2018年8月例会『コスタリカの奇跡~積極的平和国家の作り方~』

解説

コスタリカの課題

民主主義を基盤として
 軍隊を持たない国として知られるコスタリカを紹介するドキュメンタリーです。前半は、第二次世界大戦後、どのような経緯で軍隊を放棄した憲法をつくられたか、いくつかの困難がありながら、それを定着させていったかという説明があります。そして後半にはそれを基にした国づくりを国民がどのように考えているかが紹介されます。そして最後は21世紀のコスタリカの課題が少し出され、平和国家としての理想を掲げて歩むという、国民的な決意で締めくくられていました。
 現在のコスタリカについて、貧困と格差拡大が大きな問題だ、と映画もいいますが、詳しい説明はありません。ここでは、それについて少し補足します。
 1949年に、常備軍を持たないという新憲法を制定し、国民解放党が比較的長く政権を担います。教育に力を入れて識字率を向上させて、医療も無償とするラテンアメリカでは珍しい社会民主主義政策の福祉国家をつくりました。その基盤になったのはコスタリカに根を張った民主主義です。
立憲共和制で三権分立に加えて選挙管理裁判所が独立してあり、国会は一院制五七人、完全比例代表制です。大統領ともども任期四年で連続再選が出来ません。投票率は低落傾向ですが2014年選挙では約七割となっています。投票権がない子供にも疑似選挙を体験させて、民主主義の重要性を教えています。
 コスタリカは地下資源も少なく、バナナとコーヒーに特化したモノカルチャー経済で、米国の多国籍企業が支配してきました。外交的にも冷戦時代は西側に位置し、米国の大きな影響を受ける国です。
 しかし軍隊を持たず、永世中立国宣言をしているために、米国の世界戦略からは少し距離を置いています。その変更を求めて米国は圧力をかけ続けてきましたが、国民の強い意志によって撥ねつけています。
 財政的には恒常的な赤字構造となっていました。それが一九八〇年代に破綻し、徐々にですが社会民主主義政策から新自由主義政策へと、国の形を変えます。

財政危機と新自由主義
 1982年外債返済不能宣言を出します。そのため世界銀行やIMF(国際通貨基金)等の指導に従って、緊縮財政と公的サービスの民営化、規制緩和、貿易の自由化というワシントン・コンセンサスを受け入れて、伝統的な社会福祉政策を変えていきました。
 86年代以降、国民解放党(中道左派)とキリスト教社会連合党(中道右派)の二大政党が交代で政権に就きますが、ともに新自由政策を進めます。
 半導体の多国籍企業の招致など外資の導入をはかる産業振興政策は、ある程度成功しています。しかし、それはコスタリカ経済全体の底上げにつながらず、工場立地地域とその他の地域の格差を生みます。また税財政構造等で経済成長の社会的再配分が機能していません。
 この映画でも貧困層の訴えがありますが、統計の数字でも貧困層は増えています。所得格差の指標であるジニ係数が1990年0.374→2011年0.515に拡大しています。教育や医療等での手厚い公的支援を守っていても、経済格差は開いています。
また政治家の汚職などの政治腐敗や保守的なマスコミ等の問題も抱えています。
 そのような情勢で、この映画に出てくるルイス・ソリス氏(市民行動党)が新自由主義反対を訴えて、2014年の選挙で少数野党から大統領に当選しました。18年の選挙でも市民行動党候補者が大統領になっています。
コスタリカと日本の憲法条文と現実を紹介します。
日本国憲法は前文で「全世界の国民が、ひとしく恐怖と欠乏から免かれ、平和のうちに生存する権利を有することを確認する」と謳い、それを実現するために九条で戦争と武力の行使等を放棄し、さらに「陸海空軍その他の戦力は、これを保持しない。国の交戦権は、これを認めない」と定めています。

日本の9条とコスタリカの12条
 戦争、戦闘行為そのものを全面的に否定する法文です。
 それに対してコスタリカ憲法の12条は「恒久制度としての軍隊は廃止する。公共秩序の監視と維持のために必要な警察力は保持する。大陸間協定により又は国防のためにのみ、軍隊を組織することができる。いずれの場合も文民権力に常に従属し、単独、又は共同して、審議することも声明又は宣言を出すこともできない」となっています。さらに147条では、非常事態時には徴兵し軍隊を組織できる、と書いてあります。
 憲法の精神としては「常備軍は廃止するが必要な場合は軍隊を組織できる。ただし文民統制」を謳っています。
 現実を見た場合、日本は世界有数の軍事力である自衛隊を持っています。日米安保条約は実質的に憲法よりも上位にあり、首都圏にも巨大な米軍基地を抱えています。その基地はベトナム戦争に供されました。イラク戦争には「後方支援」と称して派兵しています。
 コスタリカは二度の国境侵犯を受けましたが、大統領から裁判官、国民まで現憲法下では軍隊は持てない、という認識です。米国寄りの外交政策ですが、米軍基地はありません(7月1日時点のウィキペディアは事実誤認)。イラク戦争については一時賛成し有志連合に加盟しましたが、市民の訴えに憲法裁判所が違憲判決を出し、国の方針が変わりました。
 日本とコスタリカ、ともに憲法は軍事力を否定していますが、日本国民は自衛隊も米軍基地も容認する政治を選択しています。5兆円の軍事費を医療、教育に回せばどれほどのことができるか、私たちは真剣に考えねば、と思います。
(Q)

参考文献:「岐路に立つコスタリカ―新自由主義か社会民主主義か―」山岡加奈子編著/シネ・フロント特集号/インターネット情報他

ひとくち感想

◎大変よかった  ◯良かった  ◇普通  ◆あまり良くなかった  ☐その他

日本人よ、コスタリカを見習おう!!(86歳 男)
大変よかった。(82歳 男)
今日の観客がえりを正して観ていたのが印象的です。驚きの映画でした。証言だけでコスタリカの決意を示したのですから。軍隊を廃止し「人間に投資すべきです」は、非常にわかりやすいスローガンだ。(77歳 男)
約12年前から軍隊のない国として知っていましたが、人類のあるべき姿であり良い映画を見させて頂きました。それにしてもこんな素晴しい国をこわそうとしているのはグローバル経済主義や武器輸出で牛耳っている米国であること、その米国いいなりの安倍内閣に改めていかりを感じます。(77歳 女)
日本でも実現できることを望みます。(75歳 女)
頭のよい人が日本の政治家に出てきてほしい。(74歳 女)
政治の力は各人の力の集合である。しかし、それは頭数ではないのだと分かる。アレコレ、今の日本を省みることが多い。(74歳 男)
大変よかったです!!! 理想の国家、けんかで、戦争で、平和は生まれない。その通りです。日本もそういう国になりたい!(73歳 女)
コスタリカの国ってどんなかなと興味をもって観にきました。行ってみたいです。やはりすぐれたリーダーと、軍をやめて教育に予算をまわしたことで教育に力を入れてるから、平和を望む国民が育ってるんだと思った。米からあんなに再軍備の圧力がかかって、それをはねかえしてるとは知らなかった。それに世界的な新自由主義の波がおしよせてるんですね。でも国際法を力にしてるとは! 日本とはえらい違いです。核禁止条約採択にホワイト議長を出した国だけあります。(72歳 女)
コスタリカの素晴しい指導者と国民の平和に対しての強い思いが伝わる、とても内容のある映画でよかったです。米国の永遠に続くように思われる武器輸出、戦争を起こす政策には人類への失望感が強かったのですが一条の光を見たような気がします。(72歳 女)
コスタリカの非軍隊国は一日にして成らず!! 歴代の大統領がつなぎ、外交努力をし、外部大国の脅威に「ひるまず」守り続けた結果ですね。日本に住む私達も「ひるまず」戦争ほうきしましょう。(71歳 女)
各国が国際法に基づいていれば紛争も起こらず、平和にもなれるのではないか? 兵器も武器もいらない。コスタリカも若い時代をのりこえ、今に至ったことがわかりました。全世界が中立、平和憲法を作り、守っていけば戦争もないでしょう。(70歳 女)
ドキュメントだがとてもよかった。「軍隊のない国」の現実がよく出ていた。紛争があった時の解決法。隣国からの侵入(?)時は国際司法裁判所へ訴える。その代わり(?)普段からこの裁判所の活動に協力する。軍事費は教育・医療費に。そして平和教育を常に行う。日本も9条を持っているのだからコスタリカのようになれる筈(!)(70代 女)
8月10日(金)11時30分の回。2Fホール満員。よく入った。今の日本と対極同様の「コスタリカ」→今の日本を正確に判断する資料に出来ればなおGOOD。(70代 男)
小さな国が軍備を持つことの馬鹿馬鹿しさを一刀両断、胸がすく思い。しかし経済格差という課題も。(69歳 女)
グローバル化の波の中、コスタリカの未来に注視し日本もそんな国になれるよう望む。(68歳 男)
以前から見たいと思っていた映画なのでやっと見れて良かった。(68歳 男)
コスタリカの奇跡。平和を大切にする国としては素晴らしいと思います。日本はアメリカの傘下で主体的なことはしていません。このままでは時代は変えられません。(66歳 男)
まさに正論。しかし、その正論を揺るぎなく推し進めているコスタリカにして、「富裕層ファースト」のグローバル化の荒波に、その存立を危うくさせられ始めているとの指摘には、心胆寒からしめるものがありました。同じ時期に「武装放棄」を謳って成立した日本国憲法への言及が全くなかったのは、既にそれが大きく形骸化していることが世界的にもう認識されているからでしょうか。地理的に、ずっとアメリカに近いこの国が、しっかり自立し毅然とした姿勢を貫いているのを見ていると、改めて私達の住むこの国の政治的惨状に、重たい気分になってしまいます。日本でも、エノケンさんが「ブキをすてましょ、すてましょブキ!」と歌ってた時代もあったんですが…。(66歳 男)
社会性のある映画。これからも私達の社会をどうしたらいいかを考えられるような映画をみたいです!(65歳 女)
コスタリカは素晴しい国家です。日本も見習ってほしい。(65歳 男)
今まで軍隊のない国がある事を知りませんでした。大変感動しました。(63歳 女)
感動しすぎて泣きました。日本だってやれないことはない!勇気をもらいました。(59歳 女)
日本の憲法もそのまま、軍事費を教育、福祉に!(58歳 女)
本当に理想的な話だった。戦争がないということは、人の心身を傷つけることがないことを表すもの。(57歳 男)
侵略されたことを法にうったえるという考えは、初めて知った。非常にためになった。(55歳 男)
テレビ「旅サラダ」でコスタリカの魅力、自然を素晴らしいと思い、さらに詳しく知りたいと思い、見に来ました。上映、ありがとうございます。(48歳 女)
以前から見たい映画でよかった。これからもメッセージのある映画、期待しています。(44歳 女)
国際法の大切さがよくわかった。自衛のために武器を増やす、武力を持つということが国のきべんであることがよくわかった。(41歳 女)
現実にこの様な国があることのおどろき、あきらめない事の大切さ、知らされました。(匿名)
よかったけど…日本にはムリかなぁ、こういうあきらめムードがよくないのか? とにかく右傾化がどんどん進んで止まらない。でもコスタリカもアメリカと近いし、小さいし、日本も少し前までは外交努力で米とやりあってきてたのに…。なんであんなに尾をふってばかりいるのか…。(女)
すごく見応えのある映画でした。コスタリカの軍撤廃までの道のりは決して簡単なものではなかったと思いますが、何があっても平和国家への道をあきらめなかったところが素晴らしいと思いました。(匿名)
どの国も同じ事をやるべき。(匿名)
全ての国が平和を願ってほしいと思います。(女)
理想を高く掲げ、その実現の為に歩む事の素晴らしさを知りました。ビバ、コスタリカ!!(匿名)
すごい国!コスタリカ! 日本は世界に誇る憲法を持っていても守らせていない。頑張ってコスタリカのようにしなければ。(匿名)
コスタリカという国のこと、軍隊を持たないこと、初めて知る事だらけだったので、見られてよかったです。日本の政治家(アベシンゾー)にも見せたい映画です!(匿名)
日本の政治家達に「コスタリカ魂」の爪のアカを、煎じて飲ませたいものだ。まずは自分の足元を見直そう。(女)

今の日本の政治家皆に観てもらいたいと思いました。(79歳 女)
コスタリカのことがよく話にき□世界の国がコスタリカのように戦争のない国になればと思います。理想ですが…。(77歳 女)
コスタリカの奇跡、一人一人の意見にエネルギーがあり、コスタリカ自国の道を平和にもたらそうとしていること、如何に安倍政権下の中にいる我々に警告を与えてくれるかと。(74歳 女)
映画としては、言葉が過剰で考える余裕を与えず、これでもかと主張する感じで、大変よいとは言い難い。しかし、コスタリカという国の挑戦はすばらしい。(『A bold Peace』 まさに「大胆な」挑戦である)米国という大国相手に一歩も引かない大胆さは、日本の政治家に見習ってほしいところである。(67歳 女)
他国に攻め込まれたらどうするの?という不安感が軍隊を存続させるのだと思いました。福祉、教育が充実していたから、廃止を国民が支持できたというところを知らなかったので、その他、いろいろ知らなかったことが多かったです。(66歳 女)
軍隊がない、軍事費をすべて国民のために使うというのは本当にすばらしい。1%が99%をあつめる資本主義の格差は一国では片付かない問題、貧しさが一番の悪だと思った。(64歳 女)
ちょっと字幕を読むのがいそがしい映画でした。コスタリカが軍隊を持たないという決断は非常に高い政治的判断に基づいたものだとわかります。しかも、それを武器に周辺国と外交を展開しているのはまったく見事です。我が国の愚かでみっともない外交と比較してしまいました。しかし、内政的には資本主義を規制できない現実が出ていました。軍事費がゼロでも新自由主義政治はこわいものです。(62歳 男)
理想を形にしては危機に直面してきたコスタリカという国の存在を身近に知ることができました。(60歳 男)
私はこのタイプの話にかなり関心があり、いろいろ調べてもきたが、コスタリカの人々の民度の高さには敬服する。そもそも中南米は欧米にとんでもない目に何度もあわされてきており、内戦も多く貧困も深刻で、ウンザリしてきているのだろう。北のニカラグアはいろいろあったが、軍事費はコスタリカの治安警察費の1/5以下で、南のパナマはコスタリカより徹底して米軍を追い出していて、同様に軍隊はない!(国防隊はあるけど)コスタリカが中南米はもちろん国連加盟国すべてに良い影響を与えていることも理解できる。ただ、国際法や国際秩序を守らない国々にどう向き合うかということが問われる今日、「非武装」がはたして有効かどうか、正しいかどうかわからない。やはり、北欧なんかに多い武装中立の方が、国家として有効ではないだろうか? それにしても米州機構は良いとしても、新自由主義とアメリカグローバリズムはひどいと思う。USAの新しい社会民主主義的ムーヴメントに期待したい!ちょっと今回の主張ではベトナムに失礼かなとも思う。映画でのトマス・ジェファーソンやアイゼンハワーの話は知らなかった。(57歳 男)
日本も小国だから、コスタリカに学ぶべきですね。いい人がいっぱいいるんだなあ(40歳 女)
軍隊を解散させ、その費用を、教育、医療に回すとは、なんと思い切ったこと! 勇気のあることと、立派なことと、それだけでも十分に尊敬に値し、他国が見習うのかと、私は単純にあこがれましたが、大国が経済的に地理的に圧迫を加えて、継続させるのに大変とは…。生きていくことは、国を存続させるのは、大変ですね。むつかしいでした。(女)
ナレーション多すぎると思った。(匿名)

米国一部の州の大麻合法化後なので、麻薬戦争といわれてもピントこない。(43歳 男)

良い映画を見せてくれて、ありがとうございます。日本の安倍の貧しい政治をみるにつけ、市民運動の必要性―それも数十年に亘る―を強く感じました。(73歳 男)
いていたが、実際の映画をみて、軍隊をなくし、福祉や医療、教育に力をそそいで、国づくりをすすめ、国民の幸福度一位になったことはすごいと思う。しかし、常に大国(アメリカ)からの圧力もあり、貧富の差も拡がっている課題も示されていたが、たゆまず、歩む国を応援したい!(70歳 女)
中身の濃い映画で考えることも学ぶこともたくさんありました。軍をもたないことは、ビジョン、外交力、絶えまない努力が必要とかんじました。(33歳 女)
政治的関心、教育がコスタリカ国民に根づいてるのだと思います。よい映画をありがとうございます。(26歳 女)
福祉の魂がゆさぶられました!!(女)