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2016年12月例会『ロイヤル・コンセルトヘボウ オーケストラがやって来る』 

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解説

奏でる人と聴く人、魂の響き合いで魅せるロードムービー

 オランダのロイヤル・コンセルトヘボウ管弦楽団(RCO)は、2013年、創立125周年を記念し、世界一周のワールドツアーへと旅立ちました(日本でも同年11月に来日公演が行われています)。ヨーロッパ、北米、南米、アフリカ、アジア、オーストラリアの六大州で、30都市48回の演奏会を行ないました。この作品はRCOの公式記録映画です。
 英題「Around The World In 50 Concerts(20回の演奏会で世界一周)」は、映画『八十日間世界一周(Around The World In 80 Days)』からのもじりを連想させ、音楽の旅へと私たちを誘います。

音楽は心のよりどころ
 映画ではワールドツアーの中から、1998年以来15年ぶりとなる南米公演からアルゼンチンを、一度も訪問した事がなかったアフリカ大陸とオートラリアから南アフリカを、そして、1974年の初訪問以来訪れていなかったロシアでの公演を中心に取り上げています。登場するのは、RCOの楽団員たちと、訪れた土地のさまざまな境遇や過去をもつ人たち。
 冒頭、打楽器奏者ヘルマン・リーケンが登場。ブルックナーの「交響曲第7番」でシンバルをたったの一度鳴らす出番のためにステージ上でひたすら「待機」することを語ります。それとオーバーラップする形で、ブエノスアイレスのタクシー運転手マルセロ・ポンセの映像が流れます。1日12時間タクシーを走らせる彼は果てしない孤独の中にいます。その心の支えであり、アイデンティティを保つ術になっているのが、車の中で流すクラシック音楽なのです。 「クラシックは私の心を満たし、私を守ってくれる」と彼は吐露します。
 RCOが初めて訪れた南アフリカ、ヨハネスブルクでは、教育プロジェクトの一環でプロコフィエフの「ピーターと狼」が演奏されました。この曲での朗読を担当したのは、ヨハネスブルク交響楽団の指揮者などを務めるクトゥルワノ。その父ミシェル・マソテのエピソードとは・・・。11歳のときにユーディ・メニューインの演奏を聴き、ヴァイオリニストになる夢を抱いた彼は、黒人ゆえに正規の教育を受けられなかったのですが、のちにロンドンでヴァイオリン教授の学位を取得するまでになり、アパルトヘイト時代に黒人によるユース・オーケストラを結成しました。
 このユース・オーケストラに所属し、スチールドラム・バンドの演奏も行っているアリスとポルティア姉妹も映し出されます。彼女たちは貧しく治安の安定しないソウェト地区に暮らしながらも、「音楽があれば嫌なことが忘れられる」と、音楽への素朴でピュアな熱意を語ります。
ロシアのサンクトペテルブルクでは、老境の男セルゲイ・ボグダーノフが収容所に二度も送られるなど迫害に苦しんだ過去を回想し、家族の思い出と音楽をしみじみと語ります。
 彼らにとっては音楽が生きる糧になっています。音楽は演奏家が音を出しただけでは完成しない、聴衆がいてようやく完結するものなのだということを伝えてくれます。

楽曲、一音に込める思い
 楽団員が登場するシーンでは、自分の演奏する楽器が活躍する曲に対する、愛にあふれる情熱的な蘊蓄が語られます。
 先述の打楽器奏者ヘルマンは、ブルックナー「交響曲第7番」での、90分に及ぶ演奏中、第二楽章でシンバルを一回鳴らすだけの役割に、自分がどんな心境でいつも臨んでいるかを語ってくれます。
 コントラバス奏者ドミニク・セルディスは、ショスタコーヴィチ「交響曲第10番」の冒頭30秒、普段はベースライン担当のコントラバスが、なんとメロディーを8本のコントラバスと共に弾いて始まるのが一番嬉しいと語ります。そして、そのメロディーの不気味さが、ショスタコーヴィチが過したソ連でのスターリンの恐怖政治を表現しているのでは、という自説も、実際の演奏を交えて披露してくれたりします。彼はまた、南アでの「ピーターと狼」の舞台で、指揮棒を魔法の杖に見たてて、指揮棒が音楽だけでなく団員も自在に動かしてしまう演出のトークを茶目っ気たっぷりに行っています。
 他に、コンサートマスターともう一人のヴァイオリン奏者が演奏会に来られない女性のために、彼女のお店に出向いてバッハの「ヴァイオリンとオーボエのための協奏曲」を演奏したり、首席フルート奏者ケルステン・マッコールと首席ファゴット奏者グスターボ・ヌニエス・ロドリゲスが食事をしながらサッカーや民俗音楽まで止め処なく語り合ったり、飛行機の中でメンバーが眠る安息の時間が映し出されるシーンなど、ひとりひとりの楽団員との距離がぐっと近づくように感じられる映像が散りばめられています。

音楽旅をつむいだ監督の情熱
 作品の中ではありませんが、RCOがツアーで来日した折、フルートとファゴット奏者がインタビューに応じています。それによれば、監督のエディ・ホニグマンはRCOに2年以上密着、ありとあらゆる場面や、ほとんどの団員の語りや対話を撮ったうえで「映画に収まったのはほんの一部」とのこと。それは理解できる展開ですが、ブエノスアイレスで運転手のマルセロに出会うまで、タクシー1台1台を止めて「あなたはクラシックが好きですか?」と聞き込みをしたという少々驚きの舞台裏のお話も。「監督のなかにはとてもうつくしい物語があって、情熱が渦巻いているようだった」「ただの公式記録なら他の人でよかった。RCOはあえて、アーティストであるエディ・ホニグマンを選んだのだと思う」との言葉に、いわゆる演奏風景と写真を多用したような音楽 ドキュメンタリーとは一味違う「ロードミュージックムービー」となった源を感じます。
 サンクトペテルブルクの自宅で、生きのびてきた苦難の時代とともに、作曲家マーラー自身の指揮による初演を聴いたと語るセルゲイ老人に出会う経緯はどんなだったのでしょうか・・・。ともあれ、彼の半生を聴いた後、マーラーの「復活」のクライマックスで彼の頬をつたう涙に、「聴くものが人生を重ねるとき、音は初めて音楽になる」と共鳴に似た感情が沸いてくるように思います。
*  *  * 
 劇場公開時に「何と言っても、音がちがう」という感嘆の声が届いていた本作、朝日ホールでの音の響きを堪能していただきたいと思います。目と耳、そして全身で音楽の力を体感してください。
(ゆ)

ひとくち感想

◎大変よかった  ◯良かった  ◇普通  ◆あまり良くなかった  ☐その他

いや大変良かった。この余韻でクリスマス、正月が迎えられる。外国のオーケストラがヨーロッパから日本へやってくるのに楽団の移動こんなにも大変なんだ。今まで数多くの外国のオーケストラ聴いてきたが、この裏話全く知らなかった。あらためて頭が下がります。ロイヤル・コンセルトヘボウ、この中にさりげなくユダヤの歴史を語り、またかつての植民地の復興に暖かい目を注いでいる。ベルギーだからこそ作れた映画だと考える。(80歳 男)
この映画、以前にも観たことがありますがよかったので又観に来ました。何度観てもよかったです。『シェルブールの雨傘』可能ならお願いします。(76歳 男)
クラシックはあまり関心がなかったが、ヨーロッパでは庶民も楽しんでいるみたい。ストーリーもあり面白かった。これをきっかけにファンになるかも。(75歳 男)
音楽映画は好きだ。単なる演奏旅行ではなかった。歴史の重みに耐えて、頑張ってきた人たちが登場することによって、又子供たちが未来に向かって立ち向かおうとしているように人間賛歌の映画といって良い。(75歳 男)
音楽を聞いてアフリカの子供たちが心から楽しんでいる様子、マーラーの曲の中にナチスの影が音になっていたり、印象になる場面がいくつかありました。私も最近クラシックに関心を持ちだしたところでとても楽しみました。(75歳 女)
とってもおもしろかった。楽団員の生活をドキュメント風に追って、かつ彼らの意志の感じられる活動を見られて、珍しいが大変楽しい映画でした。(74歳 女)
音楽と映画と、二つも楽しむことができ素晴らしかったです。それぞれの楽器を改めて聴くおもい、何とステキな時間だったことでしょう。(73歳 女)
良かったです。胸が震えて涙が出ます。何なんでしょうか。音楽って良いですね。(73歳 女)
人生と音楽は濃淡あってもくっついているものだということを改めて感じた。楽団の裏側から、街の様子まで幅広く楽しませてもらった。(72歳 男)
今日の映画はすごく良かったです! このオーケストラが今、存続の危機にあると聞いたのですが?その理由は何なんでしょうか?(71歳 女)
こどもが出ただけで、それだけで心がなごむ。この映画は初めは軽やかに、終わりは暗く重く、せめて家庭内だけでも心がなごみますように。(70歳 男)
「コンセルトヘボウ楽団」ということで楽しみにしていた。練習風景、海外での演奏、家族との時間、南アフリカの子ども達との交流など、珍しい演奏家の「生」の顔が観られた。久しぶりにレコードを聴こうと思った。やっぱり音楽には圧倒的な感動を与える力がある。(女性歌手の圧倒的な歌唱力にはしびれました)(70歳 女)
大変よかった。すばらしかった。予想していたのとちがって、音楽のもつ平和や愛や希望などの力を観せてくれてうれしかった。ただ演奏されている曲目がわからないものがあって残念。(70歳 女)
R・コンセルトヘボウ、対象が素晴らしいのは勿論、企画・編集・映像がとても良かった。演奏だけでなく、作曲家の人生や、現在の聴き手の境遇まで含めて描き、第一級のドキュメンタリーと言える。(70代 男)
「すばらしかった」のひと言。オーケストラが各国に行って、そこの人たちとの触れあった話に泪が出ましたし、またオーケストラの人たちの美しい音色の陰には困難、苦労もあるということがわかったような気がしました。(69歳 女)
なまの演奏会を聴きに行きたーい!各々のパートが気持ちを合わせて作りあげる音楽→これは映画やその他の事でもすばらしい人間の創作です。人間ってすばらしい!(69歳 女)
音楽のもつ意義・楽しさを再認識・満喫させてくれました。大好きな曲の断片が流れたり、演奏会に来れなかった人へのサービスのミニコンサートにほろりとしたり、社会的な問題点もちりばめた映画に大満足。朝日ホールで観て、聴けてよかったです。(69歳 男)
素晴らしい映画を提供下さり感謝です。音楽の持つ素晴らしさをあらためて知りました。原発反対や沖縄基地反対運動もがんばりながら平和がいかに大切か、そしてどんな社会を目指すか? 今日の映画で文化・芸術の大切さが更に深まりました。(67歳 男)
音楽が人生にとって本当になくてはならない素晴らしいものだという事がわかった。(67歳 男)
淡々としたなかでもよく練られた構成の映画でした。私はクラシック音楽と演奏家たちに興味があり、「ロイヤル・コンセルトヘボウ」に関する映画のチラシを見て来場しました。他の分野の映画はよく分かりません。(67歳 男)
オーケストラの素晴らしさを再発見。たまには生のライブに行かねば。(67歳 男)
今年はドキュメント作品をたくさん見た。今日のも音楽に目を輝かせる子どもたち、心ふるわせられる大人たちに感動。(66歳 女)
よかった。好きな楽曲がいくつも含まれていて。少し遅れてしまったけれども、音楽に乗せて心の深いところにしみ入るようなストーリーが静かにいやしてくれた。明日の活力になる!(66歳 女)
久しぶりの映サ…。心があたたまりました。音楽のもつ深い意味や、人々にあたえる感激や感動、生きる力等に、あらためて音楽を愛し、演奏活動を続ける楽団のこれからを願う!(65歳 女)
1100円で素敵な演奏会(しかも各地の)に行けて、めっちゃ得した気分です。ソウェトの子どもたちの「音楽する」様子や、団員の演奏に対する思いや、曲にまつわる個人の思い出などを織りまぜてあって。こういう映画も好きです!(65歳 女)
音楽はやっぱり素晴らしいとあらためて思わされました。この一本の中に歴史もあり、現代の問題(レイプが恐くて自分を励ましながら道を歩く話など)まで含まれていてとても深い内容でした。そして最後に人間は捨てたものじゃないと思わせてくれ、年末の一本にとても元気が出ました。(62歳 女)
満面の笑みで軽快なリズムを奏でる少年少女たちの姿は、見ていても楽しい。一方、交響楽団では、指揮者の感性のもと、多数の団員たちに一糸乱れぬ演奏が要求され、緊張感がある。長い間収容所に入れられていた過去のある老年男性の心を癒すのは、壮大で深みのある交響楽だ。タクシー運転手は、自分の孤独を慰めてくれるクラシックを「仲間の前では聴かない」と言う。生きた国、時代、回りの人の影響などにより、巡り合う音楽、好きになる音楽は、違ってくる。でも、音楽に優劣はなく、自分の心がその時に望む音楽を楽しめば良いと思う。戦争、紛争の最中にあり、絵本や歌、家族の団欒とも無縁な人たちは、とっても悲しいと思う。(61歳 女)
音楽家の内面表現と音の喜びの表現の至福というべき。「タマ」だからいいのかも。(60歳)
文明より文化を大切にしたいと改めて思う事ができました。映写機レンズのせいなのか、常に中央上部に光の線があり(不思議なことに明るい背景で見える)とても気になりました。良い映画だったので残念です。(58歳 男)
音楽の力を改めて感じました。これ程人の心を動かすものと感動しました。(58歳 女)
クラシック好きの友人がベートーベンを熱く語っていたのをなつかしく思い出しました。クラシック音楽は、人生そのもの…(57歳 男)
白色人種の有色人種に対する差別が根強く残っている中だったが、それでもあの黒人の年配の男性が子どもたちにバイオリンを教えている姿がよかった。差別にもめげていないと感じた。(55歳 男)
今日は午後オーケストラのコンサートを聴き、久し振りに音楽とは心で奏で、心で聴くものだなァと実感してきたところでした。音楽ファンの私としては、とても楽しく見せて頂きました。(54歳 女)
ブラボー! もっと聴かせて〜♪(54歳 女)
この作品は以前も観たのですが、その内容の深さ、視野の広さに感動して、もう一度大スクリーンで味わいたくてやって来ました。特に印象的なのはショスタコーヴィッチの交響を分析するコントラバス奏者の姿。ユーモラスに表情豊かに、「芸術は権力に負けない」と話す様子に力強さを感じました。今後ドキュメンタリー作品の上映候補が多数なのは嬉しいです。音楽、美術、食べ物、環境…ちなみに『不思議なクニの憲法』ももう一度観たいです。(54歳 女)
様々な生き方を感じられた。再度みてみたい。(43歳 女)
ラスト、音楽は天にのぼっていくかの様に。あたたかい音楽映画でした。(女)
素晴らしい音楽、各々の人生に芸術が関わり、豊かになる!
バックに流れる音楽、各国の様子、演奏者と楽器たち、歴史が織りなす人間模様、当時の為政者の様……なんと大きな表現力のある映画!感動の一言。
人間にとって音楽は何かということをより深く知ることができたような気がします。すばらしかった!
音楽の力、すごい。信じたい。
演奏会とはまた違った音楽の素晴らしさを伝えて下さいました。

前夜、睡眠不足で半分くらいは眠ってしまいましたが、音楽は聴いていました。いろいろ興味深かったです。楽器愛好者なので。(64歳 女)
楽団員の音楽との関わりはじめなどのエピソードも良かったです。たった一人の音楽家の影響で、楽器を知り、学び、たくさんの子どもたちに教えているアフリカの人をはじめ、あらためて音楽、芸術の力が政治に勝てるかもしれないと思えてきました。(64歳 女)
音楽はここちよさが一番でジャンルは何でもOKですかね。終始一貫してワクワクした内容、12月よかったわ。(69歳 女)
音楽の背景にこめられた作曲家の意図やその音楽に寄せる聴き手の思いなど、音楽のもつ力を感じさせられました。(56歳 女)
南アフリカのおじいちゃんの話がよかった。(51歳)
音楽の普遍的素晴らしさを、市井の人も追って伝えた良作だった。(27歳 男)
悪くはないのだけれど、このオケがオランダ人にとってどんな意味をもつのか。その歴史や、また団員のこのオケに対する思いなどを伝えてくれたらもっと映画に厚みが出ただろう。演奏地や、会場名をテロップで示してくれてもいいのに、と思い、もう少し丁寧に鑑賞者に伝えてくれる姿勢があってもよかった。
すてきな音楽のプレゼントをありがとう。大きな拍手を打ちました。

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