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2018年9月例会『Viva!公務員』

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解説

僕はどこへ行く? イタリア式リストラ撃退法

 『Viva!公務員』は本国でイタリア映画史上最大のヒット作となったコメディ映画です。神戸映サでは元町映画館とのコラボ企画「イタリア映画傑作選」の一本としてこの作品を取り上げます。7月以来、大雨、猛暑に続いて東から西に台風がやってくる異常な夏。ラテン気分でたまった疲れを笑い流しましょう。

 子供の頃からの夢を実現して公務員になったケッコが主人公。親と同居で生活費はかからず、食事は母親の手作り料理。恋人との結婚は先延ばしで悠々自適の毎日でしたが、政府の方針で人員削減の対象に。地方への転勤か退職金の増額かの選択で次々と自主退職していく同僚をよそに、僻地に飛ばされ閑職に追いやられ、人の嫌がる仕事を押し付けられても、あくまで「安定して優遇されている」公務員の立場を手放しません。
 このマザコン男ケッコをあの手この手で辞職させようとするのはリストラ担当、やりての女性部長シローニ。彼女とケッコとの攻防戦を縦糸に、ノルウェーにある観測所の研究員ヴァレリアと出会いを横糸にお話は進みます。
 北極圏に飛ばされ、観測所で研究員を白熊から護衛するのが仕事だと聞かされたケッコは、さすがにめげそうになりますが、守る相手がヴァレリアと知って、あっという間に前言撤回。極地での生活を始めるのです。
 公務員を辞めさせるというと大変な事態のようですが、イタリアでは2014年地方自治改革(デルリオ法)により、従来の州県市の三重構造を廃止、県議会の直接選挙が廃止されるなど、県の権限が大幅に縮小されたとのこと。このあたりの事情が反映されていると思われます。このほか映画では、ケッコと住民の賄賂をめぐるやりとりやお世話になった政治家との関係(ケッコがピンチに陥ると的確すぎる助言で窮地を救ってくれます)、イタリア人と北欧人の国民性の違い、イタリア各地の事情、バックで流れるイタリアン・ポップスなどイタリアとイタリア人の事情が織り込まれています。

 黙って見ても十分楽しめる映画なのですが、左遷される土地や使われている音楽が、ちょっとピンとこない部分もあるので、以下簡単にご紹介します。
 ケッコが15年間務めた職場のある町はバーリ県コンヴェルサーノ。人口2万6千人。長靴と言われるイタリアの南部、かかとのあたりにあります。
 最初に飛ばされたのはピエモンテ州スーザ。人口6400人。2006年冬季オリンピック開催地トリノのある県です。アルプスの景勝地で古代ローマの遺跡がたくさんある観光地ですが、高速鉄道(TAV)の建設に反対する村人たちが20数年にわたって村ぐるみで抵抗の運動(NOTAV)を展開している地域でもあります。
 次に向かうのは、サルディーニャ島のヌーオロ(長靴のスネの先の島)、ついでイタリア最南端の島、ランペドゥーサ島へ行かされます。人口5千人で「死ぬまでに行きたい! 世界の絶景」という本で紹介され日本でも知られるようになりました。難民が押し寄せる様子は映画『海は燃えている』でご覧になった方もいらっしゃるかも。
 ついで北極の観測所ニーオーレスンへ飛ばされます。ここはノルウェー領の北極の島、人が定住する地としては世界最北に位置する町です。1980年代からは、世界中の研究者に開放され極地科学や極地生態研究の世界的拠点として活用されるようになり、日本も研究所を設置しています。
 北極圏でも折れなかったケッコが向かうのは長靴のつまさき。ジョイア・タウロ、カラブリア州、人口1万八千人。このカラブリア州を拠点にしているのがマフィアのンドランゲタ。マクドナルドとドイツ銀行を合わせた以上に稼いでいると報じられ、先ごろ公開されたリドリー・スコット監督『ゲティの身代金』の題材となった石油王ゲティの孫を誘拐したのがこの組織だと言われています。

 映画では、ケッコ自身が音楽も担当しており、自作の歌だけでなく、ドラマの展開にあわせたイタリアン・ポップスが使われています。
 列車でローマに出向くケッコのバックに流れるのが1974年のヒット曲サント・カリフォルニアの唄う「トルネロ」(僕は帰ってくる)。この曲は北極からイタリアへ帰還するケッコの送別会でも歌われます。
 ノルウェーでヴァレリアとその子供たちと仲良くなったとき、ケッコはテレビでサンレモ音楽祭2015の中継をみて里心がついてしまいます。流れていたのは1982年のヒット曲、アル・バーノとロミナ・パワーが歌う「フェリシタ」(幸せ)。ロミナ・パワーはかのタイロン・パワーの娘でアル・バーノとおしどりカップルとして知られていましたが娘が行方不明になるという不幸な事件があり離別。16年ぶりに再結成したコンビに「よりが戻ったんだ、一緒に唄っている。」とケッコは感激するのです。
 後半ケッコがサングラスをかけて歌い出すのが映画の主題歌でもある「ラ・プリマ・レパブリカ」(以前のイタリア共和国」)。イタリアの大歌手アドリアーノ・チェレンターノの歌の替え歌を彼のモノマネで歌っています。チェレンターノはフェリーニの映画『甘い生活』には本人役で出演し、ロックを熱唱しています。

 原題は『quo vado?』(オレはどこへ行く?)左遷される地理的な行き先と彼の今後の人生の行き先を想像させるタイトルです。もう一つローマのネロの迫害を逃れてきたペトロの言葉「主よ何処に行かれるのですか?」(Quo vadis, Domine?)をも連想されます。ロバート・テイラーがでた映画『クオ・ヴァディス』を思い出す方もいらっしゃるかもしれません。
 ペトロはローマに引き返し命を落としますが、果たしてケッコの運命やいかに。決着の舞台はアフリカです。

参考ウェブサイト
□exciteism 二井康雄/Viva公務員【今週末見るべき映画】
□【映画の音楽ネタ】Piccola RADIO-ITALIA~イタリアン・ポップスを簡単に聴ける環境を日本に作りたい~
□『Viva!公務員』を楽しむためのセミナー「イタリア映画で笑うために」のご報告(日伊協会)

ひとくち感想

◎大変よかった  ◯良かった  ◇普通  ◆あまり良くなかった  ☐その他

イタリア語の先生からすすめられて、見に来ました。とても面白く、アイロニーにも富んでいて…。(80歳 女)
次は悲劇か次は…とハラハラと、それでいて見あきず楽しみました。男優さん、ひとりで大活躍。今の時代にあっぱれの感がしました。楽しかったです。(77歳 女)
公務員だましいのパロディ化。イタリアならではと思いつつ、私の中にも嫉妬と強欲さを見つけさせられ、まいったな!(77歳 男)
『Viva!公務員』というより「Viva!ケッコ」と言いたい。彼のようなマインド半分、いや1/10でも持っていたいもの。景色もすばらしかった。90分至福の時間を持ててありがとう。(74歳 男)
よく笑いました。爽快でした。(72歳 女)
抱腹絶倒か、働いただけ収入権利は当然なれど、働くところのない若者、女性、中年男女、考えさせられ、フムフム。日本人もガンバローね。今退職したわたし。(71歳 女)
ノー天気に楽しめる、笑える映画が久し振りに見れてよかったです。イタリアの公務員や国民性への痛烈な皮肉も沢山あり、奥も深かった。日本でもこういう日本版のを撮って欲しい。(71歳 男)
この夏、あまりにも世の中のニュースに腹が立ち、くらい心になっていたから、こんな現実とはかけはなれた、笑える映画がうれしかった。最後のおわり方もいい!(70歳 女)
とても楽しい映画だったが、しっかり皮肉も訴えていた。(67歳 男)
◎かなり頭のいい、野蛮なのに知的な笑いを堪能しました。ひとつ間違えれば、相当に差別的にもなりそうな文脈も大胆に駆使しながら、世の中すべてのありようを突き放して自虐的に笑いとばす、このカリカチャアは、実に小気味いい。矛盾に満ち溢れた社会情況を、こんな風に素っ頓狂な喜劇に仕立てあげることが、おんなじような情況のこの日本では到底出来ないでしょうね。イタリア人恐るべし。(66歳 男)
逆説的皮肉もここまで表現したら〝快娯楽作品〟となる。とにかく笑った。そして、思った。〝お手盛り〟が好きなのは〝万国共通〟だと。(65歳 女)
いやいや、楽しませてもらいました!!(63歳 女)
金髪の坊やが見たパパの職場には?お茶やお菓子で寛ぎ、役所の電話でおしゃべりし、プレゼントを貰う大人達。「僕も公務員になりたい!」
 念願叶えた彼なのに、若い、妻子なし、具合の悪い親兄弟なしでリストラの標的に。駆け込み結婚は無効と言われ、恋人へのプロポーズを中止する身勝手さ。回された閑職は楽ちんと喜び、イタリアのワイルドな土地を転々とさせられても順応。
 北極に送られても美人研究者と気が合い、ルンルンで環境保護。ノルウェーの自宅に招かれ元カレ達との多人種の子供達に驚くが、好きな人の子だからと優しく気遣う。白人の子に「君は人種的に上だけど年下」黒人の子に「君は人種的に下だけど年上」「だから同じ」と真顔で喧嘩をなだめるのには仰天!「資格があるから大丈夫」と言う彼女を伴い明るい母国へ戻るが、住居のトラブル、事業の妨害があり(環境や動物の研究保護が生き甲斐の)彼女は子供達と帰国。(仕事の内容より、楽さと安定の)彼は、狩猟許可の部署に戻され、性懲りもなくウズラをおねだり。
 二人はこれっきりと思いきや、アフリカに渡った彼女から子供が生まれると聞き向かう。原住民に火あぶりにされかけるが、赤ちゃんの事を話し、祝福解放される。
 パパとなった彼は、土地の病院の劣悪な状況を知り、公務員をやめ、退職金の上積み分を、医療の充実のため寄付する。自己中心から、身近な人、さらにたくさんの人々へと思いやる心が広がっていったのですね。愛は人の性格や能力も変える。
 彼が長期間ねばれたのは過重な労働や健康を害する程の任務、強圧的或いは陰湿なパワハラがなかったからか。
 日本の事を考えると、人を殺傷するためだけでなく人を助けるための物や人に税金を使い、権力者や一部の裕福な人達のためでなく、一番困っている人達のために、公務員が働き、必要な人員は確保され公務員自身も健康や家庭生活を維持できたら、世の中良くなると思う。(63歳 女)
笑うところが多く、たのしい映画だった。イタリア人への偏見、北欧のステレオタイプに満ち満ちていて、そして公務員に対しても。一種のパロディ?(六○歳 女)
おもしろかった。あの部長はいろんなところへ左遷させていたが、もし自分だったらあの「左遷」には逆にいろんな楽しいことを考えていたに違いない。イタリア料理の立て看板を取り外したくなる気持ちは何となくわかる。(57歳 男)
Viva!会社員、昔の邦画を見るような感じの楽しい作品でした。ありがとうございます。(54歳 男)
面白かった!! タフで陽気で柔軟なイタリア人、すてきでした。上映中のみんなの笑い声も良かったので、『カメラを止めるな!』も例会で観たら楽しいと思う。(42歳 女)
イメージとは違う内容で痛快、爽快、楽しく観ました。最後の歌詞、〝つけはどうせ子供が払う〟は日本と一緒、聞き流せない!
笑いの中に環境問題あり、アフリカの問題あり、その他も…で興味深かったです。(女)
「逆コスタリカ」みたいなブッ飛びのストーリーでした。ものすごく皮肉がきいていて、日本版もぜひつくってほしいです。炎上しそうだけど…。ウソつきで保守のオジさんたちがいっぱいいる日本ならすごく似てるなーと思って観ていました。(女)
久しぶりに来ました。前の会場より駅から近く行きやすい。毎月見たくなる映画の選び方にいつもすごいと思ってます。しかし、仕事があるので、なかなか参加できないのが残念。今回来れて、それだけでうれしい。シネマポートフェスも参加してチケットできてます。元町映画館もパルシネマもCinema KOBEもいい映画館、来年もぜひやって下さい。映画とてもよかった。すばらしい。ありがとう感謝してます。本当に見れてよかった。またみたいです。(女)
『いつだってやめられる』というイタリア映画が面白かったので、今回も楽しみにしていましたが、とても面白い映画でした。アメリカやイギリスの映画はたくさん入ってきますが、他の国の映画ももっと見てみたいと思います。

何と楽しい映画でしょう。公務員はどこでもそんなにうらやましがられているのか? 悪いイメージにもなりませんかね。(77歳 男)
久しぶりに単純に笑える映画でした。たまには、こんな映画もいいかなと思います。(70歳 女)
公務員…。自分もその職業でしたが、特権だけでなく、今、日本でも民間と変わらない位、厳しい職場になっています。でも、この職業をコメディに仕立てるとは、さすがイタリア!!(70歳 女)
落語を聴いているような楽しいドラマの映画でした。Good!!(70代 男)
二回目ですが、北極に加えてオーロラシーンがあったことは忘れていました。北から南まで、イタリア国内外を楽しめて、よかったです。小さいころの公務員のイメージが、イタリアとたいしてちがわなかったことを思い出しました。笑えて、社会風刺もあり、よかったです。(66歳 女)
最後まで楽しく見れましたが、赴任先のエピソードがもう少し描かれても良かったのではないかと思いました(各地の観光案内的な要素も含めて)。(65歳 男)
面白かった! 確かに公務員は年金も多いし、特典もいろいろあるらしいので。でも、あそこまでこだわるとは。Lastの父親のセリフがきいてますね。血筋ですか。主人公のサバイバル精神と、物事をとにかく良い方向にとって、行動していくのは、これからの世の中を生き抜く上で大事ですね。Go Positive!雨続きの毎日に、笑って、気持ちが晴れた気がします。(65歳 女)
イタリア人の考え方がおもしろかった。安定した職業だと思っていたが、国としてはきびしかった。ノルウェーとの市民的考えはすばらしい。(64歳 女)
楽しい時間をありがとうございました。次回も笑える作品、社会問題、ドキュメンタリー、色々期待しています。(63歳 女)
軽い笑いをさそうギャグを連発しながら、風刺のよくきいた映画でした。借金のつけは「子どもが払う」と笑いとばすのはいいけれども、日本なら自堕落な公務員の所為だとののしられます。学習会でもあったがイタリア社会全体にコネや賄賂が当たり前で、働き方もゆるいようです。イタリア人気質や昔のイタリアを否定しているように見え、なつかしがっているようです。きっとイタリアも変わっているのでしょう。(62歳 男)
最後まで楽しく見れた映画でした。ストーリーは空中分解しそうでいて、最後まで一貫性があり続けていました。(60歳 男)
イタリア映画らしく、陽気でユーモアを感じる楽しい映画でした。公務員が特別に優遇されていることには少々疑問を感じましたが、公務員でいることに執着していた主人公も、色々な人との出会いの中で、その気持ちが変化していったのだなと思いました。そのように考えると、人との出会いは不思議で、私自身もこれからも人との出会いを大切にしていこうと思いました。(女)
あのイタリアも変化しつつあるんですね。途中少しねてしまいましたが、面白かったです。ありがとうございました!(女)

おふざけで、ばかばかしくて、笑ったり、肩の力が抜けたりする内容でした。風刺もこめられているのかな。何が幸せなんだろうな。私はふだん力が入っていたな、とか考えました。(女)

楽しい映画だった。昔は良かった?(81歳 女)
公務員を優遇しすぎのかつての(?)イタリアを皮肉っているのだと思いつつ、差別的な物言いも出てくるので、時々笑いつつも落ちつかなかった。少しずつ目ざめて(?)部長からポケットマネーをせしめてワクチンを大量に購入したところで、ほっとした!! 左遷された場所での公務員としての働きぶりは面白かったし、殻を破って変わっていけるのはいい人なんだね。(67歳 女)
陽気で明るい主人公の最後は幸せになって、楽しい人生でした。

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