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11月例会

HP用11月

解説

現在、過去、そして未来 ずっとあなたを想い続ける 

 この作品は監督ジャ・ジャンクーが第一作『一瞬の夢』、第二作『プラットホーム』に次いで彼の故郷・中国山西省の汾陽を主な舞台とした映画だ。汾陽に住み続ける一人の女性と彼女に想いを寄せる同級生二人の男性との3人の人生を1999年、2014年、2025年という三つの時代を通して描いた作品である。過去、現在、未来を描く事で監督が伝えたかった事は何なのか?
 監督は文化大革命後の中国社会の移り変わりを地方都市を舞台に描き続けている。彼はなぜ、地方都市にこだわるのだろう。経済発展を続ける沿岸部とは対照的に時計が止まったような風景の内陸部。監督は今まで『一瞬の夢』『プラットホーム』『山河ノスタルジア』で山西省、『世界』で北京、『長江哀歌』で湖北省、『四川のうた』で四川省成都、『罪の手ざわり』で山西省、湖北省、広東省、重慶市を映画の舞台としてきた。舞台は変われども、描くのは常に経済発展の流れの中であまり恩恵を受けずに生きてきた普通の人々と彼らが生きてきた町だ。
 ジャ・ジャンクーは声高らかに何かを叫ぶ社会派の監督ではない。普通の人々の暮らしの中から発せられる声を丁寧にひろいあげ、それを時には俳優に演じさせ、時には素人に演じさせながら観客席に届けてきた。それが愛想のない、ぶっきらぼうな映画と受け取られてきた事も事実だ。

「新しい時代へ」
 「物語一」の1999年は新しい世紀への希望と夢と期待と不安が混在した時代だ。改革・解放政策により手探りで川を渡る時代から社会主義市場経済へと移行した中国。そんな時代を迎え、タオはジンシェンを選んだ。彼女は実業家ジンシェンに新しい中国が目指す時代を託し、進もうとした。リャンズーを選ばず、新しい道を望んだ。
 沿海部には、深圳、アモイという経済特区そして上海、天津、広州、大連という経済技術開発区を作り、右肩上がりの経済成長を続けてきた中国。しかし、一方でそれは沿海部と内陸との格差をひろげる大きな原因ともなったのだ。
 この映画の舞台、山西省は今でも中国のエネルギー政策・火力発電の一翼を担う地域で石炭産業が盛んだ。この地域の人々の服装はいつも黒っぽいという。それは石炭産地ゆえなのか? もうひとつは監督の映画によく出てくる麺を食べる風景だ。山西省は中国麺の発祥の地で刀削麺が有名であり、山西省の人間と麺は切り離せない。

「タオとリャンズー」
 「物語二」で汾陽を離れ、湖北の炭鉱で働いていたリャンズーが炭鉱仕事で身体を壊し、故郷に帰ってくる。彼も一度は故郷の汾陽から出て新しい道をめざした若者の一人だ。15年前、黄河のほとりで打ち上げ花火に興じた三人。あの時、三人は空に上がる花火に何を託したのだろうか。自分の治療費を工面すべく出掛けた先の友人の暮らしぶりを垣間みて、治療費の援助を言い出せないリャンズーに手を差し伸べたタオ。そしてリャンズーが故郷を出ていく時に投げ捨てた彼の家の鍵を治療費と共に「これはあなたの家の鍵だ」と言って渡すのだ。
 15年前の決断が正しかったのかと自問するタオ。リャンズーを憐憫するタオの想い。そしてタオの姿を借りた故郷がリャンズーに向けた想い。想いは様々だ。
 タオは父の葬儀のため、離れて暮らす息子ダオラーを汾陽に迎え入れ、短い時間を過ごす。タオはダオラーとのやり取りの中、息子が夫や継母と暮らす事が彼の未来の為だと感じ、最後に餃子をつくる。汽車の中、二人の間には「珍重」という歌のこんな歌詞が流れる。
 「突然に沈黙が訪れ、あなたのことを思い出してしまう。両目は涙に濡れてどんどん、赤くなってゆく。何年も抱いているあなたへの想い」。そこにはまるでタオの今までの人生に対する想いと、自由度の少ない世界から新しい西の世界へと進もうとする息子ダオラーへのはなむけの想いが混在しているように思える。

「時代は進んでも」
 「物語三」では2025年という未来をオーストラリアを舞台に描いているが、映像からは未来は感じられない。そこには時代が進んでも人の心は変わらないという監督の想いの現れなのか? 中国講師ミアに自分のルーツを問われ、答えに窮するダオラー。一方、父親のジンシェンは中国語が離せない息子との確執の中にいた。
 最後の場面、汾陽に住み続けるタオが黒っぽい時代遅れの服で登場し、懐かしい90年代のヒット曲「GO WEST」と、汾陽の変わらない風景をバックに踊りだす。それはまるで時代は流れても私はいつまでもここに変わらずにいるよというメッセージに思えるのだ。

「作品についての想い」
 『山河ノスタルジア』を作った理由を監督はこうのべている。「ひとつは、私と母のことが関係しています。私は『長江哀歌』を撮った2006年前後に父を亡くし、母は汾陽で一人暮らしでした。私は故郷にいる母に何不自由のない暮らしをさせているつもりでしたが、母が本当に必要だったのはお金でも物質的なものでもなく、私の存在だったのです。ある日、母は私に「これはあなたの家の鍵だからね」と言い、鍵を渡してくれました。
 小さな田舎から都会へでて、多くの人は可能性を求めて生きています。ところが、同時に失うものもあります。私にとっては、それが鍵だったのです。そしてその事を私に教えてくれたのは「時間」だったとおもいます」。 こういう想いから家族についての映画を「山河故人」という言葉と共に企画していた監督は2013年『罪の手ざわり』が中国で事実上、公開禁止となった事をきっかけに実現化する事を決意。そこで彼が考えたのは『プラットホーム』を準備していた1999年、カメラマンとともにデジタルカメラで撮り貯めた膨大なビデオ映像の有効活用だった。再現不可能な当時の風景、春節の大群衆、ディスコで踊る人々、そして立ち往生したトラックから人々が石炭を奪ってゆく画面が映画の中に使用される事になった。
 当時のビデオ映像はスタンダードサイズで撮られていたため、二人は1999年を舞台とする第一部をスタンダードサイズで、2014年を舞台とする第二部をアメリカン・ビスタサイズで、そして未来である2025年を舞台とする第三部をスコープサイズで撮るというスタイルが確立された。
(水)
参考資料
「開発主義の時代に」(高原 明生、2014年、岩波新書)
「中国解体新書」(梁過、2011年、講談社現代新書)
「映パンフレット」

ひとくち感想

◎大変よかった  ◯良かった  ◇普通  ◆あまり良くなかった  ☐その他

風景と音楽がとても良かった。(80歳 女)
現在の社会の関係が出ていて。(79歳 女)
三部作のような映画だったが、三番目がよかったですね。ダオラーも立派に育って最後にタオに会えたらよかったのにと思いながら音楽にひたっていました。「作品背景」にもあった1999年、2014年、そして2025年はこの作品の背景を考えさせられて、おもしろい。(75歳 男)
人生を感動させる映画だ! 昨日の劇団神戸の一本目は人生の終盤をどう飾るかの話だったが、これから残りの人生、どうすごそうかな、具体的に考える時がきた。(75歳 男)
自分にとってアイデンティティとは何だろうか?と思った。ふるさとに生きる人、そこから出た人。(72歳 男)
みる前の期待よりも良かった。ことばで、映像で表現すること以上に観た者に考えることを植えつけたことと思う。(70代 男)
主題が幾層にも重なり、娘と父、育ての母と実の母、事業で成功したが内面は少しも満足しない父、実の母をしたった息子、いろいろと焦点を合わせられる映画だった。(70歳)
昨年は入院中でして例会には参加できなかったのです。今は隣国である中国、韓国の映画が気に入っています。世を反映しているのが良いですしお国柄も理解できます。(69歳 女)
『長江哀歌』と同じ悠々のリズムで、時が経っても変らないものを味わえてよかったです。皆、適材適所の好演。それとオーストラリアの波の音は朝日ホールならではの響きでありました。(69歳 男)
期待してみなかったけれど、人生のいろいろが詰まっていて深い映画で感動しました。最後のタオさんのダンス、リンとしてステキでした。自分の人生も思いおこしています。(68歳 女)
恋敵への嫉妬を露骨な攻撃に表わす金持ち男は、それを愛情の強さと錯覚した魅力的な女子学生と結婚できるが、すぐに破綻。親権を取った息子は新しい妻に懐き、男は外国での雄飛を試みるが、情勢の変化や人格のせいか、成功は続かず、再婚相手とも別れたようだ。息子は、幼くして別れた実母の記憶も定かでなく、育ての母さえ失い、土台のないフラフラした心持ちだ。父親は移住地の英語を話す息子と深い話し合いができるほどの英語力もない。実母も若い元気な時代を過ぎ、子を手離した辛さが身に滲みる。男に職を奪われた恋のライバルは、流れついた地の炭坑で、劣悪な労働環境により重病に罹り、困窮する。お金や権力を持ち過ぎて、回りの人を不幸にし、自分も不幸になっている人は、結構いるかもしれません。富の偏在は、不幸を拡散させると思う。(61歳 女)
ジャ・ジャンクー監督の力量と現代中国の変遷との二重イメージで見せる、これぞ名作。(60歳 男)
父親に対する「銃で遊んでろ」のセリフにはとてもスカッとした。父親が息子に対する「何様のつもりだ」は意味不明。「それはお前やろ」と言いたいくらい腹立たしかった。(55歳 男)
中国人なのに中国語が話せず、実の母親の記憶もかすかにしかないダオラー。母語、母国、そして母親とのつながりの薄い彼がアイデンティティの危機を迎えるのは「さもありなん」である。しかし、きっとこの後、実の母、タオに会いに行き、生きる方向をみつけてたくましく成長すると信じたい。鍵を首にかけていたから、きっと行くに違いない。袁葉さんのお話、すばらしかったです! ありがとうございました。(55歳 女)
私も息子が二人います。私も息子たちを思いながら、明るく踊ろうと思います。(54歳 女)
時間も空間も超えた大河ドラマ、思わぬ幕切れにちょっと驚きました。きっとダオラーは彼女と一緒にふるさとへ帰り母に会えたでしょう。その時の母の反応は? また、病気を患っていたリャンズーはどうなったのか? 余韻と共に色々と想像するのもまたオツなものです。あの餃子が食べた~い。(54歳 女)
…は、人生の主人公であったか、自由であれば、主人公であるはず。私は? あなたは?(48歳 男)
感動しました。三部を画面サイズの変化で表現したのも素晴らしいアイデア。愛することの切なさ、いとしさが伝わりました。中国の経済状況も垣間見えて興味深かったです。

ことばにならない行間に情感がにじみでていました。オーストラリアの波の音、炭鉱の光景、友情と愛、テーマがいくつもありました。(70歳)
中国のこととは云え、人間の未来は幸せなんだろうか、と思いました。一人息子に伝えておかなくてはと思うことが次々とあるような、ないような、笑われそうです。(70歳 女)
女性の生き方、子どもとどんなつながり方が、少々難解で、育てる過程にまだ、これからで、リミットはなんでしょうね。命のはてるまで(私の)。(69歳 女)
「人生色々」それぞれの生き方を淡々と描いてますが、こういう映画もキライじゃないです。中国って面白い国ですね。(67歳 男)
ストーリーもおもしろかったし、ひき込まれて見ました。『長江哀歌』がよかったのでこの作品も見たかったです。ただ、何が言いたいのか(監督は)。けんめいに生きる人々? 生きるには愛情が必要? そういったことが言いたかったのでしょうか?(65歳)
大きく変化する社会の中で、失われていくもの(故郷、名前…、さまざまな記憶)、人間は自分のルーツをたどり、さがしたくなるものらしい。タイトルの意味(日本語、中国語、英語)をいろいろと考えました。(65歳 女)
世界各国の映画を見ていると最新の家族や個人、直面している問題が画面から読み取れますね。今回の映画も二回目ですが、やはり最終は家族(母)のところに戻ってみることだ! というわかりやすいメッセージにとらえてもよいと思いました。(64歳 女)
とても観たかった映画なので、今日はhappyでした。国の土地としての大きさ、又、政治経済の移り変わり、人間の心の複雑さ、人生の移り変わり。対して人の心の成長、狭さ、土地、人種は変われど、人間は自由を求め、愛を求めながら、進歩せず…。昨日アートで観た『フランシスカ』とまったくタイプが違う扱いの映画なのに、なぜか「人間ってねー」と思い出してしまいました。それにしてもタオさんは魅力的な女優さんですね。(63歳 女)
何だかよくわからないところもあったけど(若い頃のタオの気持ち)、人生、思うように行かないことの方が多くて、でも肯定して進んだ方がいいのかな。(61歳 女)
オーストラリアの時代まで見ると、この映画は何を言おうとしているのか、わからなくなる。近未来中国社会を描いているとはいいがたい。オーストラリアの中国コミュニティは金持ちの集まりで、彼等は十年前の中国、反腐敗追求運動について思い出を語るが、それから中国がどうなったかはいわない。ラスト、タオが一人で二五年前のダンスを十一角塔文峰塔の前で踊る姿はさびしい。ダオラーもさびしい。ジンシェンもさびしい。中国は超大国になったが、さびしいのか。(60歳 男)
ラストのタオが雪の中で、ひとりダンスをするシーンは大変よかった。(54歳 女)
年を重ねることはすてきだと思った。貧富の差、格差には色々な問題があるのですね。時代の流れも重要なポイントですね。(49歳 女)
家に戻り、久しぶりにサリー・イップのCDを聞いた。台湾人の彼女は北京語でもたくさん歌っているのにあえて、広東語? シルビア・チャン(三話の先生)は、香港返還の際に、かなり強く大陸批判をした人、あえて彼女を? いろいろギモンが残り、想像するのもまた楽しい。かつて、かなり中国語圏の映画を見たわたしだから感じたことだから。(女)

ストーリー、少し長すぎ(内容に比べ)。でもいろいろ考えさせてもらった。(75歳 女)
時の流れを残酷に感じる映画だった。「時間が全てを変えるわけじゃない」は、その意味でも重い言葉と思った。(27歳 男)
ストーリーにあいまいさが多分にあった。
うーん。ジャ・ジャンクーらしくないよ。長回しも少なく、見やすいけれど、あのとがったシャープさが見られない。チャオ・タオさんは、あいかわらずおきれいで何よりです。ハイ!(60代 男)

◆全く時間のムダでした。(64歳 女)

 

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