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2017年3月例会『栄光のランナー 1936ベルリン』

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解説

1936年、勝利の女神は、オーエンスに微笑んだ

 ジェシー・オーエンスという陸上選手を知っているでしょうか。「ヒトラーのオリンピック」と言われた1936年のベルリン大会で四つの金メダルを獲得したアメリカの黒人選手です。この作品は、彼がオリンピックに出場するまでの心の軌跡と、大会で成し遂げた奇跡の四冠達成の記録を、周囲の人々との関わりや政治状況を背景に丹念に描いた感動作です。

物語
 ジェシー・オーエンスは貧しい小作人の家に生まれたが、中学時代から陸上競技の稀有な才能を発揮し、家族の期待を一身に背負って、オハイオ州立大学に進学を果たした。すぐに彼に注目したのが、陸上部コーチのラリー・スナイダーだった。24年のパリ大会に出場することが叶わなかった過去を持つ彼は、才能ある選手を育てオリンピックのメダリストにすることが夢となっていた。
 白人コーチと黒人選手、最初のうちは心に壁を作っていたが、徐々に心を通い合わせ、共にオリンピックを目指すパートナーとなっていく。 
 一方で米国オリンピック委員会では、ナチス政権の人種差別政策に反発し、オリンピックをボイコットしようとする動きがあった。
 又、国内で白人と平等に扱われていない黒人がドイツに行くことは、人種差別を受け容れることだと、黒人社会からも反発を受け、出場を取りやめるように言われた。オーエンスは、多々ある困難と心の動揺を抱えながら、ベルリンオリンピックに向けて歩み始める。

ふたりのディスタンス
 『栄光のランナー 1936ベルリン』は、ストーリー展開の中でふたりの登場人物を立場上、性質上、時には対比させ、対等に描くことで歴史や時代の持つ空気を鮮明に浮き上がらせている。当時アメリカは大恐慌の暗い空気の中、公民権運動などはまだ未来の話で黒人は社会の色々な局面で徹底的に差別されていた。
 スナイダーは、技術面だけではなく、時には叱咤激励しやる気を出させ、時にはプライベートの悩みを聞いて精神的な落ち着きを取り戻させた。白人のコーチの信念ある言動は、あの時代においては社会への挑戦であったはずだ。
 オリンピック委員会でのアベリー・ブランデージとエレミア・マホニーの関係も興味深い。共にアカデミー受賞俳優のジェレミー・アイアンズ演じるオリンピック派遣推進派で後にIOC会長となるブランデージと、ウィリアム・ハート演じるボイコット派のマホニーの攻防はそのセリフの一つ一つが心に残り、当時の白熱した議論を想像させる。
 オリンピックをフィルムに収めることを命じられた女性映像作家のレニ・リーフェンシュタールとナチスドイツの宣伝大臣ゲッペルス。ゲッペルスはあくまで、オリンピックをナチスの都合のよいものにしようとするが、一方のリーフェンシュタールは、芸術家として良いものを残したい、感動のシーンを撮りたいという気持ちも強い。オーエンスを撮影することを禁じられるが、命令に反して撮影を強行した。
 走り幅跳び競技中、ヨーロッパ王者であるドイツ人選手ルッツ・ロングとのエピソードはオリンピック史上で語り継がれる美事である。スポーツマンらしく生き、オーエンスと心を通じ合わせたナチスが望まない英雄ロングの苦悩も描かれている。

「ヒトラーのオリンピック」が、
 オーエンスのオリンピック」になる瞬間
 アドルフ・ヒトラーはスポーツ競技及び、オリンピックは好きではなかったといわれている。なぜ、オリンピックに興味を示すようになったのか。ナチスドイツの国威発揚に利用できると考えたからだ。
 もともと、1916年に開催予定だったベルリン五輪は第一次世界大戦勃発により中止。幻のオリンピックを行うことで、当時すでに人種差別政策などが危惧されていたドイツが平和的な国であると世界に知らしめることが出来る。そして、競技でドイツ人が好成績をあげることで国民に心の興奮を与え、愛国心を高めることができる。宣伝大臣のゲッペルスは、オリンピックの政治利用を熱心に説いたといわれている。
 各国のボイコットを避けるため、一時的にユダヤ人迫害政策を緩和し、ヒトラーも差別的発言を抑え実現した自分の為のベルリンオリンピック。
 しかし、終わってみれば「オーエンスの大会」になった。彼は、トラックの華、100メートル、200メートル、そして走り幅跳びの金メダルを獲得して喝采を浴びた。
 4つ目のメダル、最後の400メートルリレーの優勝に大きく関係したのは、ナチスドイツそのものだったことは、皮肉なことである。ヒトラーが望んだ「アーリア人の優越性の証明」は、黒人選手オーエンスの前に屈服した。
 徹底した人種差別意識、自国のみの有利を優先するやり方が、競技場の上で、一人のスポーツマンに完全に負けた瞬間だった。オーエンスは、人種を超えて、真のチャンピオンになった。
 ヒトラーが握手をしようとしなくとも、スタジアムにいる観客は、大きな歓声と拍手でオーエンスを称えた。

 ベルリンオリンピック後、ナチスドイツは、ユダヤ人迫害はじめ、さらに強硬な人種差別政策を行った事は歴史が物語っている。
 オーエンスの栄光は母国アメリカにおいて充分に賞賛されたといえなかった。人種問題、黒人差別が大きく横たわっていた時代を生きたからだ。
 コーチのスナイダーが初めて会った時に、「タイムなんか、いつかはやぶられるのだからどうでもよい。金メダルを取れば一生君のものだ」という。
 オーエンスは、「競技の場で生まれた友情こそが、真のメダルである。メダルは腐食するが、友情は色あせることはない」と後に語っている。
 一瞬が永遠になるオリンピックの世界に身を置き、偉業を成し遂げたアスリートが語ってこそ言葉は心に響く。
 原題は『RACE』。ベルリンのオリンピックに行くまでの道のり、選ばれた者だけが数秒を競い合う現場に立った体験、そしてその後のオーエンスの人生。その全ての光と影は、「競技」を通して得たものだ。
 生涯続いたラリー・スナイダーとの友情、陰で支えた妻や家族の存在、ベルリンでのルッツ・ロングとの出会いはオーエンスの人生を豊かなものにしたが、成功を手におさめて帰国した後でも日常的な人種差別に一生苦しみ続けた。
 『栄光のランナー 1936ベルリン』は、一人の陸上選手を描いただけではなく、国家にとってオリンピックとは何なのか。選手にとって国の代表として闘う事とはどんな意味を持つのかを問うている。又、人種差別がいかに愚かで、人々を苦しめるものかを改めて知らしめてくれる。
 今、私たちはこの映画のメッセージを受けとめたい。
 2009年、ベルリン世界陸上の走り幅跳びのプレゼンタ―をジェシー・オーエンスの孫とルッツ・ロングの息子が務めた。
(宮)

ひとくち感想

◎大変よかった  〇よかった  ◇普通  ◆あまりよくなかった  □その他

期待していなかったけど、素晴らしい作品でした。主役の黒人を演じた青年も脇役のコーチもブランデージ会長もよく演じていた。時には『この世界の片隅に』のようなアニメも希望します。(79歳 男)
ナチスの抑圧の中でドイツのロング選手のスポーツマンシップは素晴らしかった。またオーエンスとの友情にも感動しました。コーチも良かった!(77歳 女)
人種差別、天才ランナー、アメリカ、ドイツ、ヒットラー、ドイツのランナー、不倫、宣伝相ゲッベルス、アメリカ人映画監督とすべてがうまくかみあわさって感動へと導いてくれた。(76歳 男)
ヒトラーのユダヤ人迫害にオーエンスが打ち勝った1936年がどういう年であったかは良く分かる。アメリカのオリンピック委員会が58対56でベルリンオリンピックに参加を決定、黒人団体がオーエンスに参加を拒否するよう迫る中で、コーチのスナイダーや妻のルースが時々に示す態度と言葉がひびいた。ホワイトがコメントをしなかったのは黒人差別のためか? そのところは字幕だけなので分からないが、アメリカの反応はどうだったか。(75歳 男)
感動しました。スポーツを利用しようとしたナチスの汚さがよく表現されていました。(73歳 男)
ナチのユダヤ人差別と、米国の黒人差別。その根に大きな差はないことは、その後の歴史からも判る。イスラエルのパレスチナ対応もしかり。世界中、いつの時代も、我々もその外ではない。オーエンスの4つの金メダルのうち二つに秘められたエピソードはそれもスポーツの一部と思う。(72歳 男)
何度も胸が熱くなり、落涙しそうになった。こんなに感動する映画も久しぶりだった。この映画の陰の主役はジェシーのコーチ、それにIOC元会長のブランデージ、それとドイツのジェシーと競った選手、帰国して大勢のアメリカ人に迎えられたジェシー、ジェシーの手を高く上げて場内を一周したドイツの選手、彼が第二次大戦の前線に出され、戦争とは。彼にも栄光あれと祈る。(71歳 男)
今もずっとある差別。うまく利用しようとする社会。真実は勝つ!(70歳 女)
感動しました。終了後の長い音楽もよかったです。差別(人種ほか)少なくなったようでいて、今もあります。胸が痛くなる場面がいくつもありました。撮影の女性すごい!(70歳)
なかなかの良い作品でした。脚本、監督、役者・出演者、なにより筋立てがGood。人を感動させる映画づくりでした。予想をはるかに超えた。(70代 男)
人種差別は良くない。スポーツからも教えられる。「人間の尊厳」を今も、これからも守る為に「映画の力」を再認識しました。今回も良い映画をありがとうございました。(69歳 女)
ブランデージはうさんくさい男だと思っていた。2020の東京オリンピックは中止すべき。(69歳 女)
大変感動しました。映サらしい作品選定よかった!(久しぶりのような気がします)(69歳 女)
この映画製作にかかわった全ての人々に敬意を表したい。又、提供してくれた映画サークル協議会への感謝! オーエンスのお父さんの表情が全てをものがたっているように思う。差別、ヘイト、戦争反対。(68歳 女)
歴史の真実を浮かび上がらせ、とても良い映画でした。アメリカの強さと弱さ、正に今に続く問題ですね。良いタイミングの上映と思います。(67歳 男)
とても大変な時代の実話! とても感動しました。今でも残る人種差別→もっと厳しい時代に白人コーチとの絆! 走り幅跳び選手との友情。とても熱いものを感じました。(65歳 女)
実話ベースの映画は当たりはずれがなくていいです。来月の例会も期待しています。ホールの椅子が変わったようで、すわり心地が悪くなりました。困ったものです…。(65歳 女)
ヒトラードイツやユダヤ、米国黒人など、当時の人々の状況がよく分かり、終わり方もスッキリ。(64歳 男)
ナチスの民族主義の恐ろしさがオリンピックを通じてみえる。考えさせられる。黒人と白人の差別も、日本人も黄色人種で差別されているのだが、認識がなさすぎる。スポーツの祭典、オリンピックは平和で平等なところであるべきである。(63歳 女)
オリンピック参加を反対している人たちがいる国から、しかも被差別人種としてコーチもいない中、参加の決断をするのはとても勇気がいっただろうと思う。乗り越えられたのは人との出会いがあったからでしょうか。家族の言葉(父の「お前が決めろ」妻の「あなたの意志で」(少し違ったかも))、コーチの言葉「競技場では一人」などなど、ジェシーの心を支える言葉があったからと思うと、能力・才能だけでは成し得なかったすごいことなんだとあらためて思います。そんな25年も破られない記録を作ったジェシーに対してアメリカという国も冷たかったという事実も映画を通して知りました。例会の映画で少しずつ豊かになります。(62歳 女)
とても感動しました。すばらしい映画をみる事が出来ました。昨年、ポーランドに行ったので、ショックですが…。(62歳 女)
強い運命を感じました。強い先達が築き上げた道をあやまらず歩いていきたい。(57歳 男)
あの400mリレーの出場選手の交代は、ジェシーとユダヤ人選手に恥をかかせる策略だったに違いない。しかしながら、ジェシーがその策略を見事に吹き飛ばしたことがとても爽快だった。(55歳 男)
お疲れ様です。映サの例会上映に来たのはちょうど3年ぶりです。また、以前と同様に職場の同僚に誘われて、朝日ホールのスクリーンを楽しめました。その同僚は某製鉄会社のアスリートOBで、私と同じく現役の市民ランナーです。映サのことを全く知らない人とでも、映画のことなど話し合えるのはホンマに嬉しいですな。感謝です。とりあえず個人会員になります!(55歳 男)
11万人もの人が入ったスタジアムでのアウェイ感は想像を絶するものでしょう。ロング選手の勇気にもうたれました。(54歳 女)
ジェシー・オーエンスの素晴らしさと彼を支える家族とコーチ、ドイツの選手がよかった。(52歳 女)
とても良かったです。アメリカの今の世相を考えると複雑な気持ちになりますね。(44歳 女)
自らの肉体に押し着せられた(反独裁、反人種差別も含む)政治性に悩む一人のスポーツマン、ジェシーの姿が見事に描かれている。そして悩みぬいた末に走り、跳ぶ姿はゲッベルスの久元喜造性との対照もあって美しい。コーチ・ラリーとの人生の交差も描かれ、人種に関係のない人間の成長物語として完成している。(28歳 男)
ナチスに勝ち爽快だったが、米国内での冷遇…。快挙を見てすっきりしました。
あんなにすごい試合を見ても、心を動かされない人のいることに驚きます。(女)
金メダル4コも取ったのに「裏口へまわれ」だなんてひどすぎる。でも「もう一度アメリカをグレートにする」と言っているワンフレーズ政治のあの人は「この状態にもどしたいんだ」ってことなんだって身にしみてわかりました。またこんな「良い映画」をひきつづきよろしくお願いします。今年も会員をつづけます。(女)
ナチの名前をあげさせないために戦ったなんて知らなかった。(女)
一家の希望として溢れる愛で見送られた黒人青年は、大学やナチス政権下のオリンピックでの差別や侮蔑にも穏やかに耐え、金メダルを取る。総統の威信のために戦う幅跳びのドイツ選手は、優秀な子を作るため女性を差し向けられ、恒常的な圧迫感にも抗してか、一途に頑張る青年に踏み切り位置を教え、自らは金メダルを逸した。「オリンピックは、多くの子供、若者、中年、高齢者が貧困に苦しみ、為政者の『恐怖支配』で不正や非道に誰も何も言えず、差別もあり、武器と共に国民が外国へ送られている国ではなく、すべての国民が人間らしく生活できる国で、各国の拠出金や世界中の人々の寄付金を集めて行えたらいいなあ」と思った。

史実を大事にしていて。(77歳 男)
全体に意外と静かな映画だったと思います。人種差別、優生思想、描かれていましたね。最後にサインをお願いされた時、ジーンときました。(68歳 女)
ほんとうはもっとドロドロしたものがあったのだろうが、ジェシーが「ほんとうに自由になれる瞬間」のためにオリンピック参加を決めてよかった。純粋に彼の才能と努力する姿勢を愛するコーチやライバルがいてのことだけど。祝賀会の入場入り口を別にされる場面ではモハメド・アリ(カシアス・クレイ)が金メダルを川に投げ捨てたエピソードを思い出した。(66歳 女)
オーエンス選手のことも、ブランデージ会長のナチとの取引のことも知らなかったので、その時代の様子がよくわかった。オリンピックが政治に利用されたり、利権が働いたりすることなく、真にスポーツマンの力と力のたたかいになればいいなと思います。(65歳 女)
2回目でまたとても分かり易いstoryなので今回はジェシーの偉大さよりも大戦前夜のナチスの不気味なtensionと、その中で自分を見失わずに、堂々と意見をだしたルッツ選手やあの時代に女性監督のリーフェンシュタールに注目しました。ユダヤ迫害もひどいですが、今も残る人種問題には考えさせられます。いつのオリンピックだったか、アメリカ国旗と国歌の中、こぶしをつきあげた黒人選手がいたことを思い出しますBlack Powerとか新聞で書かれていました。『Race』は人種の意味もあるのですね。(63歳 女)
ドイツ人ロングの気持ちの良い態度に感動です。スポーツマンシップなんてのは信用しません。オハイオ大学アメフト部を見れば、スポーツ選手の大半があのようだと思います。ところがロングは大観衆、白昼のもとで、レイシストたちに逆らう友情を示しました。勇気ある行動です。あの時代は人を差別するのが当たり前ですが、そういう人たちを見ると吐き気がするぐらい気持ちが悪くなります。オーウェンスを差別する映像は少ししか出てきませんが、帰国の彼に対する扱いはきっと酷いものでした。例会学習会で「馬と競争させた」ということを知りました。そういう意味では、この映画は少しキレイにまとめられていました。ナチスに協力したレニ・リーフェンシュタールは差別意識をもたない、芸術性を追求する天才映像作家として描かれます。しかし、ナチスの人種政策を間近に見ていてそれに嫌悪感を持たない人が描いたもの、その作品でも万人に感動を与えるのだろうか。(61歳 男)
映画として、何となく掘り下げ方にモヤモヤ、不満を感じてしまいました。2020年の東京オリンピックに鋭い批判の目を向けたいです。
アメリカ映画らしくというか、上手に感動に導いてくれる。その上、過去の歴史を知ることも出来た。今、右傾化していく世界の中で、人種差別、女性差別を堂々と大声でいう人がリーダーとなっている。オリンピック…、その他のスポーツの大会、私は「日の丸をせおって戦う」という言葉が大キライダ。(女)

 

 

 

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