2017年9月例会『ザ・ビートルズ』

解説

あなたをビートルズがツアーをしていた時代に連れていこう

 ミュージシャンを主人公にしたドキュメンタリー映画は、数多くある。素晴らしい音楽を、スクリーンを通して体感できる事に感激するし、スターの素顔が垣間見られるプライベート映像は魅力的だ。しかし、その作品群の中には、ファンのためだけのフィルムとなっているものもある。
本作は、ビートルズファンにはワクワクした喜びを、そうではない人たちには新たな発見と出会いをもたらしてくれる優れたドキュメンタリー映画となっている。
 ビートルズを題材にした映画は多いが、四十六年ぶりの劇場公開されるアップル(ビートルズ)が公認したこの作品は、リバプール時代も含む貴重な100時間以上のアーカイブ映像とオリジナル・インタビューで構成されている。
 60年代、世界中に熱狂的なファンを作り、時代の寵児となった世界一有名なバンド・ビートルズ。
 今でもその優れた楽曲の数々は人々に愛され、クラッシックの名曲と同じように聴かれ、演奏されている。
映像は、ビートルズのライブやスタジオでのレコーディング風景、映画の製作現場、そして日常を切り取り登場させることで、彼らにしか成し遂げられなかった栄光の日々の中での、時には大胆な、時にはあまりにも繊細な若者たちの表情を画面に映し出している。

初めてリンゴと演奏した時を思い出すと今でも感動する(ポール)
 ビートルズは、ジョンが手を上げ、ポールがその手を掴み、ポールがジョージを推薦し、三人がリンゴを選んだと言われている。
 ミドルティーンのジョン・レノン、ポール・マッカートニー、ジョージ・ハリソンが、リバプールのきわめて狭い空間に住んでいたこと自体が、神様からの贈り物だったのではないかと思える。
 彼らは、お互いに惹かれ、尊敬し、高め合った。初期の頻繁なメンバー交代を経て、ハンブルグでの武者修行ともいえるハードなライブ活動で実力を磨き、リバプールに戻った彼らにブライアン・エブスタインがマネージャーに就くことで、四人は「ザ・ビートルズ」になった。皮ジャンを脱いで、リーゼントをカットしてお揃いのスーツを着た若者たちは、メジャーデビューするやいなや、ヒット曲を出し成功を掴んでゆく。アメリカを、そして世界を目指してイギリスを飛び出したビートルズ。
 当時の米国は、ケネディ暗殺、公民権運動、ベトナム戦争、ビキニ諸島沖の核実験等、様々な出来事が起こっていた時代だった。

プレスリーは大変だったろうね。4人じゃなかったから(ジョージ)
 TV番組「エド・サリバン・ショー」に出演したことで、瞬く間に人気者になったビートルズは、全米を、世界中を飛び回る。
 プロモーターや警察は、ビートルズに懇願する。「5千人の会場はやめて欲しい。外で5万人の若者が騒いでいる」
ライブ会場はどんどん大きくなる一方だ。ついには、スタジアムで行うようになり、人々の熱狂の中での演奏が難しくなる。当時の機材の限界を超えてゆくのだ。
 ツアーが終わったら、イギリスに戻りスタジオで新しいアルバムを完成させなければならない。
 短い合間を縫って、映画も撮影された。まさに、一週間のうち8日働くような忙しさだ。
 影響力が大きくなるほど、訪れた国によっては、歓迎だけでなく、いわれなき反発や混乱も招いた。一方、会場で凶暴になるファンが増え、時には身の危険を感じることもあった。記者たちのつまらない質問も彼らを疲れさせた。狂乱の日々を、4人はお互いを思いやり、助け合って乗りきっていった。

そういうこと(人種隔離)を、やっている所には行かない(ジョン)
 ビートルズの魅力は、音楽だけでではなかった、インタビューでのウィットに富んだコメントが当時の若者たちの心を掴んだ。高学歴ではない労働者階級出身の4人全てが、知性とユーモアを持ち合わせていたことは奇跡といえる。
 最初の頃こそ、マネージャーの言いつけを守り、そつのない発言をしていたが、政治的な質問をふられることも多く、彼らは自分たちの思いを語っている。
 ジョン「人が人を殺していい理由なんてこの世にはまったく存在しない。」(ベトナム介入に関して)
 ジョージ「戦うことがいやだったり、間違いだと思う人は軍隊に入らない権利がある。」(徴兵制)
 日本公演の際のインタビューでは被爆国日本を意識してジョンとポールは核兵器反対についても言及していた。
 ビートルズは、南部フロリダ州のジャクソンビルでの公演では白人観客と黒人観客の隔離をやめない限り演奏しないと主張した。
 自由な発言の数々は、歓迎する人達と非難する人々を生んだ。
 雑誌のインタビューでジョンが言った「今やビートルズはキリストより有名だ」という言葉が、イギリスでは問題にはならなかったが、アメリカでは保守的な層からヒステリックな拒絶を受けた。彼らのレコードが焼かれ、ライブを開催することにも支障をきたすことになった。
 
彼らを見ていると私は私で良いと思えたの(W・ゴールドバーグ)
 『アポロ13』『ダ・ヴィンチ・コード』シリーズを成功させたロン・ハワード監督は偉大なるバンドのドキュメンタリー映画をフィクションの映画監督である自分が撮って良いのかと躊躇したと語るが、ポールとリンゴは彼を信頼し、カメラの前でリラックスした様子で当時を振り返る。未亡人であるオノ・ヨーコ、オリヴィア・ハリソンも承認している本作では、残念なことにこの世にはいないジョンとジョージの言葉や映像も自然な感じで盛り込まれている。
 白人富裕層出身の女優シガニー・ウィバーと、NYのハーレムで生まれ育ったウーピー・ゴールドバーグは、共にチケットを手に入れてライブにいった幸運なファン。ふたりは十代の少女に戻ったようにいきいきと当時を語る。
 歴史的な出来事となったジャクソンビル・ゲイターホールでの感動的なライブ体験を話す作家のキティ・オリバー。
 ロン・ハワード監督は、彼らの人種隔離政策への反対について、「よその国から四人の男がやって来てきっぱりと「間違っている」と言ったんだ。アメリカ人としてきちんと受け止めないといけないと思う」と語っている。

僕らは生き残った、そして前へ行かなければ(ビートルズ)
 映画は、時間軸に沿って彼らを追う。若かった4人がそれぞれ大人になっていく過程も。もうずっと一緒にいるなんてできない。観客との一体感があって一番楽しかったとジョージが語るキャバーン・クラブ時代には戻れないなら、違う地点に前進しなければ。
4人の音楽を愛する気持ちには変わりはない。ライブをやめてスタジオに活動の中心を移すようになったビートルズは、音楽プロデューサーのジョージ・マーティンと共に、一作ごとに異なる個性を持つアルバムを発表した。
 そして、私たちはあの伝説のライブ映像を観る。彼らは、どのような思いで演奏したのだろう。想像するだけで胸が熱くなる。
(宮)

ひとくち感想

◎大変よかった ○よかった ◇普通 ◆あまりよくなかった □その他

大変感動した。同時代に生きてきたことに感謝!(77歳 男)
若い時ビートルズを少しかじった程度だったけど改めて彼らの曲のすばらしさを思い出させてくれた。大変良かった!(73歳 男)
今まで知っている一面的なものでなく多面的なビートルズの姿・発言にとても感動した。そして周りの人々、ファン、社会の関連も興味深かった。(73歳 男)
青春の思い出の曲を沢山きく事が出来て楽しかった。(71歳 男)
今年来させていただいた分、全~部あわせてもよかった感動した。音楽が、ヒーロー映画ではなく、考え、思想が明白で暗殺も、4人の個性あふれるチームワークエエやん。もう一回みたい。(70歳 女)
私はプレスリーの方が好きだったけれど、妹はビートルズ。以前とは違う音楽が世界の人に受け入れられた事よくわかりました。4人が元気でいたら良かったと思わずにいられません。世の中の動きを感じられた映画でした。(69歳 女)
やはりビートルズはいいなぁ!そしてモーツァルトよりも偉大です。だって、モーツァルトは若者の意識や社会を変革することはなかった。(68歳 男)
私たちはこの頃ティーンエイジャー。ビートルズは青春と私達の歩みです。大変映画は楽しめました。音楽も最高です。(65歳 男)
なつかしい。(65歳 女)
ビートルズの曲は知っているけど、いろいろなエピソードは知らなかった。忙しすぎておかしくなるというのがよくわかる。すばらしい音楽でみんなを解放していったと思う。(私たちの青春のすこし前の話だから知らないことだらけ)(63歳 女)
おいしいところのつまみ食いで申し訳ないくらい。ライブを楽しんだ感じ、若くてユーモアがある四人、過酷なライブだったんだと知りました。いい音楽をありがとう。(62歳 女)
ビートルズの故郷リヴァプール。光きらめく港町をイメージしていた。彼等が育った頃は、ぬかるみ乾き固まった道に人や荷車もまばらで、町は往年の活気を失っていたらしいが、若者たちは新しい音楽を目指し、エネルギッシュな青春を送っていた。引き合うようにメンバーが揃い、「伯楽」に見出され、センスの良いスタッフたちに磨かれ、素直な前向きな努力で世界中の人気者になる。デビュー初期のキュートな髪型やおしゃれなスーツ姿や立ち居ふるまいは、新鮮なのに驚くほど上品! 偉ぶらず、歌い演奏する喜びに満ちた明るいコンサート。初々しい魅力をタップリ味わえた。コンサート会場での人種差別を否定し、結果改善させ、戦争に反対し、優しい心、人の悲しみを想像し皆の幸せを願う心を持ち続けた四人。ジョン・レノンの「キリストより有名」という冗談で、一時、米国で排斥運動も起きたそうだが、キリスト教徒と言いながら、戦争で儲け、人を戦争に送って殺し合わせ、他の人の貧困や悲惨の上に贅沢をする人たちより、ビートルズの方がずっとずっとキリストに近いと思う。(62歳 女)
本当に久しぶりに「大変よかった」を選びました。熱くなれる映画、没頭できる映画っていいね。こういう映画をもっと見るというように自分を変えていこうかな。(60歳 男)
こんな映画があるとは。ビートルズが何もわかってなかった。とてもよかった。(59歳 女)
ウーピー・ゴールドバーグが初めてビートルズを聴いた時の言葉をもう一度聞き、かみしめたいと思います。(58歳 男)
リアルタイムではないけれど、ビートルズのファンであり続けたいと思いました。(58歳 男)
貴重な映像を観ることが出来た。大変幸福な時間であった。リバプールは光も影もある世界遺産の港町で行きたい街のひとつである。ジョンやポールやローリングストーンズを生んだ英国労働者文化に感謝! 百万遍のリンゴのマスターと必ずこの話をしたいです。(56歳 男)
私がビートルズを好きになったのは7歳上の兄、ひいては11歳上の従兄の影響である。ジョンの「ビートルズは神様以上」の発言がキリスト教会にあんなに影響を及ぼしていたなんて、すごくびっくりした。赤尾敏はムカつく!(56歳 男)
やはり劇場で観るのは格別です。良い企画をありがとうございました。ただ観客で大声で笑う方がいたのは少しガッカリした。(51歳 女)
ビートルズはもともと好きなので、今回母に誘われてきました。映像のビートルズのファンのように、興奮して酔ってしまいました。家でDVDを見るだけではできない体験でした。(26歳 女)
私も、63年リバプールでさけびたかった。(女)
とてもよくまとまっていましたね。「ビートルズ」のPVのようでした。一、二曲以外は全て知っている曲でなつかしく、切ない気持ちでした。(女)
非常によかった。
最高に良かった。ビートルズは、子供を育てる時代だったので、ずっと後年になって知ったのが、くやしいです。

懐かしく、楽しめました。これから、たまに観に来たいです。(74歳 女)
自分自身ビートルズ、ビートルズという人間ではありませんが、彼らの才能のすごさをこの映画で知りました。彼らがしあわせを感じ音を楽しめたのはレコーディング、しあわせだったんだと実感しました。(72歳 女)
1963年に輝いていたビートルズ。自分の青春どうだったかな? 思い起こしてくれた。(71歳 女)
余りよくは知らなかったビートルズを、「人間」としてよく理解できたドキュメンタリーでした。プレスリーは一人で大変だったけど、ビートルズは四人だった、はよく言い得ています。人種差別にもきっぱりとした姿勢も尊敬します、日本の芸能人の多くも見習って欲しい。(70歳 男)
作品は良かった。ドキュメンタリーとして。例会運営には細心の注意、注力を。委員だけの自己満足でなしに。本日は入場について一言。二階、ホールに関しても、入場整理券(ナンバー票)を発行したほうがベター、ベストでありましょう。会員を立ちんぼで待たせるのはよろしくない。入場者の立場として。運営側・委員には気がつかないかもしれないので、一言。(70代 男)
れから半世紀余。ファブフォーに魅了された高一の若造は、古希を目前に、いまだに「I’m down」から抜け出せずにいる。カラーで蘇ったビートルズに感謝。(68歳 男)
ビートルズ世代だけど、ファンではありませんでした。ずっとわからなかったけど、なぜ人気があり続けるのか、二回目に見て、更によくわかりました。貴重な映像もあったようで、特に、アメリカ南部の人種隔離の変化にはビートルズの影響もあったということが驚きでした。(65歳 女)
ドイツ映画『ありがとう、トニ・エルドマン』を上映して下さい。(65歳 男)
レコード、CDでしか知らなかったビートルズの知らない時代を知り、またアメリカの排斥運動、黒人に対する思いなど、一ファンとして興味深い作品だった。(64歳 男)
映画はよかった。ここの可動式椅子はよくゆれてすわりごこちわるい。場所の変更を考えてほしい。(62歳 男)
私がビートルズを聴きだしたのは彼らがライブを辞めてからだったので、今回の上映はうれしかったです。十代後半から二十代前半で世界を手にしながら、いつも自然体で、しっかりと自分の考えを言えるのはすばらしいことです。4人の発言(茶目っ気にも)拍手したいです。キリスト問題は知っていましたが、ジョンが謝っていたことは知りませんでした。それをボイコットの原因にされるとは、アイドルは本当に気の毒ですね。私はカトリックですが、ジョンの言葉に悪意もうぬぼれも感じなかったし、又今回の謝罪はかわいそうな位立派でした。母の在宅で辛かったとき私をなぐさめたのは聖歌や聖書ではなくビートルズの曲の数々…。心からなぐさめられ勇気づけられました。その昔、湯川れい子さんが今ビートルズを聞いている若い人々が大人になる頃、彼らがうたった愛、平和、平等を自分の子供に伝えてほしいという言葉を、しっかりと覚えています。(64歳 女)
ビートルズ世代の少し下だが、あまりビートルズに関心がなかった。この映画を見て、彼らの人気がいかにすさまじいものであったかを知った。音楽的には「100年200年に一人」でありモーツァルトに比肩されうるものと評されていたが、そこまではわからない。でも20世紀の地球に大きな影響を与えた音楽家であることは間違いない。それは感じた。(61歳 男)
知らなかったビートルズにフォーカスしたよい作品でした。ありがとうございました。(53歳 男)
見そびれてたので有難かったです。また来ます。(46歳 男)
曲もいっぱい聞けてよかった。エンディングの四人のメッセージ。編集がよかった。(40歳 女)
学生である自分にとって The Beatles というバンドが歴史の激動の中でどう活動していたかを知り、音楽というものの重要性を感じました。(21歳 男)