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2019年2月例会『ザ・ウォーター・ウォー』

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解説

水戦争から見えてくるコロンブスの新大陸発見と先住民たち

 2018年12月17日、NHKのニュースで岩手県雫石町の一部地域において水道の供給停止を民間の水道会社から通知され、困り果てたペンション経営者が映し出されていた。その場は水道料金を自治体が一時払いし、今冬の供給停止はおさまった。雫石町といえばプリンスホテルがスキー場、ホテル、ゴルフ場を経営し、東北のリゾート地として有名だ。
 我が国では昔から水は天からの恵みだと言われてきた。公の資源だという認識を自然と人々は持ち合わせて暮らしてきたし、例えば兵庫県の東播磨、北播磨地区近辺には農業用のため池が日本一多くあり、共通の財産として守られてきた歴史がある。
 映画『ザ・ウォーター・ウォー』は南米ボリビアの標高2500mにあるコチャバンバ(ケチュア語で大草原という意味)という山岳都市で2000年実際に起こった水を巡る市民と水道企業との闘いをコロンブスの新大陸発見時を題材としたスペインの映画チームの撮影場面と重ね合わせて描いた作品だ。
 この映画の比重は水紛争よりコロンブスが西インド諸島に上陸後、先住民のインディオをどのように扱ってきたかという歴史的事実を映画撮影という形で再現した事の方が大きいと私には思える。
 映画の原題 はTambien la Lluvia (スペイン語で雨さえも)だ。私は当初、映画の中盤でコチャバンバ市民の一人ダニエルが水事業会社の前で「俺たちの意に反して湖と河と井戸が売られる。多国籍企業は雨さえも奪ってしまうのか?」と叫んだその言葉をそのまま理解していたが、この「雨さえも」という言葉は遡ること500年前に先住民のインディオ達がスペイン人により自分の土地、財産、家族までも奪われた果ての痛烈な叫びと重なり合うのだ。
 映画の冒頭、映画のエキストラの頭上をキリスト教の象徴ともいえる木製の十字架がヘリで撮影地へと運ばれていく。プロデューサーは言う。「ここには貧しい人達がいる。タノイ族でなくてもケチュア族で十分だ」と。
 劇中劇の中で西インド諸島のエスパニョーラ島に上陸したコロンブスはスペインの国旗を地面に突き立て先住民のタノイ族に対し、こう言う。「私、コロンブスはフェルナンド王とイザベル女王の家臣である。イエスキリストの名においてこの地と海と、その所産の占有を宣言する。これによりこの土地はカトリック両王の統治下におかれた」と。その時、インディオ達はどんな思いだったのだろう。
 因みにコロンブスが上陸したカリブ海に住んでいたタノイ族たちインディオは1492年から僅か50年を待たずして征服者スペイン人により絶滅させられている。
 インディオたちは非人間的な状況の元で生き、死んでいった。が、1990年5月メキシコで時の法王ヨハネ・パウロ二世(ポーランド出身の偉大な宗教家と呼ばれている)は「新世界の発見、征服、キリスト教化は暗影もなくはなかったとは言え、全体としてみれば輝かしい位置を占める」と語り、西洋列強とカトリックが行った行為を正当化している。
 1494年にスペインとポルトガル両国で成立したトリデシリャス条約(支配領域分界線:西経46度37分を分界線とし、そこから東で新たに発見された地はポルトガルに、西の地はスペインに権利が与えられる事となった)により、二つの国は法王から新大陸を征服、統治する権利を与えられ、キリスト教の布教を伴った中南米に対する征服が加速する事となる。ポルトガルはこの条約によりブラジルを発見、植民地とする。
 スペイン人の武力と宗教の使い分けによる侵略政策に宗教者の立場から反対した人間もいた。劇中劇に登場する神父モンテ・シノスと司教ラス・カサスの二人だ。 
 神父モンテ・シノスは同胞のスペイン人に向かいこう言う。「あなた方の罪は深い。我々の暮らしは先住民の汗で成り立っている。どんな権利があって無実な者に苦痛を与え、平和に暮らしている者たちを従属させるのか」と。
 また司教ラス・カサスは先住民インディオたちの保護を求め、13回スペイン王フェルナンドに謁見している。二人共、その生涯をインディオたちの保護にささげた。
 劇中劇の中で先住民がスペイン人に対し、反旗を翻す場面があるが、あの場面は実際にコロンブスが1492年に39人のサンタマリア号の乗組員をエスパニョーラ島に残し、スペインに帰還。翌年島を再訪した時、乗組員全員が先住民に殺されていた事実を想起させる。乗組員たちは先住民の食料と女性を奪おうとして殺害されたのだ。
 この映画の舞台コチャバンバを通して、500年余り前にスペイン人により自分たちの大地と暮らしを奪われたインディオの姿がよみがえる思いがした。
参考文献
「コロンブスと大航海時代」(NHK出版)
・トーマス・R・バージャー著「コロンブスが来てから」(朝日選書)                          
(シネコンパ―ニョ・Suwon)

ひとくち感想

◎大変よかった  ◯良かった  ◇普通  ◆あまり良くなかった  □その他

久しぶりに来ましたがやはり映画は良いと感動しました。本当に良かった。(80歳 女)
ロケとライブに何度もひっかけられた。(80歳 男)
ハッピーエンドで良かった。侵略の歴史映画と現実が重なって大変迫力があって良かった。勇気ある行動がとれるのか、自問自答する所であった。(77歳 男)
黒人問題同様、北中南米の成り立ちも悲劇の上にある。映画撮影と現実、水問題と入り乱れて、迫力があった。公的役割を捨てた選択を我々も過小評価してないか。(74歳 男)
はじまりから身をのり出しての鑑賞でした。水戦争そのものでした。それぞれの立場の本音のセリフ、人間関係の現実、戦うとは本当に代償をともなうごとくでした。あの映画はどうなったのでしょうか?(74歳 女)
まず題名をみてアベの「水道民営化」や―頭にくるからみたい!思いとはちがったが最後のシーン、箱の中の「水」わーと思う感動。劇中劇なのに火の刑の場面、目をつむってしまうほど、手に汗です。斗いは民族、かけて水=命をかけ、女性、子供のさつえいを中止、母は強し。男性(撮影者側)は脱帽か! おわってアンケート書きながらもドキドキしながら…。淀川さんではないけど、映画っていいですね。(71歳 女)
神戸市の水道事業も継続して欲しいものです。(71歳 女)
水の問題も大変な中身だったが、コロンブスの大陸発見後の先住民への仕うちは、許せないと思った。映サならではの映画だった。(70歳 女)
コロンブスの大陸発見が出てきてとまどったが、実はそれと「水戦争」は繋がっているのですね。先住民が理由もなく土地を取り上げられ虐殺される。その事実を知るのに長くかかった。教科書ではコロンブスは英雄だったから。沖縄の人達が土地を取り上げられたのと似ています。不当です!『NO』に出ていた俳優、活躍していますね。(70代 女)
映画サークルに入っていなかったなら先月の『天命の城』も『ザ・ウォーター・ウォー』も見なかった作品だ。去年は100本以上超えたが、まだまだ良い作品がわかっていない。(69歳 女)
非常に重たく、また根底的な問題提起をもらいました。映画構造としても、物語の中に歴史映画制作クルーを組み込ませていく「入れ子」の仕掛けが、極めて有効で、格差社会と、その中での収奪の構図が、はるか昔から何ら変わっていないということを、しっかりと表現されていて、創り手たちの知性と感性を感じさせられて、ちょっと震えるような気分になりました。2000年に発生した「コチャバンバ水紛争」という事件、いや事変と言ってもいいのかも知れませんが、それがベースになっていると聞き、そんな事があったことを全く知らなかったのに少し恥ずかしくなる思いでしたが、こういったことは、世界中でイヤと言う程起こっているのでしょうね。(67歳 男)
ベレンを助けにゆく彼の心情、何かに核となるものが人を動かす。(67歳 男)
1492年コロンブス大陸発見の時代から2000年へ時は流れている中での事実を知り、本当にびっくりした。造りものの映画の中の先住民と今の自分がラップしていくようすはすごい。「水」をのんでる人はみんなたたかわなくてはというよびかけは真実だ。もっと平和にはすすまないのか?(65歳 女)
エキストラの母親たちが、「そんなのありえない」と子どもたちを抱いて水に入れるのをことわったところがよかった。スペインの統治時代と現在の現地の人たちの姿をだぶらせて、感動的な作品でした。ありがとう。(65歳 男)
水を考えるのにとてもよくできた脚本だと思いました。現代で起きている様々な問題について考えさせられる共通した点がある気がします。人間の欲を進歩といってよいのか、地球を壊しながら自分たちも暮らしづらい世の中にしているように感じました。日本だけでなく地球規模の異常天候など…。(64歳 女)
昔映画のシナリオハンティングで沖縄へ行った。市内は渇水期で給水制限をしていたが、観光客むけのホテルは自由に水が使えた。私は、植民地とはどういう場所か、初めて実感した。(64歳 男)
大変迫力ある映画で感動しました。多くの人に見てほしいです。ありがとうございました。(63歳 女)
南米の植民地化を進める過程と抵抗を描く映画の制作と、命の水を奪おうとする外国資本による水道民営化反対闘争を重ねて描き、しかも反対闘争のリーダーが映画で重要な役割を演じるという二重写しがすごい。制作者コスタの変化も興味深かった。(61歳 女)
最後までドキハラでした! 劇中の映画の方を通しで観たいです。(57歳 女)
これはもう水道局の民営化!!だれのための水なのか、つくづく考えさせられる話だった。自分たちの水は自分たちで守らねば、と。(57歳 男)
映画と現実、過去と未来、それらが交錯しながらとてもスリリングでドラマチックで娯楽映画としてもとても面白かったです。テーマは本当に〝水〟という根源的なもの。冒頭で出てきたカリブとアンデスの先住民のエピソードも印象的。水道の民営化は欧州では既に修正されつつありますが、日本をはじめアジアでは現在の問題。考えさせられます。もう一度是非みたいです。(56歳 女)
まさに〝命の水〟を実感しました。母親達が子どもに飲ませるために掘った井戸にまで錠をかけようとする水道企業のやり方にふつふつと怒りが湧いてきました。こういう企業に日本の水道の運営をまかせるようなことにならない為、しっかりしなければと思います。(55歳 女)
映画の作り方はすばらしかった。人の幸せをうばって自分が幸せになる権利は誰にもない。(55歳 男)
反対運動のリーダー、ダニエルの顔がよかった。あんないいつらがまえの人はいない。ダニエルの登場場面を見たさに映画を見続けられているような感じ。もちろん映画全体もよかった。(55歳 男)
画面があんなにゆれないで、せめてブルーレイ上映ならもっとよかったとはおもいます(いすもせまいですね…)あとガエル=ガルシア・ベルナルつながりで、パルシネマでこのあと『リメンバー・ミー』を、観ると、適度に白けられると思います。(「英語なら予算は二倍」)「先住民(?)が英語を話したら?」「おもしろいことになるだろな」「二年米国で働いていた。英語はしゃべれる」 日本では、あんな形の水戦争をおこして多国籍企業をおいだすことはできないでしょう。だから、今。退出するときにうしろの人の足をこっちのいすのなんかでハサんでしまいました。なれてなくって、申しわけない。注意喚起が必要ならおねがいします。(48歳 男)
『ザ・ウォーター・ウォー』というタイトルからは想像もつかない出だしでびっくりした。スペイン等による南米大陸の征服、植民地化の映画製作と水の問題を二重写しにして、いまだに西洋諸国による原住民の搾取の現実をまざまざと見せつけられた。とても刺激的で、いろいろ考えさせられる作品でした。(40代 女)
戦場のロープ・ボリビア版?!どうなっちゃうのかハラハラ、ドキドキ。全てが終わってガレキだらけの街に誰もいない。1・17のあの日を思い出しました。私たちも一時的に脱出し、後ろめたさと安堵を感じたのを覚えています。これも「水」問題。日本の水はどうなってしまうのか、学ばなければと思います。(女)
たくさんの苦しみを意味もなく与えつづけられた先住民の戦いと水戦争の現在の戦いが交差しながら進むストーリーが興味深かった。最後に男同志の友情を見た。(女)
情勢、水の価値、人との繋がりに感動。(女)
歴史上のできごとと現在の状況を並行させているので、深みのある視点をもって観られた。(女)

映画を撮ることに信念を持つ男達の姿を見たようです。又一方、水問題は生死にかかる問題で、市民達の闘いのすごさを見ました。日本に振り返って沖縄問題を日本の未来の問題ととらえ闘う人々と無関心の多くの国民、どうなるんやろか。(73歳 女)
先住民との友情がよかった(67歳 男)
数年ぶりに見ることができてよかったです。水道民営化の話も出てきている昨今なので、タイムリーで、また、古びていない映画でした。内容にもう少し、映画製作シーンなどや映画の中の映画の脚本が今一かも?というところもありますが、まあよかったです。(67歳 女)
南米ボリビアの水戦争とコロンブス新大陸発見時の真実。西側諸国の目だけでは本当の歴史は見えてこない。我が国もしかりだ。(66歳 男)
水はホンマに大切ですな。水道局に頑張ってもらいたいです! それにしてもボリビアは気の毒なところだと思ってしまう。『明日に向って撃て』の中で出てくる印象、貴会の例会で観た、塩湖の塩を売る話の印象、そして今回のエキストラの出演者の方々の印象がなんか同じに見えてしまいます。明るいところもみたいですな。日系人も多いと聞きますし…。(63歳 男)
友情にゆり動かされる男なんて古臭い、でも大好きです。セバスチャンが命があぶなくても映画の完成をめざしてボリビアに残り、ダニエルはお金では転ばず、でも「もらっておけ」。コスタは映画よりも少女を助けに走る。金儲けの為に命の水を売る連中とは一八〇度違います。女もえらい。犬に喰われない為に、赤子を水に入れるシーンに同意しない、「過去のことではなく、現代の女はこうだと強い主張をしている。(62歳 男)
映画製作スタッフと先住民との関係が、新大陸発見当時と相似なものから、罪悪感に目覚めた神父に近づいていく過程が、よく描けていたと思いました。(60歳 男)
大航海時代の過酷な歴史と、今の水問題とがうまくからみあって、見応えのある作品でした。又、水問題は私達も水の民営化が年内(?)にあるそうで、さて、それからどうなるのかしらと思います。まさか『華氏119』のようなことのないことを祈りますが…。それにしてもカトリックは十字架を盾に悪いことをしていますね。(女)
ヘリコプターがつけさげて運んでくる映画用の十字架から別れのプレゼントとして渡されるビン詰めの水(これは聖水として読める)までの、空から降った雨が山を下り、川を流れ、海に行き、雲になり雨へもどることの自然の司事に人が介入し、横取りすることの横暴さがみえたようだ。ただ、映画づくりと政情不安と脱出劇とのシンクロ具合が少し物足りない。(男)
映画の中の実際の司祭のセリフ「真実には敵が多い、嘘には味方が多い」が良かった。現在の日本、そのものを指す言葉だ。事実を糊塗しつまらない番組をたれ流す日本のマスコミを批判している。(一般 匿名)

ボリビアはチェ・ゲバラが最後を迎えた国です。この映画はコロンブスが南米に来た当時のすさまじい原住民への暴力と現代の資本主義が住民に生き難い状況を押しつけ、住民が立ち上がらざるを得ない状況が重なっています。ラス・カサスが書いた当時の住民に対する暴力がフリとは。すばらしい映画でした。ありがとうございました。(91歳 女)
人ごとではないと思いました。民営化の動きは、昨年末公民館の講座で大学の教授を使って宣伝していたのを見て(聴いて)ひしひしと感じました。油断ならない。(62歳 女)

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