世界の映画を楽しみましょう

2015年4月例会『プロミスト・ランド』

  • HOME »
  • 2015年4月例会『プロミスト・ランド』

解説

 4月例会『プロミスト・ランド』は、ガソリンに代わる新たなエネルギー源として注目されているシェールガス革命を題材にした社会派ドラマである。シェールガスとは非常に細かな泥の粒子が水中で堆積してできたシェール(頁岩〈けつがん〉)と呼ばれる岩石に含まれる天然ガス成分のことで、石油成分をふくむものはシェールオイルとよばれている。このガスは石油にとって代わる安価なガスとして脚光を浴びてきている。広大なアメリカの大地に眠る、国家の経済や財政に多大な恩恵をもたらす天然エネルギーである。1990年から採掘が始まったが、さまざまな報道や、2010年のドキュメンタリー映画『ガスランド』が指摘しているように、環境面の弊害が懸念されている。採掘時につかう化学薬品が土壌を汚染することや、地下の頁岩に超高圧の水を注入することで地震発生の要因になっていると考えられている。
 本作品は、そんな現在進行型の社会問題を扱ったヒューマン・ドラマである。このシェールガスを巡って繰り広げられるドラマは、俳優マット・デイモンが企画共同脚本し、監督に挑戦しようとしたほど力を込めた作品である。時間的制約から『グッド・ウィル・ハンティング/旅立ち』でコンビを組んだ朋友ガス・ヴァン・サントに監督を依頼した。ガス・ヴァン・サントは脚本を読んですぐに承諾の返事をした。そして世界をあっと言わせる問題作に作り上げた。

あらすじ
 大手エネルギー会社が、シェールガスが埋蔵されている地方に目を付け、農場主たちに採掘料を支払う契約をして、土地を使用する権利を買収しようとする。そのために幹部候補のスティーヴ(マット・デイモン)と女性の同僚スー(フランシス・マクドーマンド)が現地へ向かう。
 デイモン扮する主人公スティーヴは、大手エネルギー会社の幹部候補生。シェールガスの埋蔵量が豊富な農村地帯に乗り込んだ彼は、地元の農場主らを回って発掘権の確保を試みる。町の有力者を抱き込み、反対派を買収する。順風満帆、狙い通りこの土地でシェールガスを採掘できる権利が得られると思われたが、住民投票を呼びかける老牧師や、切れ者の環境活動家に行く手を阻まれる。それでも仕事に対する責任の強さと愛社精神で試行錯誤しながら仕事を続ける。しかし老牧師や、頑固な農場主、興味をひかれる女性教師などの話を聞くうちに、地域のため会社のためみんなの幸せのためと思っていた確固たる信念が少しずつ揺らぎ始める。

一社員の生き方
 日本では地方の過疎化は大きな社会問題の一つとなっているが、アメリカでも地方、とりわけ農業地帯では、個人農場経営が立ち行かなくなっている。映画では苦しい低収入に悩む農家と大資本家との力関係をはっきりと描いている。ただ観客が期待するような住民VS巨大企業の壮絶なドラマにはならない。企業の中の一社員であるスティーヴの生き方に観客を誘導する。仕事とどう向き合うのか、貧しい農家の現状をどう考えるのか、個人としてどう生きるのか、観客をスティーヴに感情移入させる。巧みな演出と脇役陣の演技力で映画の世界に引き込まれる。

企業論理と現実を暴く
 映画はシェールガスが具体的にどんな被害があるかを正面からは指摘していない。衝撃的な写真が映し出されるが、それはシェールガスの影響ではなかったように扱われている。ただ見ている観客にはそういうこともあるだろうと想像できる。まるっきり関係がないとは思われない。しかし映画はシェールガス採掘を巡って賛成派、反対派のどちらかについて述べるのではない。独自の主張を声高に叫んだりもしない。シェールガス問題はメインテーマではなく、あくまで背景としてとらえ、巨大資本が弱者に向かう現実を暴く。そこまでやるかと思うぐらい企業は資本追求のためにはなりふり構わない。このような例はいくらでもある。シェールガスでなくとも他のあらゆる事象に置き換えることが可能である。
 他人の人生を金で買いたたく裏の仕掛けの衝撃。金をばらまいて作ろうとする〈約束の国〉に幸せは実るのか。のどかに美しく広がる町の風景を見ながら、明日を壊していく大企業のあくどさを考えさせる問題提起である。

脚本家、監督の視点
 そんな中、スティーヴが自分の本当の気持ちに正直になっていく過程がじつにみごとに描かれ、悩める主人公の姿を通して「ちょっと胸に手を当てて、大切なことを考えてみよう」と観客に促す啓蒙的なドラマとなっている。しかも、あざとくも説教くさくもない。
 マット・デイモンと共同執筆者のジョン・クラシンスキーは「この映画を見てくれた観客が、自分なりの決断をくだせばいい、僕たちの目的は、映画のキャラクターが真剣に悩みながらも自分なりの決断を下していく姿を、笑いと感動を織り交ぜながら描き出していくことだからな」と言い、デイモンは「この映画は何らかの答えを引き出そうとしているわけではない。とはいえ、きっと希望の持てる答えがあると僕は信じているけれどね」と言っている。

自分で考え行動する意義
 自然体の人間スティーヴがあわただしく奔走する様子。田舎町の牧歌的な生活風景、水と緑に恵まれた自然や動物たちを、分け隔てなく見つめる視線が瑞々しい。それを象徴するのが、さりげなく繰り返し挿入される穏やかな空撮ショットで、この物語をより大きな、より清らかな視点で語ろうとしている。
 採掘の賛否を問う住民投票が行われるクライマックス直前、会場の体育館にひょっこり現れる少女の存在が輝く。時価総額90億ドルのエリート社員と、たった25セントのレモネードを売る名もなき少女のほんの数十秒のやりとりに、この映画の素朴な視点が凝縮されている。そしてエンドロールのショットでは、いつの間にか私たち観客自身が自分の頭で考え行動することの意義を感じ、えも知れぬ感動を覚える。
(飯川)
参考:パンフレット、ホームページ

ひと口感想

◎大変良かった  ○良かった  ◇普通  ◆あまり良くなかった  ■その他

夢のエネルギーといわれているシェールガスの開発のウラにウソや策略が満ちていることがよくわかる。日本の原発誘致の福島や福井でも同類のダーティーな話は沢山ある。(76歳 男)
例会の紹介文によるとシェールガス問題はあくまで背景としてとらえ、巨大資本が弱者に向かう現実、資本追求のためになりふり構わない姿をえがいているとあるがその通りと思う。それにしても戦後日本の一般家庭でも利用されるようになった石油は、供給可能があと42年しかないとは。私は今アメリカのアーミイ族を思い出す。便利さだけでなく全ての人が人間らしく生存出来る世の中は作れるはずだ。(74歳 女)
非常にすがすがしいエンディングだった。(74歳 男)
大企業のやり口のあくどさもここまでとは思わなかった―-。それにしても、一人ひとりが真剣に考えないと…と、今更痛感。(72歳 女)
ラストはとても後味がいいと思えなかったのは、なぜだろうか。たぶん、あまりにも現実的だったからでは。空撮は見ていておもしろい。(70歳 男)◎ひかえめな表現だったけれど、ドンデンがえしがよかった。ただし、皆にわかりやすくするためには、物事の本質を強烈にものがたるのも良いのではないかと思った。(70代 男)
今の沖縄の基地問題とダブって見ていました。本当の豊かさとは。(68歳 女)
「農業を教えるのか」「命を教えます」が強く印象に残りました。きょう、丹波の一農地が一〇年ぶりに手が加えられます。障害のある人達の手によって。(67歳 男)
まさに今の私たちの問題だと思う。お金か命か…。主人公の男の人がいい人で、良心が動いたからよかったけど。こんな話はどの街、村でもおこることなんだ…!!(66歳 女)
硬いテーマをエンターテインメントにして楽しみ、考えさせてもらいました。各俳優さんも適役で、心に残る一本でした。マット・デイモンさん、ありがとう。(62歳 男)
金は大切だが、金より大切なものがある。人物の個性も面白かった。(62歳 男)
自信をもってしていた仕事が、人のためにならないことに気づいたとき、やめれるのだろうか。カッコよすぎるよね。でも人としてそうありたいです。大企業はどんなことでもするということにびっくり。ウソを真実にして真実をウソにしていく。アメリカのこわさをみた。(61歳 女)
考えさせられる内容でした。シェールガスそのものもよくわかってませんでしたが、そのことに限らず、何を大切に生きてるのか?を問われてる気がしました。都会に住んでいるとストーリーのように土地とか農業とかいうように具体的なものにつながりにくい。だからこそ考えてないと流されてしまうのかと。キャスティングよかったです。(60歳 女)
「豊かな国土に国民が根を下ろして生活していることが国富であり、これを取り戻すことができなくなることは国富の喪失である」ことを描いた名作。もっと多くの
人に観てもらいたい。(60歳 男)
美しい風景に、福島の人たちは帰りたくても帰れないのだと泣けてきた。原発事故の前にみていたら、またちがったであろう、今の気持ち。正義とはいったいなんなんでしょう。(58歳 女)
テーマにひかれて見に来ました。途中から、主人公がこれで、どんな結末になるのか??と思いながら見てました。これはメジャーの配給ルートにはのりませんね。(51歳 男)
『プロミスト・ランド』すっごく良かったです!!こういう映画を探してこられた方に感謝です。(51歳 女)
ストーリー展開が非常に衝撃的で、それ故に「あり得る」と思えた。何もかもを金と権力のために動かす大企業は、医療産業都市構想をぶち上げたあげく、STAP事件に素知らぬ顔を決め込む神戸市役所と瓜二つだ。真実をねじ曲げる者は、企業であれ官であれ許してはならない。久元喜造自称神戸市長を一刻も早く神戸市から追い出さねば。次にやられるのはこの映画サークルだろう。そんな気がしてならない。(26歳 男)
気持ちが楽になった感じで終わって良かった。ホッとしました。(女)
とても複雑なストーリーだった。スティーブは会社こそクビになったが、知り合った彼女と幸せになっていくのだな、と感じた。ぼんやりした感じだった。(53歳 男)
マット・デイモンといえば『レインメーカー』『インビクタス/負けざる者たち』など社会派のものが多いが、これも裏切らないよい映画でした。ありがとうございました。(匿名)
シェールガスは石油に代わるものとマスコミの話に私は全く疑問を持たなかった。ただ化学薬品を注入することには不自然さを感じていた。この映画をみて、全くバラ色でないことが分かった。この映画のすごいことは単純に結論を出さないで、あらゆる立場から考えさせられるように作られている。今後も忘れられない映画。映画サークルに感謝します。今、特に安倍政権になってから、「今だけ」「金だけ」「自分だけ」になっている。原発問題も集団的自衛権も残業代無視も、日本は子や孫の時代に今のままでは、日本国は存在するのか???(匿名)
今あちこちで起こっている事を考えさせられた。そして企業に働く者としての社会への姿勢というもの、責任等、深い問題提起を感じ、今少し重苦しい気持ちです。(匿名)
空からの映像が映しだすのは美しいアメリカの大地。人々は、土地をたがやして生きてきたが、価値はその下にあるという人がやってくる。それから始まるストーリーはどんでんがえしと、ハートウォーミングで、ちょっとにがいエンディング。ハリウッド映画ではない秀作。それにしてもアメリカは良い俳優が多いと感心した。(女)
素晴らしい映画でした。マット・デイモン素敵!!(匿名)
深く考えさせられる良い映画でした。マット・デイモンのファンでもあります!(匿名)
まさに私たちの問題です。(匿名)
美しい風景とは対照的なテーマで深く考えさせられました。大企業はコワイですね。いつもすばらしい作品をありがとうございます。(匿名)
日本の原発村もこのようであったのだろう。貧しい所がねらわれる。その構図が余りにも酷似していて驚く。又、環境団体の反対を抑える為、会社側があらかじめ偽環境団体を送り込む、というのも、いかにも大企業がやりそうな汚い手口である。安倍首相の何でもありの汚い手口を連想させるいい映画でした。マット・デイモンのファンです。アメリカはやっぱりこんな映画が作れるんですね。(女)

朝日ホールは見やすくて駅からの便利も良いので有難いです。(72歳 女)
企業への不信感がつのった。正直で良い人でいたいと思った。(70歳 女)
グローバル社の悪どさがわかり少しショックでした。これからの展開がとても気になりました。マット・デイモンはステキな俳優さんですね。希望映画『パプーシャの黒い瞳』です。(66歳 女)
シェールガスのこと、少しわかりました。最後のマットの顔、はればれとして良く、カントリー音楽がよかったなあ。(66歳 女)
拍手した!!スティーブは企業のコマに終らず、私たちが未来を考えるよう新しいことに試されていると。(65歳 女)
会社にだまされたことがわかっても、会社を裏切る勇気は私にはないことがくやしかった!(63歳 男)
二度目ですが、マット・デイモンはよい映画に出ていると思いました。アクションものにも出ているけど、良心的な映画も心がけていると思えるからです。環境問題を考えるきっかけになると思います。(63歳 女)
おーっ!マット・デイモンさま、お久しゅうございます。あれは10数年前、台湾で『プライベート・ライアン』みて以来です。ホントしぶくなって、かんろく出ちゃって…良かった!(60代 男)
いきなり最高級のワインを飲ませて幹部候補の夢を見させて、尻をたたく、「アメリカだな」と思う。そんなスティーブ(マット・デイモン)は、グローバル社は「何もない田舎」を助けていると信じ込んでいる。真の社畜とはそういう社員だろう。ところが会社はもっと上手をいくという厳しい映画であった。企業と人間は根本的にちがう。「企業が世界一活動しやすい社会をめざす」という安倍政権は、そんな大企業を応援する。私たちは、よく見てよく考えないと未来を奪われる。(59歳 男)
「約束の土地」という夢のキャッチコピーの裏側。原発立地や数々の環境問題にも共通する実際の一端が描かれていたと思います。主演のグローバル社のスーとスティーブのコンビぶりにも味があり、巨大企業の力の不気味さと細やかでリアリティのある人間ドラマの両方の要素があってよかったです。USA中西部の広大な田園地帯やカントリーミュージックも魅力的でした。期待以上で観てよかったです!(52歳 女)
アメリカのテレビによく映る面とはちがう面を興味深く見ました。人にとって何が一番大切なのか考えさせられました。(52歳 女)
劇場公開しらなかったのでみにきました。みにきてよかったです。(50歳 女)
世の中の真実を見た気がした。何が良くて何が悪いのか分からなくなった。自分が感じることが全てではなくて自分の気付かない別の力でそう感じたり見えているのであればこわいと思うし、それを見破るためにいちいち裏を想像するのはしんどいなと思うし。いろいろ考えさせられました。(48歳 女)
環境問題にとどまらず、人生の本質に迫ったよい作品でした。(45歳 男)
ムズかしい問題だと思います。住民の投票結果を出さないのは、余計に考えないといけない問題であると思いました。(40歳 女)
○まさかの展開に…楽しめました。でも汚染はほんとのこと。アリスに逢わなかったら、彼は同じ選択をしたであろうか。スー(→生活がかかっている)との違いが哀しい。(匿名)
企業による開発とその土地の発展。それに伴う自然破壊。環境団体と企業…それに振り回される地元民と社員の戦いと思っていたら、クライマックスのどんでん返しに驚くと共に、マット・デイモンのスティーブに金・金・金などとあまり言ってもらいたくなかったので、反面ほっとしました。自然と産業開発の戦いというより、この世の中は個人と社員としてやとう会社との戦いなのですね。面白かったです。(女)

現在の燃料革命の裏の面が良く描かれています。環境問題は資本主義の金の上に苦悩しています。(77歳 男)
大変良かったと思います。お金は大事だが…生きるとはそれだけではない事を考えさせられた。社会性のある映画を今後も上映して下さい。(匿名)

スケジュール

  • twitter
PAGETOP
Copyright © 神戸映画サークル協議会 All Rights Reserved.
Powered by WordPress & BizVektor Theme by Vektor,Inc. technology.
PAGE TOP