。これに似た「シューラルーン」という言葉が映画にも登場します。これは英語の歌詞とゲール語からなるアイルランド民謡で使われ、「旅たつ人の無事を祈る」ことを意味しています。
 戦場に行った恋人を慕い、その帰りを待ちわびる歌、1840年代のジャガイモ飢饉の時期、およそ100万人が生活の糧を求めて海外へ移民の人たち、また、イギリスの支配下のもとで国外追放になった人たちを見送る歌として歌われてきました。
「道中をご無事で」と歌いながら、その原因を作った人たちを批判する抵抗歌(レベル・ソング)でもあります。
※   ※  ※
 是非、エンドロールに流れる曲に耳を傾けてください。
(滋)

ひとくち感想

◎大変よかった  ◯良かった  ◇普通  ◆あまり良くなかった  ☐その他

アイルランドは今も独立を目指していますが、上からのよく圧で思う様にいかないのが気の毒に思う。(84歳 女)
あれこれ考える前に久し振りに心を洗われた幸福感で姫路まで帰って行けます。(84歳 男)
ジミーのような人物が今日本にいたらついていく。憲法を守るために!(79歳 男)
日本では権力が暴走している時代だけに人間の原点に触れる映画に感謝します。(79歳 男)
ケン・ローチ監督にひかれて観ました。英国の歴史をもっと学ばなくては、アイルランド、スコットランドなど、それぞれに独立の苦しみがあったことを知ってはいましたが、深く知りたくなりました。(75歳 女)
大地主や牧師等権力者がジミー達仲間を追いつめたり、力のない小作人をヨウシャナク路頭に迷わせる姿は安倍政権が国民の意見を無視して暴走する姿と重なった。ジミーは実在の人なんですね。映像の中の言葉「ただ生存するためではなく、喜びのために生きよう」何か元気をもらう印象的な言葉でした。(74歳 女)
ケン・ローチの映画はいつも心に残る。今回もそうだ。ジミーのお母さんが素晴らしい。母は偉大だ。ジミーの「ホール」は焼かれても自由の精神は引き継がれる。(74歳 男)
ジミーはすばらしい。母親もすばらしい。今も日本に似ている。正しい事が政府には通じない。(74歳 男)
困難があっても勇気をもって闘う人がいる…。現代にも脈々と受け継がれているのだ。情勢は厳しくても頑張れと言われたようでした。とてもいい映画でした。(71歳 男)
人にはそれぞれ立場があり、そこから自由でいられるのはどれほどいるだろうか。いつでも、どこでも。悲しいことだが、その繰り返しがつづいている。(71歳 男)
父の戦死した1945・12がジミーの命日であった。現在の日本の政権と合わせて、いろいろ考えさせられた。音楽とダンスも素敵であった。(70歳 女)
闘う人はいつも良心の声に耳を傾けると行動する人になるんだなぁと思いました。彼は若者の先生だったんだとlastで分かって希望がわいた。思ったより静かな映画だった。(70歳 女)
私の好きな監督、ケン・ローチの心に残る作品でした。しかし一世紀も経った今も事の本質は少しも変わっていない。アイルランドの緑の美しさとちりばめられたユーモアに心がなごみました。(68歳 男)
この映画で、いつの時代も権力者が自分たちの利益の為に真実をまげる。それでも真実をつらぬき、ぶれない。それが小さな力でも歩みつづけなければと、過去から未来について学ばせてくれました。(68歳 女)
冷房がきつすぎた。省エネをめざしましょう。『麦の穂―』をもう一度観たい。(65歳 女)
さすがケン・ローチ! ボクもジミーみたくなるぞ。65才やけど。(65歳 男)
封切り当初見ていたので二回目だが、「独立前後のアイルランド」の講演(学習会)も聴いていたので、よりよく理解できた。無名のこのような活動家の存在を映画にしたことは素晴らしいと思います。アイルランドの広大な原野の素晴らしさと、貧しい農民。イギリスとの確執。独立運動。長い歴史の中で培われた独立と自由の精神。やはり長い民衆の抵抗の歴史が必要なのですね。日本もこれから…。(68歳 女)
ホールでの二人のダンス。新聞にのっている母親の言葉。最後に若者につなげる希望。上質な映画でした。(67歳 女)
冷房が全体にきついです。省エネしてほしいです!少々暑くてもガマンしますよ。映画は80年以上前のこととは思えませんでした。一部の超富裕層が世界を支配する構造は何も変わっていないです。歴史をふり返って、今どうすべきかを考えていかないと、と思いました。(63歳 女)
日本にも、ジミーの様なスーパーマンが現れてほしいですね。(62歳 男)
母からジミー、そして若者たちへ、人を愛する心が伝わっていく。大切なものが受け継がれていく。心暖まるいい映画でした。ありがとう。(62歳 男)
とてもいい映画だけに悲しい。100年経っても争いはなくならないし、宗教の名をかりた、みにくい行為はまだ続く。これは人間の業で仕方ないのか…複雑です。例会学習会に参加したことはないですが誌上でいつもお世話になっています。とても参考になるし少しでも映画を深く見る助けになっています。(60歳 女)
尊敬や利益を自分たち少数で独占しようとする人たちは、皆が生き生きと暮らし、話し合い、一人一人を大切なものと認めることを恐れ、弾圧するのですね。何の神様でも一番貧しく悲しい思いをしている人に優しくないものは良い神様でないでしょう。朝日ホールもジミーのホールと同じお気持ちで、がんばっていて下さるのですね。ありがとうございます。(60歳 女)
主人公ジミーもさることながら、シェリダン神父も天晴れと思ってしまったのは私だけだろうか。二人は敵対しながらも、その誠実さと信念の固さを認めていた。ああいった人間への尊敬という心を、自称神戸市長久元喜造とイカレ兵庫県知事井戸敬三は持ち合わせていない。地方が自治を獲得してもうすぐ70年。だというのにこの神戸、この兵庫はかつてのアイルランドのように腐敗と暴政を強いられている。今立たねば、人間性が危険にさらされるだろう。(26歳 男)
ただのハッピーエンドではない終わり方に時代のリアリティを感じた。それだけにジミーを追ってくる人々のラストシーンには思わず涙がこぼれた。(21歳 女)
二人の心が一緒になるダンスシーンの美しさ。ケン・ローチはロマンティックな人なんだと思った。ラスト、若者たちが追いかけてくるシーンに感動。(匿名)
久々のケン・ローチ。映画の王道を行く作品でした。ジミーは野にいた活動家の一人、彼の行動の原動力が母が行っていた移動図書館運動にあるということが、驚きでもあり、納得でもありました。暖かいコミュニティづくりは、今の日本の課題ですね。(女)

主人公はいつも周囲に巻き込まれる人柄で、ある意味それは運命なのだと改めて思いました。宗教対立、階級制度など難しいところもありましたが、庶民の貧しい暮らしぶりが悲しかったです。(63歳 女)
ローチの映画の中では登場人物がやや没個性的で、結果として「教条的」感じられる作品かと。(62歳 男)
1930年代のアイルランドというのがちょっとわからなかった。「ホール」という人々が集うことは世の中を変える大きな力になりうるという示唆を受けた。例え楽しいダンスであったとしても支配者は恐れるようだ。労働者の知恵と力を集めることが出来たら、なおさらだ、と現代の日本を思いながら見た。(59歳 男)
残酷だった。ジミーがアメリカ人、彼の母親がアイルランド人。母子であるにもかかわらず、強制送還という形で引き離されるなんて!!(54歳 男)
今の時代の日本にもこんなホールがあればよいのに大人も子供も皆がいける児童館みたいでよっぽど健全なのに。時代と国の事情が違えば、それが危険分子になるのか? 日本のこともアイルランドのこともよく分かっていない私ですが、知らない出来事、アイルランドのこと、少し知れてよかったです。(48歳 女)
アイルランド独立とその間の内紛の経緯を知らないので少しわかりにくかったところがありました。所々に散りばめられたユーモア精神に救われた思いがします。(匿名)
もう少し背景を勉強して臨むべきでした。前半の中位まで少々分かりづらかった。(女)

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