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2017年2月例会『ニュースの真相』

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解説

ジャーナリズムの現状を問う

 ジャーナリズムの重要な役割は「権力の監視」です。主権者である国民に権力の実態を知らせるものが無いと民主主義という政治体制は機能しません。
現在の日本では、そのジャーリズムが弱体化しています。自公政権に批判的な新聞やニュースキャスターに対し、総務大臣、政権中枢等権力を握るものから「潰せ」というような露骨な恫喝が続いても、それに対し正面から意見を言う新聞社やテレビ局は多くありません。
 このような危機的な状況にあっても、主要テレビのニュースキャスターたちの多くは、「圧力を感じない」という鈍感さです。
 ある元スポーツキャスターは現在のマスメディアを批判して「テレビは全部だめ、神戸新聞等の地方紙は頑張っているが、全国紙は毎日新聞ぐらい、朝日新聞も腰が引けている」と言いました。私も同感です。
 『ニュースの真相』は事実に基づく映画であり、ジャーナリズムのあり方を問うものです。
 2004年米国の代表的なニュースキャスターであるダン・ラザーが、米国三大ネットワークのひとつCBSの看板ニュース番組を降板する契機となった「ラザーゲート事件」と呼ばれる「誤報騒動」の舞台裏を描きました。「自由の国」米国の報道番組の状況がリアルに描かれ、ジャーナリズムの現状や役割を問うています。

ダン・ラザー「勇気を」
 映画の原題は『TRUTH』で、原作はラザーゲート事件の中心人物であり、報道番組「60ミニッツ」のプロデューサー、メアリー・メイプスが書いた『大統領の疑惑』(日本版のタイトル)です。多少の脚色はあっても大筋は事実です。
 2004年第42代米国大統領選挙の直前、メイプスのチームは4年前の選挙時に調べたブッシュ(息子)大統領の軍歴を再度、調べ直します。
公式記録では、彼は1968年~73年までテキサス州軍航空部隊に在籍していました。州軍にいれば、ベトナム戦争に送り込まれることが無いため、入隊を申し込む人が多く順番待ちの状況です。特に政治家や財界人の息子が入りたがりました。
 なぜブッシュが州軍に入れたのか、メイプスたちは当時の州軍関係者を探し、それを知る人物のインタビュー等を試みます。しかし誰もが証言を避けました。
 ある退役軍人から、すでに故人となっているブッシュの上官が残したメモを入手します。
 そのメモはコピーであり出所も不確かでしたが、ブッシュの職務怠慢や73年に早期除隊した当時の勤務状況等、彼等の知りたいことが書かれてありました。メイプス等はそのメモの裏付け調査に全力を上げます。放送期日が迫り時間との競争でした。
 メモがコピーという弱点はあるものの、文書鑑定や証言等もほぼ狙い通りとれたことから、スクープと言う野望もあり、9月6日放送に踏み切ります。
 「現役大統領が不正な手段によってベトナム戦争行きを回避していた」という「60ミニッツ」が放送されると、大統領選挙の直前と言うこともあり、大きな反響を呼びます。
 同時に反対派からの反撃もありました。すぐさま保守派のブログに、軍歴疑惑の根拠になったメモが「コピーで原本ではない。当時はタイプライターであり、使えない字体がある。軍関係用語が違う」等から「にせもの」だと断定する匿名の書き込みがありました。それが有名な保守系ニュースサイトに転載され、一気に拡散しました。
 一夜明けて、彼等は嵐のような攻撃を受けます。最初はインターネットで炎上し、そしてテレビ等のマスメディアからも批判があがりました。
 メモの真贋に攻撃は集中し、その提供者からも「意図した怪文書」であるという証言が出て、9月20日ダン・ラザーは放送で「メモの真偽に疑点があった」と謝罪しました。
 「60ミニッツ」は「世紀の誤報」と喧伝され、メモの真贋に世論の関心は集中し、大統領の軍歴疑惑は萎んでいきました。他局の後追い報道もありません。
 そしてCBSはこの放送に対して外部調査委員会を設置します。委員会には大統領のブレーンも含まれていました。
 その後、ブッシュ大統領の再選があり、翌年1月に調査委員会の報告書が出て、そして担当したスタッフは解雇処分されました。
 看板キャスター、ダン・ラザーは「真実を伝えるためにリスクを冒すことを恐れないジャーナリズムたちに勇気を」という言葉を残して番組を降板しました。

ジャーナリズムの危機を問う
 この映画に対してCBSは「一切の真実はない」「ジャーナリズムを冒涜するもの」と決め付け無視しています。CBSには厳しい内容ですが「言論には言論」で返し、事実を明らかにするべきです。
 インターネットで、この映画の評価、感想について検索すると、ラザーゲート事件を「誤報」と捉えているものは少なくありません。しかし映画を観て原作を読めば「そうとは言い切れない」と、私は思います。
 焦点である大統領の軍歴疑惑は、多くの証言で州軍入隊の経緯や勤務実態も明らかにされました。メモはその一つの資料です。
 メモはコピーであり、その真贋については、時間と費用をかけた調査委員会も判断できませんでした。大統領派がいう「ニセモノ」の根拠は全て間違いでした。
 にもかかわらずラザーゲート事件は「誤報」扱いされ、関係者は処分されました。ジャーナリズムを取り巻く環境が浮き彫りになります。
この放送にまず批判の声を上げたのはインターネットです。匿名を利用した無責任な批判、事実の捏造、記者個人への中傷などが無制限に拡大し、それが世論を誘導していきました。
 CBSはメディア・コングロマリット(放送、出版、映画・映像、報道等を傘下におさめる企業グループ)であるバイアコムに買収されていました。CBSは報道よりも政権に配慮し、疑惑を曖昧にしました。
 この映画でダン・ラザーは「質問することは重要だ。『やめろ』と言われたり『偏向だ』と批判されたりしても、質問しなくなったらこの国は終わりだ」とジャーナリストの役割に言及します。その米国は、気に入らない質問者を会場から締め出すトランプ大統領の時代となります。
 日本では「沖縄密約」をスクープした西山事件(1972年)で、司法やジャーナリズムは権力の犯罪を見逃しました。今では、権力が秘密を決める特定秘密保護法が施行(2014年)されました。NHKは「政府が右と言うものを左とはいえない」というスタンスを取っています。
 「権力の監視」はいっそう厳しい情勢です。この映画は「勇気を」と呼び掛けます。
(Q)
参考資料:プレスシート/「大統領の疑惑」メアリー・メイプス/インターネット情報

 

 ひとくち感想

◎大変よかった  ○よかった  ◇普通  ◆あまりよくなかった  □その他

報道は権力にこびず、おくせず真実を伝える。自分の尊厳をかけてすがすがしいジャーナリストの生き様でした。(75歳 男)
日本のジャーナリストもこれ位の根性で真実を追及してほしい。大臣がウソをついたり、ごまかしたりしているのに日本のマスコミの追及は、ほんとうに情けなく思う。もちろん頑張ってるジャーナリストもいるだろうが…。日本の社会が甘いのかも知れないが、真実を追及するということの困難さは、私の想像以上のものがあるということもよく分かりました。病身の証人の奥さんの言葉、最後のダンのあいさつの言葉が良かった。(73歳 男)
報道(情報)、真実に関するテーマとして古今東西普遍的なもので、目新しさはないが、時々こうした映画・番組に接することは、必要なことだと思う。(72歳 男)
マスコミはどこの国においても圧力があり、真実が報道しにくいのか。ブッシュ大統領は当選の時から不正があったと報道されていた。今回の事件は少し違うが、マスコミの報道を権力でつぶした。日本もアメリカの後を追っているが、こんなことで追ってほしくないものだ。結末は現実的でがっかりしたが、こういう映画を作ってたくさんの人に見てもらえることが希望と言えるかもしれない。時期的にピッタリの映画でとてもよかった。ロバート・レッドフォードさん頑張っていますね。こういうジャーナリズムの敗北がトランプを生んだように思う。(70代 男女)
真実をあばこうとする陰には大きな犠牲があるということに、今回の映画でよくわかった。(69歳 女)
私の日常の空気の様にただよっているマスメディアのニュース。本日の映画から「本質は?」「事実は?」と考えながら受けとめて行く事の大切さを感じた。(69歳 女)
アメリカでも、日本でも、体制・権力側のズルさ、問題になりかけた際の争点隠し等が、常に存在することを終始頭に思いうかべながら観ていました。そして、真実をあばこうとしながら頑張っている人達の存在も。ロバート・レッドフォード、いいですね。昔と全く変わったけれど好演です。今後の監督業にも期待。ケイトも好演。(69歳 男)
いつの世も権力とお金にジャーナリズムが打ちのめされそうになる。だけど、がんばって欲しい。今の世のジャーナリストも。メアリーは「正義と勇気」を支持してくれる良きダンナがいて、よかった。(68歳 女)
日本のジャーナリストも頑張ってほしい。(68歳 男)
メアリー、ロバート・レッドフォードのダン、メアリーの夫、とてもステキな方々だと思いました。少し難解でしたが、ジャーナリズムは中立、公正(政治的に)? 考えつづけます。(68歳 女)
◎素晴らしい映画、報道のあり方の神髄と権力の怖さとの対比が見事。真実を語る勇気を!!もらいました。(67歳 男)
ハッピーエンドかと思っていたので、ショック。今の政権になって、ますます圧力が強くなるだろう。日本のメディアの人にみて欲しい。(66歳 女)
始めの方の取材過程は話を理解するのが難しく、ちょっとしんどかったが、調査委員会でのメアリーの言葉には胸がすく思いだった。すべてのジャーナリズムにかかわる人たちに、真実を伝える「勇気を!」と言いたい。報道への圧力がさまざまな形で見えかくれする昨今、私たちも肝腎なことを見落としたり、見すごしたりしないように、物事の真実を見抜く目を持たなければならないと思う。(65歳 女)
今、正に、アメリカも日本も報道のあり方が問われている時!「ポスト真実!」のことばも出てくる時代になり、それより十数年前のことではあるが、真実の報道を問う事件があり、それが映画化されたこと自体、すごいことだと思う。ジャーナリズムの本来のあり方が問われている今、多くの人にみてもらいたい映画と感じた。(65歳 女)
今のTVメディア、ジャーナリズムの在り方を描いて興味深く見ました。日本でも同様な事が多々あると思います。(64歳 男)
なかなか見ごたえがありました。(63歳 女)
真実を究明するより、経営が優先する結末に観終ったあとの重い感じが、身体にこたえます。でもロバート・レッドフォードの最後のセリフ「勇気を」という言葉に涙が出たし、励まされ、希望を捨てちゃいけないんだなぁと心強くなりました。ケイト・ブランシェットはさすがです。勇気があり、カッコイイ、メイプスに拍手です。有難う、頑張ったね、と。(62歳 女)
2時間を超えて、しかも科白が多くて事実関係を把握するだけでも、大変な映画でしたが、とても良く出来た映画だと思います。三度目になりますが、緊張して見ました。なぜこの映画がキネマ旬報で上位に選ばれないのか不思議です。ベストテンに入れたのは72人中5人だけでした。現代のジャーナリズムが権力と対峙する意味において大変な危機であると思いますが、映画評論家といわれる人達は、そのことに無関心なのかと、怒りを禁じえません。(60歳 男)
堂々たる力作、感動作品。こんな映画を作れるアメリカにはうらやましい。しかし…ブッシュには今となってはこたえないのも事実。(60歳 男)
調査委員会の最後にメイプス氏の言ったコトバを忘れないようにしたい。半年前に映画館で観ましたが、本当に今のメディアの情況をよく表しいい映画です。(58歳 女)
とても複雑で、何と言っていいのかわからないような話だった。真実を伝えれば解雇されるなんて…。これは米国も日本も同じ!! これが資本主義!!(55歳 男)
まさに今の日本かなぁと思います。政権に組みしない報道は流せないという…。やっぱり映画は面白いですね。(51歳 女)
トランプが勝つようなアメリカだけど、それでも権力におもねることなく闘えるジャーナリストが存在し、しかもその物語を娯楽作品にまで仕上げられる。底力をみせつけられた気がした。日本もこうだといいのにねー。(49歳 女)
ついていくのだけでも大変な125分でしたが観応え満点。ジャーナリズムの衰退が大きい今、メアリーの勇敢さが光ります。強い中のやさしさも。
初めて見た時の衝撃と感動はなかったが、より理解ができた二回目でした。日本でもこの様な作品を作ってほしい。(女)
真実を知ること。決してあきらめず。そして勇気…。今私たちに必要!!(女)

アメリカ国内の状況など、わからないこともあり、字幕を一生懸命追いかけて見たので疲れました。エンディングも長く、しんどかった。でも、日本のテレビ、新聞の報道姿勢を見ていて、ニュースキャスターの降坂やお金をかけない番組つくりなど、ダンが言っていた予言が当たっていて危険だなと感じる。受け取り側がどっぷりとそれにつからず、「それ本当?」と考えなければいけないと思いました。(65歳 女)
さすがアメリカだな、と思った。真実はいずこに…。情報にほんろうされて、世の中がまわっていくなかで、真実を追求するジャーナリストの姿。用意しつくされた陰謀をかんじる。ぞっとした。(63歳 女)
久しぶりに来ました。一年半ぶりかです。重いテーマでしたネェ。ダンが最後テレビに向かって「皆さん勇気を」の言葉、心にしみましたが、現実「勇気」だけで、メシは食べられません。ダンも高齢で今までの収入があるから言えたのでしょうネェ。うらやましいです。庶民はガマン、ガマンですよ。(62歳 男)
テレビで報道するということ、真実を追求することと視聴率や世間からの批判にさらされる事の恐ろしさが、凄い勢いでたたみかけてきた。ケイト・ブランシェット、

どうも有難う。良いものを見せてもらいました。

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