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2017年7月例会『レ・ミゼラブル』

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解説

「レ・ミゼラブル」映画の世界

 7月例会フランス映画『レ・ミゼラブル』は、オープニングから圧倒され、これからはじまる物語の展開にゾクゾクさせられる。海。座礁した船。凍るように高波が砕け散る。波に抗うように船を引く囚人たち。ダイナミックな映像『レ・ミゼラブル』のはじまりである。
 この物語は、1759年、ファブロールの枝切り職人ジャン・バルジャンが協会前の広場にあるモーベル・イサボンのパン屋の窓ガラスを割り、パンを盗み5年の懲役刑になる。脱獄をしてマドレーヌと名を変え市長になった歴史上の人物の話である。

歴史大河小説
 ヴィクトル・ユーゴーはこの話を歴史大河小説「レ・ミゼラブル」と名付けて1862年に発表した。
 「レ・ミゼラブル」は「悲惨な人々」とか「哀れな人々」を意味する言葉。
 主人公ジャン・バルジャンは仮釈放中の身で再び犯した罪を、ミニエル司教に救われ、それをきっかけに、罪を償う人生を全うしようとする。この人物を中心に、多くの登場人物が交錯する。厳格な法の番人である鬼警部ジャベール。娘愛しさのあまり売春婦に身を落として死んでいくファンテーヌ。卑劣極まりない小悪党のテナルディエ夫婦。死を賭して革命の理想を追求するアンジョルラス。孤児の身の上だが革命のバリケードをいきいきと飛びまわる悪戯なガブロージュ。善良で純真な恋人たち、マリウスとコゼット。あばずれの外見の下に純愛を包んで天に召されるエポニーヌ。など、類型的な人物像とできすぎと思える物語展開である。しかしそんなことより、有無を言わさぬ小説の面白さ、描写の迫力、歴史考証の緻密さ、悠揚としてしかも絶え間なく流れるストーリー、ここには、物語の力が満ちあふれている。ヴィクトル・ユーゴーのこの世から「悲惨な人々」をなくしたいという人道的な理想主義がこの小説のバックボーンとして貫かれている。
 ユーゴーが人間的思想のすべてをつぎ込んだこの小説「レ・ミゼラブル」は発表と同時に爆発的な売れ行きをしめした。

ミュージカル
 小説「レ・ミゼラブル」の豊かで深い世界を、ミュージカル「レ・ミゼラブル」として脚本家アラン・ブーブリルは成功させた。脚本にするのがどれほど困難な作業であったかは容易に想像がつく。波乱万丈の一大ドラマの精髄をコンパクトに凝視し、しかも物語の力点をジャン・バルジャンの個人メロドラマから、もっとスケールの大きな群集劇へと移し、ユーゴーのヒューマニズムをさらに普遍的なドラマへと仕上げている。作曲者のクロード=ミッセル・シェーンベルクは、オペラにおけるライトモチーフの手法を活用して、同じ旋律をさまざまな場面にちりばめることで、登場人物それぞれの個性とドラマの統一性という、相反する要素をたくみに調和させている。演出のジョン・ケアードとトレバー・ナンのダイナミックな演出も注目の的である。ロイヤル・シェイクスピア劇団の出身であり、今世紀最高の演出家のひとり。スターやヒーロー、ヒロインではなく、民衆こそが主人公なのだという視点を一貫させている。ミュージカル「レ・ミゼラブル」は世界に広く受け入れられ、世界43カ国で上演され、今なおロングランを続けている。

そして映画へ
 映画『レ・ミゼラブル』は世界中を魅了してきたこの傑作ミュージカルの映画化である。監督のトム・フーパーは鮮やかな手際でスクリーンに映しスケールアップして見せる。まずは、オープニングから全開の、ズームを駆使したダイナミックな映像。バルジャン(ヒュー・ジャックマン)、が「独白」の歌とともに仮釈放証を破り捨てるくだりもそのひとつ。紙切れが宙を舞い、浄化されるように光に吸い込まれていく場面は鮮やかである。またバルジャンを追い詰めたジャベール(ラッセル・クロウ)が決意を歌う「星よ」。パリの街並みを睥睍する彼の歌は、上空に広がり最後は夜空を突き抜け天に上がっていく。そうした魅力的なシーンを挙げればきりがないが、学生たちが革命に向けて蜂起する場面と映画ラストの、共に「民衆の歌」が響く二つのシーンの壮大なスケール感には特に圧倒される。
 映画版ならではの描写がドラマを深めてもいる。仮釈放後のバルジャンの彷徨は、舞台と異なって歌はない代わり、寒々しい山越えを映しだすことで、彼の凍える心も映し出す。工場をクビになったファンテーヌ(アン・ハサウェイ)が堕ちていくさまも、原作に立ち戻って、髪から歯までを売るくだりが一気に綴られる。やはり原作に基づき、マリウス(エディ・レッドメイン)が貴属の実家とは絶縁している背景にも、映画は触れる。
ミュージカル・ナンバーも洗い直された。舞台版とはナンバーの順番や入るシーンが少し変わった。最も大きなポイントは、新曲「サンドリー」が加わったことである。オリジナルの作曲・作詞コンビが映画に書き下ろした、幼いコゼットを見守り、心の奥から湧きあがってきた愛しさをうたうこの歌は、その後のバルジャンの生き方を支えるモチベーションを明瞭に提示して効果的である。
 一方で、舞台版になじんだファンにとっては、生身の人間が目の前で歌い演技する重厚な舞台の奥深さと比べて物足りなさを感じるかもしれない。また気にかかる変更もある。革命を目指す学生たちが集う「ABCカフェ」のシークエンスが短くなっているし、エポニーヌ(サマンサ・バークス)のキャラクターが小さくなったことがそうである。エピニーヌは大半の舞台ファンのお気に入りのキャラなので少し不満かもしれない。
 代わりにガヴロージュ(ダニエル・ハコルストーン)が大活躍するが、映画での彼の登場は、原作に基づいた躍動的なシーンになっている。革命で命を散らし道端に横たえられた彼の死体にジャベールが自分の勲章を外してそっと置くシーンには、涙を誘われる。他に落涙必死と言えば、ファンテーヌの「夢やぶれて」。演じるアンの情熱あふれる歌に胸震えるが、実際に髪を切って挑んだ壮絶な演技がまた感動的である。
 ヒューの歌と演技の絶妙な表現力も、ラッセルの味わい深い歌唱も印象的である。ベストキャストが揃う俳優陣の中には、ロンドンとブロードウェイの舞台版バルジャンのオリジナル・キャストだったコルム・ウィルキンソンや、やはり両方のオリジナル・エポーニーヌのフランシス・ラファエルなども演じる。舞台からのファンには、宝探しのような嬉しいキャスティングでもある。
 充実のキャスト、鮮烈なカメラワーク、緻密な脚本を得て、トム・フーパー監督がスクリーンに再生した『レ・ミゼラブル』は愛を語り明日への希望を高らかに歌う。愛と希望によって築かれるべき未来を象徴するかのように、「民衆の歌」が輝き渡る圧巻のラストシーンは、強く胸を打つ。未来への希望を重ねる壮大な感動ドラマである。
 神戸朝日ホールの大画面と迫力の音響で映画『レ・ミゼラブル』を堪能してください。
(飯川)

ひとくち感想

◎大変よかった  ◯良かった  ◇普通  ◆あまり良くなかった  ☐その他

『レ・ミゼラブル』は二回目である。映サの例会にこんなにたくさんの人が来られているのはおどろいた。不滅の作品である。ラッセル・クロウもオペラ歌手?何でも出来る人だ。「明日へ!」革命歌と映像は素晴らしい。(76歳 男)
すばらしい映画でした。若い時、下世話な損得ぬきで希望につき進む姿が思い出された。ヨーロッパには血にぬられた歴史にささえられているのだろうな。日本は中途半端ですね。(76歳 男)
大河のような物語であることを改めて知った。キリスト教の影響が色濃く反映しているように思うのは、その影響を(自覚的には)知らない自分だからか。ミュージカル仕立てだが、字幕があるので判りやすかった。(73歳 男)
スケールが大きくて、出来すぎる感がありますが…。愛が…。パンフレットを読んで人物の表現や行動をたのしみました。今エリザベートを読んでいてヨーロッパの国々の歴史を考えさせられています。やゝ若者の革命の意義が少し勉強不足でわかりにくかったです。(72歳 女)
愛することの崇高と素晴らしさを伝えてくれた映画である。愛は永遠に未来まで続いている。(71歳 男)
予告編は見なかったが、原作が有名なので。オペラは久しぶりです。初めて朝日ホールに来て鑑賞しました。(70歳 男)
とても感動しました。こんなに涙を流したのは何年ぶりでしょう。歌がすばらしかった。原本をもう一度よみます。当時の歴史をもう一度よみ直します。(70歳 女)
すばらしい原作を、ミュージカルに短い時間に良くまとめた。これがまたすばらしい。そしてヒュー・ジャックマン。彼はいよいよ大役者の域に足を一歩踏み入れた。トータルですばらしい作品に仕上がったと感心しました。(70代 男)
ミュージカルはあまり好きではないのですが、きょうは舞台をみているようで、時間の長さを感じませんでした。ラッセル・クロウの声がすてきでした。(69歳 女)
感動的な作品でした。(68歳 男)
ミュージカルって苦手だったけれど、これはすごい!歌が圧巻でした。群衆の歌う声に元気がでた。(68歳 女)
4年前(?)の1月に観て「久々に感動の映画」と思いました。2009年、2017年6月にLIVEで鑑賞。この間、私も(クラシック系が多いですが、約3年)歌を習い「夢やぶれて」を歌い込む中で、私の中では一番のミュージカルとなりました。4年前(?)とは、また鑑賞のありようが違うかも…と、今日また来ました。(鑑賞前)より深い鑑賞ができたと思います。泣けました!(鑑賞後)(67歳 女)
「民衆の歌」が流れる度にウルウル、信仰心あふれる映画ですが、本当に素晴らしいのは明日をつくる人々、人間です。(67歳 男)
これまで観たどの映画もかなわない迫力、出演者だった。感動でしばし呆然(私達も赤旗かかげて〜を倒さねば…‼︎)(66歳 女)
若い力をもらいました。勇気ある映画をこれからも伝えてください。(65歳 男)
神戸朝日ホールのラストを飾るのにふさわしい『レ・ミゼラブル』であったと思います。良い音で楽しませてもらいました。(64歳 男)
パリ蜂起の中で、青年、労働者たちの市民革命の一端を見て、皆んなが歌う革命歌とその歌声のすばらしさに感動しました。(64歳 男)
壮大なスケールに圧倒されました。演者の圧倒的な表現力、歌唱力にただただ拍手です。(62歳 女)
◎二回目ですが、二回目の方が、大変感動しました。(60歳 女)
最後には民衆の革命のドラマに演出されていてとても感動した。ジャン・バルジャンがジャベールに、あなたは自分の仕事を忠実にしただけだといった言葉が印象に残っている。仕事の本質を問いかけている。(60歳 女)
ミュージカル映画をみて、泣けるという事がなかったが、この映画は良かった!まさに愛と勇気と希望の物語。朝日ホール最後の例会にふさわしい作品!ありがとう‼︎(60代 男)
久しぶりに大作映画を観た感がします。(60代 女)
とても感動した。高い高い所から飛び降り自殺をした男は、生きていくためには法に基づかなければやっていけないと思わんばかりに、善のために生きるジャン・バルジャンのことがすごく羨ましかったにちがいない。(56歳 男)
DVDでは何度も観ていたが、今回一番、得心した。腹に落ちた、というべきか。やはり大画面は良い。9月の舞台を観る前に、ぜひおさらいしておきたかったので、今回良かった。(56歳 女)
こんなに泣かされる映画は化粧が全部取れるので困る。しかし予想以上に感動した。生きる喜びと勇気にあふれた作品だった。よく泣いたから胸もスカッとした。(54歳 女)
2時間半があっという間だった。初めて、みた。勇気をもらえるセリフが全編にちりばめられていた。アン・ハサウェイがきれいだった。(54歳 男)
ミュージカルというのは、やはり独特ですね。原作が時代物なので、どんな解釈、仕上がりなのかと思っていましたが、歌にはさすがに迫力があり、役者さんも芸達者揃い、時代考証もかなりされているということで、画面やセットもよくできていました。この蜂起は無残にも失敗に終りましたが「志は続く」というのがラストのメッセージでしょうか。朝日ホール、寂しくなりますが、また復活を祈って。次回からのKAVCでもよろしく。(54歳 女)
小学生の時、図書館でかりた「ああ無情」(そんなに「子ども向け」でないもの)を何日もかけて夢中で読んだことを思い出します。(女)
真の正義とは、真の幸せとは。自分が今どこにいるのか、わからなくなった。(常に彷徨している)ジャベール警部は死ぬ意味があったのか(匿名)
何回見てもすばらしい映画です。(女)
◎苦しみ、うらみを人間愛に変えて生きれる人の素晴しさ、感動した二時間半でした。ジャン・バルジャンが自分を追跡している刑事を殺さなかった事。人に優しくする人は神の横にいるという言葉等いくつかの場面が、心深くきざみつけられる感じがしました。拍手。(匿名)
囚人の子として監獄で産まれるも、刻苦勉励して「法の番人」となり自身の存在を肯定したジャベールには、飢える子のためパンを盗んだジャン・バルジャンの堂々とした態度が気に食わず、彼を追い続ける。仮釈放後も差別に痛めつけられ銀器を盗んでしまったジャン・バルジャンが、神様と司教の愛で再生し、身元を隠して得た地位を失うことも顧みず善行を重ねる度に、ジャベールの確信は揺らぎ、混乱する。命も救われるに至り、彼を「永久の悪」と決めつけていた自分の過ちを恥じ、逆巻く波に身を投じる。誰にも思い込みや勘違いはあり、生きて来た背景により、ものの感じ方考え方も様様だ。しかし、今の日本で、政治家の口から、人の命を軽んじる「我が軍」という言葉や、人権を大切にする憲法を詐欺的手法で壊そうという「ナチスのやり口に学ぶ」という発言が平気で飛び出すのには、「その確信の元はいったい何だろう」と思ってしまう。『レ・ミゼラブル』の民衆が「下を見ろ!」と歌うように、一番つらい人々の事を考えれば、皆が幸せになり、戦争もしなくなると思う。

ミュージカル風で(初めて)良かった。フランス革命について勉強したい。(70歳 女)
ジャン・バルジャンの後半生を決定づけたのは、ミニエル司教の「許し」とジャベール警部の「法の番人」としての執念です。彼は神の御心に従って生きようとし、それに立ちはだかる法、フランス革命の反動として生まれた王政復古の社会秩序を守る法の無慈悲という構図です。そこに共和派になったユゴーの強い怒りを感じます。しかし、「哀れな人々」がファンテーヌやコゼットに冷たい仕打ちをし、反乱に立ち上がった学生達が市民から見放さなされていると描くのはなぜでしょう。共和政治実現の為にそこを克服しようと訴えているのでしょうか。(61歳 男)
「レ・ミゼラブル」全てを読んでいないのでフランス革命とジャン・バルジャンの人生ものとは知らなかった。歌で心の限界を描くのは無理があるのでは?(60歳 男)
『レ・ミゼラブル』見るのは、二回目です。私はジャベール警部とエポニーヌとアンジョルラスが好きだなあ。「民衆の歌」も好きです。ありがとうございました!(40歳 女)

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