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2019年8月例会『デスティニー・イン・ザ・ウォー』

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解説

どんな時代にもヒーローとヒロインはいる

 この映画の舞台は1942年の中国、浙江省。中国養蚕業の本場だ。
 映画(2017年度作品)の中国原題は『烽火芳菲』。「烽火」は狼煙の意味。「芳菲」は草花のにおいがすること。また、草花が美しく咲きにおっていることという意味があるそうだ。
 監督はビレ・アウグスト。私の記憶に残るのは1988年カンヌ映画祭でパルム・ドール賞に輝いた作品の『ペレ』だ。
スウェーデンからデンマークに移民として渡ってきた幼い息子ペレと年老いた父の親子が新天地で迫害を受けながら生きていく様を描いた映画で父親役を演じた俳優マックス・フォン・シドーの演技は胸に迫った。

題材はドーリットル作戦から
 映画『デスティニー・イン・ザ・ウォー』の冒頭、日本のどこかの街を爆撃する飛行機。これが日本をはじめて爆撃したアメリカ陸軍の空襲作戦でこの爆撃機編隊の隊長名ジミー・ドーリットルからドーリットル作戦と名づけられたとあとで知った。
 太平洋戦争開始から五ケ月後であり、日本の勝利報道に溢れていた国民にもまさか空襲があるとは…。
爆撃後、帰還途中に中国軍(国民党軍)の勘違いで浙江省の山中に墜落する飛行機。中国人家族に助けられ匿われながら日本軍からの追及を逃れ、暮らすパイロットのターナー(エミール・ハッシュ)。負傷したパイロットを看病する未亡人のインズ(リウ・イーフェイ)。パイロットとインズ家族を助けようと奔走する遊撃隊(ゲリラ部隊)の教師。やがて日本軍の捜索が厳しくなる中で次第に惹かれ合うようになる二人だったが…。
 主演のヒロイン、インズを演じるのは中国で数々の映画に出演し、人気者となった俳優で歌手のリウ・イーフェイ。映画『第3の愛』では共演した韓国俳優ソン・スンホンと映画さながらに恋に落ちてしまった…。

印象的な風景と中国の養蚕業
 この映画で印象に強いのは映画の舞台となる浙江省の山村の風景だ。以前、中国の映画監督フォ・ジェンチイ作品『山の郵便配達』や『故郷の香り』で描かれたような農村の風景がこの映画で再び見られたことは嬉しかった。
その風景の中で取り込まれていたのは養蚕業の場面だ。中国の養蚕は殷の時代(紀元前16~12世紀)には行われていたが海外への輸出が本格化したのは交易路としてのシルクロードと言われる路が開かれてからだ。絹は数千キロ旅をしてローマに運ばれ、西からは宝石、真珠、ガラス、金銀器、絨毯などが長安の都に届けられた。
絹が船でヨーロッパへ運ばれる機会が増えたのは明王朝後期(1600年~1644年)だ。それに伴いヨーロッパからの船の中継基地としてマラッカ、シンガポールが栄えることとなる。
 養蚕業は気候的に適した華中地方の浙江、江蘇省と西南部の四川省、南部の広東省が盛んで中国の繭生産量八割を占めているし、四川、広東では一年中、養蚕が行われている。
 また中国は現在、世界のシルク生産の70%、シルク貿易の80%を占めるシルク大国である。
映画の中で養蚕、繭を採る、生糸を紡ぐ場面などは80年近く前の風景だとしても現代でも養蚕業が中国の大切な産業のひとつだと象徴するようなシーンである。また明代の中国では「蘇州の絹で天下を被う」という言葉があったくらい絹織物が盛んだったのだ。今よりもずっと…。日本の養蚕業は弥生時代後期に中国から伝わり、国中に広まった。正倉院には養蚕関連の文物も多い。

中国人が描いた例会作品の中での日中戦争
市民例会で日中戦争を描いた作品としては中国映画『鬼が来た!』(2003年6月例会)がある。2000年カンヌ映画祭でパルム・ドール賞を受賞した名作だが中国では上映されることがなかった。理由としては「日本軍の描き方が甘い」「日本の侵略に対する中国庶民の憎しみが演出に反映されていない」また「日本軍国主義の本性を十分に描いていない、中国人民の奴隷根性を表現した」等々があったという。
 しかしこの作品で日本兵を演じる香川照之ら日本人俳優に当時のありのままの日本軍を伝えてほしいと監督、姜文(チアン・ウエン)が演技指導に呼んだのはかつての中国人俳優の鄭葆民(チョン・バオミン)で彼自身の体験の中で記憶に残る日本軍のあり様を指導したという。彼は『鬼が来た!』をはじめ多くの中国映画で日本兵を演じた俳優である。

日本軍の描き方
 この映画で意外だったのは日本軍の描き方だ。中国映画や韓国映画のように日本軍の残虐性を描くという意図はデンマーク監督ビレ・アウグストの中では重要ではないと考えたていたのか…。国際情勢を考えて中国政府が20年前と比べて日本に対して外交的忖度をしたのか?または彼が北欧人であるが故に日中戦争を含むアジアの近代史に疎かったのでは?という思いもある。同じ戦争の描き方でも第二次大戦における対ドイツやヨーロッパを描くのならもっと見近なものとして描けたと思うからだ

デンマークと第二次大戦
 デンマーク人が描いた第二次大戦の作品に『April 9th』という映画がある。これは1940年4月9日未明にドイツ軍に攻め込まれたデンマークが降伏するまでの半日をデンマーク軍自転車部隊を中心に描いた作品でデンマークはドイツ軍が侵攻してから僅か半日で降伏。ヨーロッパでも一番長い5年間をドイツに占領された歴史がある。しかしある意味、戦争により自国民の犠牲者を出さないという賢い選択をした国だともいえる。『ヒトラーの忘れもの』という自国の戦争責任を問うた素晴らしい作品も作りだしているが…。

お馴染みの曲と監督の思い
 映画の中で匿われている米兵が子供に口笛で教えるのはアメリカ独立戦争時の愛国歌「yankee doodle (ヤンキードゥードゥル)」。意味は「間抜けなアメリカの軍隊」というものでアメリカを植民地としていたイギリスがアメリカ人やアメリカの軍隊をさげすんで使った言葉だ。アメリカ人が反イギリスの意味で独立戦争時に歌って広まった。日本では「アルプス一万尺」という曲として親しまれている。
 日中戦争当時の中国人の日本軍に対する思いを監督ビレ・アウグストは歌の成り立ちを知っていて、口笛を吹き中国の子供に教えるという形で表そうとしたのだろうか?
 我が国では戦後生まれの人口が84%を占める時代となった。    
(スウォン)               

参考
 劉文兵著「中国抗日映画・ドラマの世界」、大日本蚕糸会編「世界の養蚕業の変遷」、その他ネット資料による。

ひとくち感想

◎大変よかった  ◯良かった  ◇普通  ◆あまり良くなかった  ☐その他

8月になれば、戦争の映画もいろいろ出て来るが、我々経験者が見るのもいいが若い人ももっと見てもらいたい。(82歳 女)
戦争のむごさと、人間のあたたまる物語でした。悲しい最後でした。(77歳 女)
日本人と中国人は同じアジア人でありながら日本軍の暴虐に対する当時の中国人の怒りの大きさを感じました。静かな画面の流れのなかで緊張が切れることなく出来た素晴らしい映画で期待以上で鑑賞に来て良かったです。米兵も侵略者になればベトナム戦争等では現地では日本兵と同じ様に見られていたのでしょう。(77歳 男)
全篇息もつかせぬいい映画でした。戦争の不条理、それに「英雄」を作り上げる滑稽さもにじませて。25万人虐殺も知れたし、講演もよかった。最近の日韓の問題も同じ視点で考えたい。(72歳 男)
いい映画をありがとうございました!!つかまりそうで、ハラハラドキドキ。彼女が殺されて娘と米兵の悲しみに涙がポロポロ。戦争はダメです。人間に「愛」がある事が「すくい」でした!!(72歳 女)
真珠湾攻撃の後すぐにそういうアメリカの作戦があったのは知らなかった。あの頃既に空母艦隊があったのだ。二人が徐々に近付いていくところを主題に展開していると思うが、重慶着陸ということは既にアメリカと中国の連携がとれていたのだ。日本人から見れば、空襲とかひどいと思うが、中国やアメリカから見れば当然の作戦で、どちらにしても戦争は国民を苦しめるだけと強く感じた。日本軍の加害を描く映画が少ないので全く違う視点から見れてよかった。ベトナムでのアメリカの如く、日本は中国や朝鮮に対して殺りくを行ったのだ。慰安婦や徴用工の問題にしても、日本での認識をきちんとしないといけないと思う。(70代)
期待以上の内容の深い映画でした。日本人として知っておくべき歴史の真実を教えてもらいました。(69歳 女)
映画なのに、めちゃくちゃこわかった。どきどきしすぎて本当にこわかった。現実の戦争の百分の一なのに本当にむごい現実。日本人は本当のことを忘れすぎている。戦争はいやだ。平和な日本に感謝!!(65歳 女)
戦争は終わっていないのだなーと最近の情勢、記録映画を見て感じることが多い。この映画は「犠牲者は平民だ」と、つくづく思い知らされた気がした。(六三歳 女)
日本語の題名よりも原題の方がシックリしました。97分間の映画なので、ストーリーの展開が早くて、少し楽に鑑賞できました。(61歳 男)
米兵と中国人女性の惹かれ合う関係をズタズタにしてしまう本当に酷い話だった。中国人女性を殺した奴が本当に許せない!!(58歳 男)
電話を鳴らしたり、会話をする高齢の女性がいて不快でした。上映前に再度注意して下さい。(56歳 男)
映画は良かったけれど、となりの席の高齢の女性二人が上映中に携帯を鳴らしたり、ずーっとおしゃべりをしたりして、不快な思いをしました。周囲の方達もめいわくしていました。エンディングの時に男性が注意しましたが、ご本人たちはあまり分かっていないようでした。※マナーを守らない人達が居られるのはとても残念です!!
歴史に学ぶべし――どうやって。
邦題がいまいちだったので、大丈夫かなと思ったけれど、日本人としてちょっと、いや、かなり痛い映画だったけど、よかったです。(女)

講師の方から背景についてお話しされていたので少し理解できましたが、帝国の日本がいかにアジアで2千万人も虐殺したのか、その一端だと思います。今の日本は過去の歴史をなかったように国をあげて総動員しているのではないかと憂慮します。(73歳 女)
船もろともどこかの海に沈んだ従兄たちの父親。その一字が二一年うまれの私につけられた。戦争はむごい。4人の従兄たちは父を知らずに育ち、今、高齢でひとり逝きました。私は達者に生きねばとあらためて思いました。(72歳 女)
戦争のエゴイスティックをまざまざとみせつけられ、何度も目をふせ耳を両手でふさぐなど、二度と戦争はしてはいけない、誰れのためでもない自分のために戦さはしてはいけないですよ!!(71歳 女)
戦争映画は派手な戦い場面が多いけど実際は今日の映画のようにくりひろげられた戦いの数々だったと思います。戦争はだめ! 中国の蚕との生活、つつましい生活が心に残りました。(71歳 女)
戦争は人の命をうばいつくすもの。しかし、その命を命がけで助ける人もいた。あらためて、日本軍が南京をはじめ、中国やアジアで行った蛮行に眼をおおうものがあると感じた。(70歳 女)
戦争には、善・悪はありません。人の命は大切にしなければなりません。(68歳 男)
邦題は今ひとつ。Chinese Widowそのままの方がよいと思った。運命の人などという甘ったるい把え方は違うだろうと見る前からちょっと抵抗感があったが、実際には緊迫感もあり、日本軍への抵抗組織や中国庶民の心情なども女主人公を通してうまく描かれていたと思う。(68歳 女)
できすぎた話かもしれませんが、中国の人たちが大切にしている心が伝わってきました。(66歳 男)
北欧の監督なので、アジアで起きた戦争に関しては詳しくないのか?と思える演出でした。日本空襲が開戦から5ヶ月目にあったことに驚きです。(66歳 男)
原爆記念、終戦の日と、8月はいつも戦争関連の特集や映画が多い中で、この作品は中国本国でも苦情があったのもうなずける位、インズのように美し過ぎる、又上品過ぎる映画でした。だからこそ一層戦争の、旧日本兵のむごさが静けさの中から心に響きました。でも、先日観た台湾の映画では、旧日本帝国と中国との対比が、予想と違い、どうして日本人はあのときあんなむごいことをしたのかと・・・戦争の持つ魔力でしょうか。(65歳 女)
戦争がおこると人の命が無残に侵され、いつも庶民が犠牲になっている。絶対におこしてはいけないと思う。(63歳 女)
大きなスクリーンは風景もよく迫力があってよかったです。米兵ジャックが地下室から出歩いて「いいかげん」ですが、がまんが出来ない陽気なタイプでしょう。日本軍占領地の厳しさが薄らいでいますが、それがこの映画の特徴です。でもあっさりと村長を殺したり、村を焼き打ちしたりと日本軍の三光作戦を反映しています。ドーリットル作戦、小さな空襲が戦局を大きく変えます。それとは関係なくほのかな男女のふれあいがあったというロマンス映画と見ました。(63歳 男)
映画と解っていても、いつ日本軍に見つかるかと、ドキドキして画面を見るのが恐かった。戦争は本当に嫌だ!!(60歳 女)
次になにが起こるかドキドキしながら観てました。戦況の中の人間関係に焦点が当たっていて、少し軽いとも思いましたが、中国の映画の変化を感じられました。(60歳 女)
大阪のシネ・リーブル梅田では毎年のように埋もれた未公開映画上映会を実施していて、今回の映画も今年はじめの頃の上映作品でしたが、見に行けませんでした。でもその後、新開地の映画館で上映してくれて、見ることができました。それで、多分、わたしだけが二回、映画館で見ていると思います。日本が中国に対して犯した罪を意識することは大切だと思っています。これからもよろしくお願いします。(60代 女)
戦争があっての出会い。戦争があっての悲劇。あの静かな竹林の生活が一瞬で奪われる。色々心に残りました。
講演もわかりやすく、大変学ばせていただきました。日本人として痛みを伴う映画ですが、しっかり抗日映画を観ていくことが必要だと思いました。(今後の例会について、『クレアモントホテル』をもう一度観てみたいです)(女)
舞台となる中国の田舎の村の風景、町を流れる川、川にかかる石造りの橋、心に残ります。ニュウニュウとジャックの、又、インズとジャックの少しずつ近づいてゆく距離をあらわすエピソード、細部がとても良かった。(女)

冒頭で、ジャックが生き延びてしまっていることを明かす、という物語構成を含めて、いろいろと納得のしにくい作品でした。最も腑に落ちないのは、大変な危険を冒して米兵を匿おうとするインズの情動です。好感を持っていた村長カイの遺志であるとは言え、あそこまで突き進むのは、どう考えても無理があるように思ってしまいます。ドゥーリットル空襲でかなりの米兵が中国人民に救助されたことは認識しますが、この映画のようなシチュエーションが実際に起こったのかはかなり疑問があります。まあ、軍命によってジャックがニュウニュウと引き離されるという、戦乱の中で人間性というものがスポイルされる様を加えていることは、一応の理性を感じさせましたが・・・。(67歳 男)

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