市民映画劇場2月例会(第562回)『パリの家族たち』
原題:LA FÊTE DES MÈRES
監督:マリー=カスティーユ・マンシオン=シャール
出演:オドレイ・フルーロ、クロチルド・クロ
2018年/仏/103分

描かれるさまざまな家族のありかた

 『パリの家族たち』、やさしい色合いの数家族のスケッチと思ってみると、意表を突かれる。
 冒頭「いろいろな母親がいる。親にならない母親も。ダメな母親も」と、はじまる。
 原題は「母の日」。母の日までの数日間が描かれている。
 「家族たち」ではなく、パリの「母子」の物語。父親として登場するのは、母親になったばかりの大統領の夫、ただ一人である。
 数組の母子の場面が切り取られ、コラージュのようにちりばめられていく。
 母子と書いたが、見たときは母娘の印象をとても強く感じた。
 監督は「母の思い出と共に生きる息子。母親に対して過保護な息子」と、息子の存在も母との関係性において取り上げている。
 劇中で語られる「母の日」の由来や、提唱者がその後商業主義に利用されることに抵抗した事実もでてくる。女たちの母と娘についてのいろんな思いが交差してゆく。
 けっこう辛口の映画であり、問題提議もはっきり現わされていて、見ていて戸惑う場面もある。しかし日本でも意識される事柄も多くある。
 旧来からの親子の「こうである」として規定され、また「かくあるべし」とされてきたあり方。それをそのまま肯定する母親もいれば、受け入れられず悩み反発を感じる母親も女性もいる。それ以前に、産まなければ親にはなれないのかということも含めて、パリに生きる女性たちを描いた。

登場する親子たち
大統領(アンヌ)
 出産したばかりで、夫は育休を取得中。母親として自信が持てず、今までの自分が変わってしまったと思っている。
三姉妹とその母親
・小児科医の長女(イザベル)
 幼いころに母親を求めて応えてもらえなかった心の傷?を抱えている。モザンビークから養女を迎えようとしている。
・ジャーナリストの二女(ダフネ)
 二児のシングルマザー。子供たちはシッターのテレーズになつき、ティーンエイジャーの娘は母親に反発している。
・大学教授の三女(ナタリー)
 年下の恋人(教え子)がいる。講義で「母の日」を取り上げ「期待とストレスが交差する面倒な日」という。
・三人の母親(ジャクリーヌ)
 母親より個である自身を優先してきたが、今は徘徊をするようになっている。誰も一緒に暮らそうとはしない。
三姉妹の女友達(ブランシュ)
 彼女も母と口を利かない生活を続けている。
女優(アリアン)
 舞台でセリフを忘れてしまい、息子(スタン)に心配されている。でも、タップダンスを習い新しいことを始めている。
花屋の店員(ココ)
 ゲイのおじの花屋で働く。妊娠したことを恋人(スタン)に告げようとして、受け入れてもらえない。その恋人はカフェを経営している。
シッター(テレーズ)
 ダフネの二人の子供の世話をしていて、子供たちとも良好な関係を築いている。が、転倒し仕事ができなくなる。大統領(アンヌ)の母親である。
中国人の娼婦
 息子のために遠く離れて暮らす。パリの街角の風景にたたずむ。

そして「母の日」
 大統領アンヌはダフネのインタビューを受ける。「母になって自信が崩れた。母親は偉くもないしすごくもない。でも、前の自分と確実に違う。私を豊かにしてくれる。母親見習い中です」
 テレビを見ている息子を抱く大統領の夫、スタッフ達。
 テレーズは家族とともにテレビを見ている。娘を見る誇らしげなテレーズの顔。
 女優アリアンは、息子と病院へ行く。息子に「恋人を作って。いい父親になれる。わかってる。私も愛している、もう来ないでいい」と言い残し、息子を突き放すようにステップを踏んで見せる。
 三姉妹は母と食事をしている。デザートのお代わりをする母を残して、一人ずつ席を立つ。見回すと、高齢者ばかりのレストランである。施設の職員に託して隣室から見つめる三人。
 ココはやっと恋人に妊娠に気づかせることができた。
 ページをめくるように、スクリーンにそれぞれの母娘(子)が映し出されてゆく。
 懐かしい聞いたことのある曲が流れる。「キラキラほしよ あなたはいったいだれでしょう・・・」

セリフで語られる思い
 「(子供が生まれて)不安でたまらなかった。(子供が優先にならず)罪悪感があった」 「世間は男に寛大だ。母の影響力が大きすぎる。(母の)視線に無関心や失望を感じると子供は傷つく。責任が重すぎる」 「子供を産んだ女は偉いの?世界はあなたのものだから?『私は母親だから』なにをしてもいいの?」 「母から『夢を制限しないで。望めばいい。必ずかなう』と言われた」
 セリフに私たちの事?と思わせるような言葉がある。

一番好きなエピソードを
 シッターが休みのため、子供二人と学校から帰るダフネ。水たまりに足を入れてしまった息子。叱られるかなと母親を見る。次の瞬間 水たまりに飛び込む母親。驚く子供たち。子供たちも一緒になって水をはね散らかして飛び回る親子。
 「また やっていい?」「いいわよ。」
 三人の楽しさが、映像から伝わってきてとても大切な時間を親子で共有していると、ちょっとうらやましくなった。
★エンドロールが終わって、場内が明るくなるまで座席でお待ちください。最後にお楽しみが待っている?

参考資料:パンフレット・HPほか
(点子)