2017年1月例会『怪しい彼女』

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解説

人生は、何度やっても素晴らしい!

 キュートなルックスと並はずれた歌唱力を持つ20歳の女の子、オ・ドゥリ。しかし彼女はただの若くて可愛い女の子ではなかった。毒舌を振りまき、我が道を突き進む彼女の正体は70歳のおばあさん…。
 韓国で大ヒットを記録し、世界中で次々とリメイクされる『怪しい彼女』。今年、日本でも多部未華子主演でリメイク作が公開され話題となりました。20歳に若返った毒舌おばあちゃんが巻き起こす騒動に、笑って泣いて、そして元気が出ること間違いなしです。

[あらすじ]
 口が悪くて頑固な70歳の女性オ・マルスン。トラブルが絶えず、周囲にとっては煙たい厄介者。そんな彼女の自慢は、女手ひとつで大学教授にまで育て上げた一人息子のヒョンチョル。しかし当の息子は嫁姑問題に頭を悩ませる日々。昔の奉公人パク氏は「心のきれいな人だ」とかばうが、やがて嫁はストレスのあまり入院し、マルスンを介護施設に入れる話が持ち上がる。
 一人寂しく街にたたずむある日、ふらりと写真館に入ったマルスンは、いつの間にか20歳の頃の容姿に若返ってしまう。そこで憧れの女優にあやかり「オ・ドゥリ」と名乗ると、奉公人時代からマルスンをお嬢様と慕い続けるパク氏の家に下宿し、別人として生き始める。やがて孫のジハに頼まれ、彼のバンドでボーカルを務めることに。するとその歌声が人々の心をとらえていく。そんな中、マルスン一筋のパク氏はどう見ても20歳とは思えないドゥリの怪しすぎる言動に次第に不信感を募らせていく…。

 なんといっても、ある日突然、外見だけが20歳に戻ってしまったおばあちゃんに扮するシム・ウンギョンの演技が素晴らしいとしか言いようがありません。前かがみの姿勢も、ガニ股気味の歩き方も、しゃべり方や特に「アイゴー」の言い方も、完全におばあさん。頑固だけど愛らしいキャラクター、オ・ドゥリを魅力いっぱいに演じています。
 オ・ドゥリの若者離れした「怪しい」振る舞いに大いに笑い、若い頃果たせなかった歌手になる夢を実現していくその姿に胸を高鳴らせ、やがて女手ひとつで息子を育てた険しい道のりを思い、温かい涙を流さずにはいられません。
 主演のシム・ウンギョン自身が歌う70年代にヒットした数々の名曲も現代風にアレンジされ、聴き応えがあります。作品と見事に溶け合った挿入歌の歌詞が主人公マルスンの生きてきた波乱万丈な人生と重なります。長い歳月を生きていれば、必ず出会いがあり別れもあります。歌詞とメロディー、そこに込められた情感がぴったり合う曲が選曲されていて、見事です。
 この作品の大きな魅力はオ・ドゥリことオ・マルスンであることは間違いありませんが、彼女を取り巻く人々も彼女が起こす騒動に巻き込まれながらも、いきいきと描かれています。
 マルスンのことは無条件に何でも許すパク氏、パク氏をはさんで三角関係のおばあさん、マルスンの息子、その嫁、孫娘、孫息子、パク氏の娘に至るまで、みんな憎めない愛すべきキャラクターなのも良いのです。

 この作品では年を取るということについて考えさせられます。オープニング、若い人たちが、年を取るということについて否定的な感想を次々話していくシーンから始まります。もう若いとは言えない私から言わせると「そこまで言わんでも…誰だって年は取るんやから」と思ってしまいました。年をとると確かに頑固になったり融通がきかない事もありますが、若い時には持てなかった、人への共感(私の場合)や厚かましさを得ることではるかに生きやすくなったと思うのです。そういう私も、「少しでも若くありたい」と続かない運動を始めるなど、若さへの呪縛から逃れられないのですが。
 そして人生の分かれ道で決断してきた中で、その選択に悔いはないけれど、他の道を選んだらどんな人生を自分は歩んでいるのだろうかと思う瞬間もあるのです。女の人生は、進学、就職、恋愛、結婚、出産とさまざまな局面で決断を迫られます。その中で後悔が微塵もない人なんていないのではないでしょうか。
 生きていくために歌手になる夢をあきらめたマルスン。人生をやり直せる20歳にもどった彼女がいきいきと歌う姿をみて彼女を応援する気持ちにならない人はいないのではないかと思います。
 現実には、若い頃に戻りたいと思っても戻ることはあり得ないのですが、もし戻れるとして、「今の人生と同じ道を歩むことを選ぶ」と言い切れるほど、自分は今の人生を一生懸命生きているだろうか?たとえ人から見たら辛い境遇であっても、自分は「この人生で悔いなし!」と思うことができたら、それ以上幸せな人生はないでしょう。

 マルスンにとって10代が朝鮮戦争の混乱期、10代の終わりから20代の青春期が朴正煕大統領による強権政治と開発独裁の時代に重なります。1961年のクーデターで始まった朴正煕時代は、貧しさから抜け出すための施策が優先されました(詳しくは背景をご覧ください)。その一方で貧しい人々への公的なセイフティネットはなく、生き抜くのに必死な時代でもありました。豊かではない人々がより貧しい人々を扶養するのが当時の現実でした。使う側と使われる側が固定的ではなく、使用人がある日突然「どじょう鍋」の店を出し、元の店をつぶしてしまうという事も起きる。「それぞれがそうやって生き抜いてきたんだ」という思いがありますが、それはなかなか子や孫の世代には届きません。
 今の韓国社会からは想像もできないような困難と貧困のなかにあった時代。この映画に描かれた世界からは「あの時代」があったからこそ今があると振り返るほどに豊かになりました。
 女手ひとつでわが子を育ててきた主人公のマルスンは、日々の生活に追われ、自分が望むような人生を生きることができませんでした。そんな彼女が再び20歳の容姿を取り戻し、天性の才能を生かして思い通りの人生を歩んでいきます。夢を実現し、恋に胸をときめかせる彼女があらためて気づくかけがえのない家族への愛情。人生は何度やっても素晴らしい。そんな温かい気持ちと前を向いて生きる勇気が、この映画を観るすべての人の心を満たすに違いありません。
(陽)
【参考文献】『怪しい彼女』パンフレット

ひとくち感想

◎大変よかった ○よかった ◇普通 ◆あまりよくなかった □その他◎大変よかった

とにかく非常に楽しく何度も笑ってしまった。でもなぜ老女が若返る映画を撮ったのかな…。私はずっと昔小学生の頃、近所の70代位のお婆さんが、母の問いに「よく働きますね」に答えて「18歳の頃と今と気持ちはちっとも変わりませんよ」と答えたのをとても不思議に思ったのを思い出す。けれど自分を振り返って同じだと思う。(76歳 女)
めでたし、めでたしで久しぶりにいやされました。どこで元にもどるか気になっていたが、なるほどというところで落ち着いた。出来れば変身するきっかけをもう一度鮮明にしてもどり方と一致すれば良かったように思いました。足のきず。血の入れかわり?(75歳 男)
ドラマ(シナリオ)が良かった。とくに後半−ラストのつくりが上等でした。出来のよい韓国映画でした。(75歳 男)
単なるエンタメを超えてすごい映画だと思う。私の中にいろんな感情が生まれ心が躍ったのだから。(72歳 男)
とても楽しく観ました。あんな事起きればいいですネ。なら、どう生きようかしら。今晩考えます。(71歳 女)
文句なく面白い映画でした。じーんときて涙まで出ます。なんでだろう!?(70歳 女)
何ともハチャメチャな筋だけど、とに角楽しめました。最近見た映画の中でも秀逸。「すべての母親にささげる」のエンドタイトルが全てを語っていました。(69歳 男)
実はハンリュウにはまってしまい。毎朝ビデオをとったりしてみています。今日のは笑ってもうひとつ大笑いして、なみだポロポロ鼻グスグスやっぱりエーネェ。アジア人どうしなので顔が同じで、心もかんじかたも同じかしら。少し無理がある。歌は心にしみたわ。ヨカッタヨカッタでーす。(69歳 女)
若返った女優さんの演技、最高によかった!老いた女性のかっこうだけでなく人生を重ねた豊かさも表現していた。年を重ねて色々苦労した人間性が「素敵!!」だと再認識した。私もゆるやかに、おだやかに年を重ね、その味を、子や孫や若い人達に示してやろう!!アンチエイジングだと「しゃかりき」になるよりもいい年の重ね方をして生きていると、若い人はその良さを見てくれているのではないかなぁ〜。いい映画でした!!そして良く笑って楽しみました。ありがとうございます。(69歳 女)
久しぶりの楽しくてしんみりさせる映画、今後もこの様な作品が観たいです。(69歳 女)
とても楽しかった。ラストも良かったし。見終わってあとあじの良い映画でした。どう決着がつくのかと思ったけど元へもどるのも納得のいく経過です。音楽もとても心に響きました。主人公も素敵です。又、見たいと思いました。(68歳 女)
とても楽しく、またホロリとさせる良い映画でした。私ももう一度20代にもどったら、おもいっきり自分のしたい事してみたいなと思います。韓国映画、ドラマは台詞がポンポンでて圧倒されますね。歌もとても良かったです。(68歳 女)
『怪しい彼女』チエゴ チェミンネヨ! タシ ハンボン (原文ハングル)こんな映画をお願い(68歳 女)
楽しかった。こんな映画をいっぱいみたいです。(68歳 男)
若くなったおばあちゃん娘が最高!何回観ても面白い!(67歳 男)
とても楽しい映画でした。観た事あるのですが、細かい所、また観る事が出来て良かったです。
♫「静かに雨が降る」の歌!良いですよね。これからも韓国はじめ、アジア映画を観せて下さい。宜しく。(64歳 女)
日本版もみました。歌のすばらしさと母の愛がとてもよかった。子を想うきもち、孫をおもう気もちがやさしいですね。夢をかなえられてとても幸せで、またラストの展開もおもしろかった。(62歳 女)
映サの映画には珍しく何度か声を上げて笑いました!!免疫力UP!!意地悪ないけすかないお老人にも少し優しくなれそう。年ゆく自分もズ太く、楽しく、堂々と生きれば良いんだと納得。母は強し!!(62歳 女)
深刻にならずに、でもしんみり、ホロリとさせてとても楽しい映画でした。歌もどれもよかった。「身体は若返れなくても心は若返れる」とどなたか話してられるのをもれ聞き、そうだなあと思いました。(62歳 女)
滅茶苦茶な主人公の大活躍に笑い、肉親、特に苦労して育てた息子に対するいじらしいほどの想いに、涙が浮かんだ。
でも、あなたは「やっぱり怪しい彼女」。息子に教育を受けさせるためか、金儲けのため恩人一家を不幸にし、息子が出世し安定してからも、お嫁さんを病気になるほどいびり、よその赤ちゃんにセクハラしたり、若い母親にきつい言葉を浴びせたり、コメディーとはいえ、暴言、暴力のオンパレード。
奇跡で20歳に戻らなくても、髪や服装をおしゃれにし、年齢なりに生き生きと歌い踊り、友達とつき合い、自分の大事な人に対してのみ人情家であるのでなく、他の人たちへも優しい物言い、思いやりができたら素敵と思う。(61歳 女性)
3月退職して一年。何をしたらいいのか、力つきた感じで、悩みながら過ごしていました。やっと、このごろ若い頃に夢みていたことを、また違ったかたちで実現してみたいと思っていたところです。「もう一度」いい歌でした。いい映画をありがとうございます。(60歳 男)
強引な展開と情に厚い人たちのしんみりした泣かせどころ、韓国映画の王道ですね。(56歳 男)
コメディータッチながら、ばあちゃんの人生にぐっときました(56歳 女)
とてもよかったです。(56歳 女)
おもしろかった。知らない人の誰しもが「20歳のくせに生意気」と思うし、あんなに若返ったんじゃ、もはや誰も70歳なんて信じてくれない。しかしながら、最後には交通事故に遭った自分の孫のためにもう一度70歳の姿に戻ったシーンにはとても感動した。(55歳 男)
日本であまり上映される事のない東南アジアや中央アジアの良い作品を観たいです。(54歳 女)
楽しい映画でした。輸血後の病院…どんなだったのかなー。私も写真館さがします。(49歳 女)
『拝啓、愛しています』に続く、老人パワー炸裂の楽しいハートフルコメディだった。儒教が浸透していると言われる韓国での高齢化とそれに伴う社会の精神的価値観の揺れを反映しているのかもしれないと考えると、ますます興味深い。(28歳 男)
韓国語の面白さとシム・ウンギョンの唄のうまさ、ファンタジー、そして韓国の今を写し出す。この映画はコメディの枠を超えた作品だと思います。(男)
久々に笑って泣いた映画でした。来週に40代に突入する自分への励みになった気がします。(女)
すごくキレイな女優さんという訳ではないけど演技派のシム・ウンギョン。『サニー』でもチョット変わった子で光ってました。次回作がとても楽しみな女優さんです。今作品の歌は彼女の実際の歌声だったそうで、すばらしく感動的でした。ミュージカルの舞台にも進出してもらいたいです。(匿名)

現実にはありえない話だけど、とても夢があって楽しい映画でした。(65歳 女)
リメイクの中国版、日本版も見ましたが、やはりオリジナルの方が断然素晴らしいです。高齢者の問題をていねいに描いているし、それに若者世代との断絶も…。(65歳 女)
楽しかった。久し振りに映画で笑いました。私も20代の頃にもどって、夢をやり直してみたい。オープニングの女の人生を球技にたとえるのも笑えますね。最近のアジア映画は女性が元気でうれしいです。(63歳 女)
「もう一度同じ人生を歩む」とは言えない。人生は一回生きたらもう十分と思っている。あんなこともこんなこともやりたかった、とは思うが、それをすれば、今の何かを手放す必要がある。今、手放したいものはない。この映画のように、ある期間だけ、まったく別の人生を生きるのは楽しそうだ。(60歳 男)
日本版の『あやしい彼女』を見ていたので、キャストから(本作の人と似た日本の俳優さんをキャスティングしてるとわかってより楽しめた。)ストーリーまで、全く忠実に作られていたのだなーと思いました。特に青春写真館の店主は温水さんが韓国映画に出てるのか?!と思ったほどです。でもやはり本作と日本版の一番の違いである母、息子と母、母・娘の対比では、日本版の方がぐっときました。自分が女だからかもしれませんが、主人公の夫がドイツの炭鉱へ出稼ぎに行く設定とかは『国際市場で会いましょう』を思い出しました。ので、より主人公の境遇がわかって良かったです。(女)

海という文字の中には「母」が在る。フランス語で「海」と「母」という言葉(文字?)が同じ発音だとか(?)やはり子への想いや母への感謝は映画にするとこの感じかとみました。ちょっと騒がしいのは、韓国語のパワーか。(78歳 女)
各国のリメイク作品を一本も観ていないので、まずはオリジナルと今日来ました。韓国映画の食事のシーンが楽しかったです。全体的にはやはりカレーでした。スープの部分はスパイスがしっかりしていて美味しいのですが、具の部分が…です。鎌倉に住んだ四姉妹はおばあちゃんのカレーっていえばちくわカレーと言って食べてたけれど、私はちくわ入りのカレーはNGです。血縁の物語を輸血でみせたことと、20代に戻った彼女がバスに乗り込むシークェンスの躍動には拍手です。(匿名)

夢と想えば夢。夢でなくしなければ…。(匿名)